四話
遅くなりました……テストォ……
すいません、どーも納得がいかない個所があって……
実は今もイマイチ納得してない……近いうちに時間を見つけて書きなおすと思います
昼休みから四時間経って現在午後五時半。予選トーナメントの各グループのベスト四が出そろい、準決勝が行われようという頃。予想外な出来事が起きた。
俺の次の対戦相手が試合前に大けがを負わされてしまうという事件が発生。犯人は予選トーナメント二回戦で負けた生徒で、ただの仕返しだったということがすぐに分かった。幸い命に別状はなく後遺症も残らないということだが、それで終わりとはいかない。今日は学内トーナメント。これでは順位が付けれない。仕方なく、負傷した生徒はこの段階の順位をつけて試合は俺の不戦勝ということになった。
これだけならよかった。命に別状はなかったし、誰もいない場所で隠れてのけ被害だったので目立たなかったらしい。何も事情を知らない生徒に知られて何かトーナメントに支障を出すわけにはいかないため、目立つ場所でなかったのは幸いだったらしい。
こういう問題は関係者以外翌日に知らせるのだと言っていた。
しかし次はそう簡単なものではなかった。
俺が不戦勝となり、次の相手の戦い方でも見ておこうと隣を見た瞬間。明らかなオーバーアタックによる不正行為が行われた。首元に対して、能力である『移動速度の加速』を発動させて威力を上げた一閃。決着はついたはずだった。しかし加害者は先の一撃で決着がついていたにも関わらず、そこからあらかじめ詠唱しておいた上位魔術『メテオフォール』を放った。使用者の頭上に現れた無数の大きな炎弾が相手に降り注ぐ。
受けた側の生徒は、先ほどの被害者とは比べ物にならないほどの大けがを負い、このままでは命が危険な状態だ。
急遽グループDのトーナメントは一度中断され、原因と治療に専念された。
原因の方は先生が加害者の生徒を問い詰めているが、被害者については冗談では済まない状態が続いた。
学園中の治癒関係の能力者を集めて治療を施したが、応急処置にすらならい。被害者の命を五分、長くて十五分伸ばす程度のものでしかなかった。
「くっそ、どうするんだよ! 誰か、誰かもっと強力な治癒能力者はいないのか!」
今叫んでいるのは被害者の友人らしく、いの一番に駆けつけ、治療を施している。
しかし、現実は甘くなかった。
治癒系の能力は他の能力と比べて力が極端に弱く、大した効力が期待できない。それこそ応急処置レベル。現在救急車を呼んでいるが、来るまで命が持つか。持ったとしても病院まで持つのか。それすらわからない緊迫した空気になっている。
気付けば学内のすべてのトーナメントが一時中断となっており、ほとんどの生徒と教師がこの対戦場に集まっていた。
「おやおや、これは困ったね。こんな怪我は普通の能力じゃどうにもならないよ」
「が、学園長!? どうしてここに!?」
誰もが手詰まりになって諦めの文字が見え始めた時、学園で最も頼りになる人物、学園長が歩いてくるのが見えた。怪我の状態を確認するなり、あたりを見渡しながら口を開く。
「ふむ、これは……倉敷はいるか?」
「は、はい! います!」
諦めずに治療していた一人の教師がそう答えると、俺の周りにいた生徒は離れていき学園長と向かい合う形になった。
「これほどの怪我は治癒系の能力では治らん。お前が治すんだ」
「……え? どういう意味ですか?」
「倉敷、って言ったか、お前も治癒系の能力なのか? こいつを助けれるのか?」
さっきの教師と生徒を筆頭に集まっていた人全員がざわつき始めた。それもそうだ。今まで学園内で有名になったことがない生徒が急に学園長に、しかも名指しで呼ばれたのだ。驚くに決まっている。
「いや、俺は……『自己加速』だから、治療は……」
言葉を濁す俺を無視して学園長は、学園生だけでなく教師にとっても信じられない一言を口にした。
「倉敷、『巻き戻し』を使え。それでなければこの生徒は助からん。いいな?」
「……え?」
一瞬、何を言われたのか分からなかった。『巻き戻し』。それは『時間操作』の最高難易度の能力と言われ、その名の通り時間を巻き戻す能力だ。
しかし、これには莫大な『代償』を必要とする上に俺は能力を隠してきた。それも『巻き戻し』については、学園長にさえも隠していたはず。どうしてこのことを……。この場では、学校内では使えない。使えば、ばれてしまう……ここまで隠してきたのに。
「えっと、学園長? 彼の能力は確か『移動速度の加速』ですよ? それがどうしたらあの『巻き戻し』に繋がるんです?」
「簡単さ、こいつは嘘をついてた。それだけだよ。ほんとの能力は『時間操作』」
ばれるわけにはいかない。
中学の頃に、苛められていたあのころに戻ってしまう……。
「それはないでしょう。ここは国立修創学院ですよ? 一生徒のプロフィール、しかも能力の部分を隠せるわけなんて……」
「できるんだよ。実際、こいつがやっている。あたしはどうやってるか知らないけどね」
それに、俺は『巻き戻し』だけは……。
「何してんだい! あんたが早くしないとこの子は死ぬよ!」
しぬ、人が死ぬ。目の前で……。
それだけは、それだけはいやだ!
「っ! …………わかりました、学園長」
そう口にし、一歩前に出ながら右手のブレスレットを外す。このブレスレットは自分の能力を押さえるための装飾品だ。外すことで『時間操作』としての本当の力が使える。
周りの先生や生徒が驚きを隠せない顔をしている間を抜け、被害者である生徒の横に立つ。
「あんたが迷ってるせいで一分たった。時間が無い。『同時発動』でこの子の時間を遅らせながら『巻き戻し』で怪我をする前まで持ってきな。じゃないと効果が出る前に死んでしまうかもしれないよ」
「学園長! 彼は『原点』ですよ!? 『同時使用』は『発展』にしか発動できないはず! どうして彼が!?」
「分かりました」
「倉敷君!? 出来ないことを挑戦する場面ではないですよ!?」
「少し黙っていて下さい。気が散ります。……発動、『時間減速』」
驚きを隠せない先生方を横目に、瀕死の状態の生徒の横に跪くように座り、一呼吸入れてから能力を発動した。まずは『減速』。発動前に死なれては困るため、とりあえずこれで延命をする。といっても治癒系より弱い、ほんの数十秒だが。もう一度深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
俺は過去にこの力を、『巻き戻し』使ったことが一度だけある。しかも「人が死ぬ」という、同じ状況で。
誤字脱字等があれば言ってください