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約束の夢  作者: 橘榛
2/8

二話

誤字脱字やわかりにくい点があれば指摘を

 あれから十分。時刻は九時十五分となった。相手の委員長も体育館に入り、準備をしている。俺はようやくさっきの女子を振りほどいて準備を始めるところだ。靴の紐をしっかり締め、軽く体操を行う。しっかり体をあっためておかないと、戦闘で動けない。相手とは距離が十五メートルほど離れている。動けないと接近して剣を振ることもできないし、回避もできない。念入りに体を作っておく。

 体があったまってきたところで先ほどの剣を鞘から抜き出し、数回左右に振ってみる。しっかりとした、頼りがいのある重さが右腕に伝わってくる。鞘に戻し、深呼吸を三回ほどして気持ちを落ち着かせる。試合まで後三分となった。相手を見ると、同じように武器の確認をしていた。剣と盾。接近戦をしてくれるならまだ相性はいいか。


『九時半となりました、審判は開始の合図を告げてください。繰り返します……』


「グループDの十五班、試合開始!」

「ふっ!」

「っ! ――フレアショット!」

 放送が鳴りやまないうちに、審判役を務める教師が開始の合図を告げた。相手の方が一瞬早く反応して一歩前に出たので、俺は牽制のつもりで簡易魔術――フレアショット――を放つ。

 魔術には詠唱時間があり、威力に応じて詠唱時間は長くなる。簡易魔術、通常魔術、上位魔術の順で威力が上がり、詠唱時間も長くなっていく。

 俺が今放ったフレアショットは、目の前に火の玉を出現させて前方に飛ばす簡易魔術だ。簡易魔術は慣れればほとんど詠唱時間を必要とせずに打つことができる。

 俺の手の動きに連動して放たれた火の玉は、こちらに向かってきている相手に向かって一直線に飛んでいった。相手はそれを盾で防ぎ、その勢いを利用して体をひねって剣を体と盾の後ろに隠して進んでくる。

 牽制を入れるにしても術を間違えた。

 盾と体で剣が隠れて軌道が読めない。

 このままでは回避すらできずに一撃くらうことになる。もしかしたらそのままラッシュに持ち込まれ、いきなり決着がついてしまうかもしれない。

 とっさの判断でもう一度同じ魔術を放つ。今度は相手の足元に向かって。

「ちっ! さすがだな、倉敷!」

 フレアショットの軌道が確認できた瞬間、相手は思いっきり後ろに飛んで回避した。もし回避しないなら足元に炎弾が命中し、足止めどころかダメージまでを与えることができたのだが。まあこのまま回避が間に合わないよりよしとしよう。

 最初の攻防を終えて、距離は八メートル。まだお互いにダメージを与えるどころか手の内すら見せていない。早めに盾を破壊、または使用できない状態までもっていかないとしんどいかもしれない。

 二度目は俺から動いた。剣を腰から抜きだし、相手に向かって全力でダッシュ。相手は驚いた様子もなく、盾を前に構える。このまま突っ込めば、盾で防がれてカウンターを受けることになるが、もちろんそんなことはしない。

 互いの剣の間合いに入った瞬間、相手が動いた。盾を前に付きだす。先に動き、俺に威圧をかけようとしたのだろう。 もし俺が弱気になって向かってくる盾に剣を振ればはじかれ、隙が生まれただろう。

 確かに、俺は剣のみの装備。対して相手は盾に加え剣も装備している。そう簡単に盾がはじかれることはないし、もしはじかれても剣で対応できる。

 しかし、それを読んでいた俺は右に飛んだ。これで盾の横に回り、相手側に隙ができる。そのまま盾が戻る前に剣を持っている右手を振り下ろす。振り下ろされた剣は相手の無防備な左の二の腕に直撃。そのまま少し相手の体を押した。

「くっそ! うらぁ!」

 相手は体が後ろに押されるのを利用し、体制を立て直した。そして剣を俺の右肩に向けて突き出す。距離一メートル強。回避、剣ではじくのは不可能。……普通の人間ならば。


(能力使用、『時間加速』、対象は自身。……っ!)


