一話
続編を期待してくれていた方にはすいません!(いないと思いますが)
去年の文化祭でも小説を書いて約一年
その続編を書くとか言ってたんですけどね・・・
どうして関係のない、今年の文化祭の方が先になった・・・
というわけで今年の、高校生活最後の文化祭で展示したものです
「ぜったい、わすれないでね! わたしもわすれないから!」
「うん! ボク、ぜったいにわすれない!」
これは……夢?
そうだ、俺はあの時……約束を……。
「……朝、か」
カーテンでは隠しきれない朝の陽ざしに目を覚まし、体を起こす。時計の針はすでに七時半を差していて、普段起きる時間より五分ほど遅い。何か懐かしい夢を見ていた気がする。だが気にしている時間はない。急いでクローゼットの中から制服を取り出して着替える。
学生寮に生活しているため、食事の時間が決まっている。朝食は八時までとなっていて、食べるのが遅い俺はいつもギリギリまで食べているので今日は時間がやばい。大事な日なのに。
俺の通う学校、国立修創学院は、生徒全員が『能力者』である。
『能力者』、この言葉が生まれたのは今から約五十年前。
同時期に研究が始まった。そして二十八年前、初めての人体実験が成功した。二十年前からは一般人も、一定の条件を満たせば能力者なれるようになった。
そして現在。『能力者』は増えたものの、『代償』のリスクが怖い、人じゃなくなる、などの反感もあり特別『能力者』が多いわけではない。
実際能力だけでなく、身体能力の向上や魔術の発動も可能になる。この点が一般人に怖がられている大きな理由だ。
ちなみに能力を持って生まれた能力者を『原点』、現在の技術によって能力者になった人を『開発』という。
この修創学院はその『能力者』を育成する学校だ。まだまだ数が少ない『能力者』はどこの会社も欲しがる人材になる。そのため、常に厳しく順位が決められている。今日はその順位決めの代名詞である校内ランキング戦だ。
ランキング戦は自分の進路を有利にするだけでなくこれからの学院生活にも影響してくる。学費が安くなったり、生徒会役員や各委員会に選ばれたりという特典がある。当たり前だが二年生以下の生徒が対象。内申点のため誰しもが欲しがるものだ。当たり前だが俺自身も上位に入りたい。二年生なので生徒会や委員会にも入れるが学費が浮くということでだが。
ちなみに二日間に分けて行われ、今日は明日の決勝トーナメントに出場する十名(男子六名、女子四名)を決める。
朝食を食べ終わり、急いで準備を終えて学校に向かう。教室に入ると、先日学院側に希望しておいた武器が教卓前に置かれていた。剣や銃、いろいろある中から直剣を一本手に取る。もちろんだが、ここにある武器に刃は付いておらず、銃は弾がゴムだ。もちろんだが当たると痛い。
『みなさん、本日は校内ランキング戦です。この後、午前九時より対戦表を各クラスにて配布します。確認後速やかに指定場所に移動してください。第一次予選、予選リーグ第一試合は九時三十分です。繰り返します……』
直剣がちゃんときれいな状態かどうかを確認してから自分の席に座った瞬間、放送が入った。放送が流れてからクラスの空気が重くなる。
今日はホームルームもない。こんな殺気立った空気の中にいては落ち着けないので、教室の外で時間まで過ごすことにする。
とりあえず自販機でジュースでも買おうと思い、購買を目指して廊下を歩いていたら横を通りすがった女子がつまずいた。
「っと、大丈夫?」
反射で手を出してなんとか支える。幸いにもこけてない。
「わっ、すいません! ありがとうございます!」
女子生徒はお礼を言いながら、こちらが反応に困るくらい頭を下げた。ぱっと顔を上げると見たことがある顔だった。
「えっと、中原さん。大丈夫?」
記憶の底からなんとか名前を引っ張り出すことに成功し声をかける。
クラスメイトの中原 唯さん。身長が低く、なにか守ってあげたくなるような空気でみんなからマスコット的存在としてちやほやされている。……身長はおそらく『代償』が理由だ。これについて聞くのはマナー違反なので、聞くことはしないが、あたっている自信はある。
高校生になってから何とかクラスメイト全員の名前を覚えられるようになってきた。クラスメイトの名前も覚えられないのは何とも情けない話だが、これが俺の能力の『代償』なので仕方ない。