 俺は自信の能力、時間操作の『時間加速』を使用した。常人ではありえないスピードで反応し、右肩をひねって相手の剣の回避に成功した。

 これが、俺の能力である時間操作。個人を対象とし、対象の時間を操作するというもの。遅らせる、進ませる等のことが可能。今は加速、進ませた。自分だけ時間が早くなるため、単純に相手より早く動けるし、ゆっくり見える。先ほどの剣はそれで回避した、というわけだ。

 回避直後、姿勢を低く保ちながら、今度は相手の左手、盾を持っている手の手首を狙って剣を突き出した。相手は痛みに顔をゆがませるが、盾を離すことはない。

 舌打ちをしながらそのまま腕を振り上げ、相手の右手首に一撃入れる。予想してなかったのか、大した抵抗もなく肩より上まで腕を振り上げれた。カウンターを受ける前にすぐさまバックステップで距離をとる。そして相手が体勢を立て直す前にもう一度前に出た。

「くっそ! ――サンダーブラスト!」

 俺が一歩目を踏み出した瞬間、相手は体制を崩しながらも簡易魔術――サンダーブラスト――を放った。自身の前方に扇形に電気の膜を作る術だ。フレアショットと違い、威力は低いが範囲が広い。簡易魔術にしては優秀な術だ。


(能力使用、『時間加速』、対象は……しまった、間に合わない!)


 間に合わないことを悟り、能力の使用をキャンセルして直撃に備える。この魔術は剣では防げない。一応バックステップを行い、受けた後につなげる。そのまま受けたのでは、ダメージを受けたすきに接近され、そのまま斬られる恐れがあるためだ。サンダーブラストが発動し、俺に向かって放たれる。バックステップから着地した瞬間、電気の痛みと痺れが全身を襲う。

 苦痛に顔を歪ませながらも視界から相手は外さない。ちらっとだが、相手がこちらに向かってきているのが確認できた。このまま接近されれば、負けるとまではいかなくても一撃は受けてしまう。下手をしたらこのダメージが後に引きずり、負けてしまう恐れがある。


(能力使用、『時間加速』、対象は自身。間に合え!)


 能力を使って剣の軌道と回避先を確認し、右斜め前に思いっきり飛ぶ。『時間加速』は持続しており、ギリギリのところで回避に成功した。前回りをして体制を立て直す頃にはサンダーブラストの痺れも消えており、姿勢を低く保ちながら前に出る。

 『時間加速』はすでに終わっているが、先の一撃で相手は全力で振り下ろしたのか隙がでかい。俺が回避できないと思ったのだろう。

 その隙に今度は俺が強振で思いっきり左から右へ薙いだ。相手は反射で盾を使い防ごうとするが、振り向きざまにとった気休め程度の防御でなんとかなるほどこの一撃は軽くない。そのまま振りぬいた剣は、盾を弾き飛ばした。姿勢を上げながらもう一度斬りに行く。今度は左下から斬り上げるような形で。相手もやられっぱなしではなく、剣で打ち合おうとする。だが、ここで打ち合っては相手にチャンスが生まれてしまう。俺は今、体勢が中途半端だ。このままではなにか衝撃を受けた時、こけてしまうかもしれない。姿勢を戻そうとするだけで隙が生まれ、斬られる恐れがある。それなら、相手が振り下ろす前にこちらが相手を倒せばいい。


(能力使用、『時間加速』、対象は自身。続けて発動、『時間減速』、対象は相手)


 減速を相手、加速を自身に使用して最大限の時間を作る。加速された剣が相手に直撃した。そのまま勢いと能力を持続させて、もう一度、今度は両手で剣を振り下ろす。相手はその一撃で体がぐらつき、そのまま倒れた。能力を止めて、倒れている相手の首に剣を当てた。

 女子の黄色い声が会場を包むのと同時に、審判の右手が上がった。

 その瞬間、勝敗が決した。

次回も未定です

週に一回は投稿したいんですが・・・

忙しくなったり、急に暇になったりするんで・・・

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