「は、はい。大丈夫です。あ、それでは!」
友達が呼んでいたのか、俺の後ろの方を見るなり駆け出していった。また転ばないといいのだが。あまり心配しても仕方がないので、もう気にしないことにした。
『みなさん、九時になりました。各自のクラスに戻り、席に着いてください。担任の先生は、出席を確認されましたら対戦表のプリントを配ってください。第一試合は九時三十分です。注意事項もプリント裏面に表記されているので、各自確認しておいてください。繰り返します……』
購買から教室に戻ると、ちょうど放送が流れた。席に着くなり、タイミングを計ったように担任が入ってきて欠席者を確認する。全員席に座っており、欠席者はいない。一目で確認できた担任は持ってきたプリントを手に取り、生徒一人一人に配っていく。いよいよ対戦表の配布になる。一人一人に配っていくのは、各自の名前のところに赤いアンダーラインが入っていてわかりやすいようになっているからだ。すでに配られた人は喜んだり、へこんだりしている。弱いであろう人と当たって喜んでいるか、強い人と当たってへこんでいるかのどちらかだろう。強い人はそれなりに名前が有名なので一目でわかる。
対戦形式は、四人での第一次予選のリーグ戦(総当り)、各班の一位の人で行う第二次予選のトーナメント、予選トーナメントの優勝者で二日目に決勝トーナメント、となっている。決勝まで勝ちあがろうと思えば、一戦も負けれないというわけだ。
勝利条件は相手が気絶、または審判が試合の続行は不可能か、決着がついたと判断した場合。
ちなみに学年別で男女別。一学年千人を超えるので、ここまで分けても各グループ十分な人数になるくらいになる。そのため、何回にも分けてトーナメントやリーグ戦のようなものを行う。
会場は学校の敷地内にある会館と呼ばれるホールを使う。一つのホールで二試合が可能で、基本的にグループごとに会館が振り当てられる。そこで試合をする。
男子は最終的にトーナメントで六グループに、女子は四グループに分けられる。このグループの各一位が代表者となり、翌日の決勝戦に出ることができる。
ようやく俺の手元にもプリントが配られた。すぐにプリントを確認する。……Dグループの十五班。初戦はこの後九時三十分からの第一試合で、相手は隣のクラスの委員長だ。
実力主義なので、委員長になるにもある程度の実力が必要になる。初戦からしんどい戦いになることが予想された。
初戦ということでそこまで時間に余裕もないので、早めに教室を出ようとしたのだが……。
「倉敷くん、観戦に行っていい? いいよね?」
「私たちもいい? みんなもいこうよ!」
……捕まってしまった。
なぜか高校から女子にちやほやされる。俺よりかっこいいやつなんていくらでもいるだろう。政輝とか、他にもいろいろ。
仕方がないので、OKを出しておいて、その場を立ち去ろうとする。
「あ、倉敷くん。倉敷 優くん、待って!」
また呼び止められた。というか、なんでフルネーム?
声の方を振り向くと、中原さんが立っていた。振り向いた瞬間、周りにいた女子が一斉に中原さんを睨む。女子ってコワイな……。なんで睨んでいるのかよくわからないけど。
「中原さん? えっと、何かな?」
周りの女子がどうこうというわけではないが、早く対戦会場に移動したかった。
こんなところで剣を抜くわけにもいかない。能力者だって人間だ。怪我だってする。剣の様子を詳しく見ておきたいため、急いでいるのだが。
「あ、呼び止めてごめんね。さっき助けてもらったから、お礼を言いたくて……さっきはありがとう、助かりました」
先ほど見たよりも深いんじゃないか、と思うくらい頭を下げてお礼を言ってきた。というか、さっきもお礼は言ってたと思うけど。律儀な子なのだろう。そう思うことにする。
頭を上げた中原さんは友達の方に向かった。それを周りの女子たちはなにかい憎たらしいような顔で見ていたが、無視して教室から出る。もちろん、女子たちが後からついてきた。正直邪魔なんだけど、まあ、言っても無駄か。諦めた気持ちで会場となる第一会館に足を向けた。
次回は未定です。
近いうちにはあげようと思っているのですが、受験も終わっているのになぜか時間がなくて・・・