第8章 茨を越えて
「どうやら行き止まりは越えたみたいだな」グレブは周囲を見渡しながら言った。ここの静けさは違っていた――死んだようではなく、潜んでいる静けさ。まるで町が何かを待っているかのように。
「油断しないで」ソフィラは言った。鞘の中で彼女の剣がかすかに鳴る。「この場所は憑かれた者で溢れてる。たくさん倒したけど、増えてる。そして……変わってる」
「変わってる?」
「ああ。最初の日は影みたいに鈍かった。でも今は速いし、賢い。誰かが教えてるみたいに」
グレブは拳を握りしめた。
グレンは動きを止め、センサーが黄色に点滅した――あまりにも速く、不自然に。
「何かおかしい」ソフィラの頭に浮かんだ。彼女は目を細め、犬とグレブを交互に見た。
「それで……お前、どれくらいここにいる?」
ソフィラは一瞬静止し、霞の向こうに見える城を見つめた。塔は砕けた歯のようだった。
「ええ……いや……ここは時間がばらばらに流れてるから、正確には分からない。でも体感では……一ヶ月くらいかな」
「一ヶ月……」グレブは顔を手で拭った。「その“力”はどうなってるんだ?」
「ほら、この巨大な剣」彼女は片手で持ち上げた。それは紙のように軽そうだった。「お前のその腕で持てる? 私はこれを棒みたいに振れる。それが力の仕組みさ」
「その武器はどこから?」とグレブは装飾的な鍔を見つめながら尋ねた。
「戦利品よ」ソフィラは誇らしげに答えた。「八本腕の大男から奪ったの。まだブタみたいに悲鳴を上げてたよ」
彼女は刃に指を滑らせた。
「いい収穫でしょ?」
「なるほど」グレブは質問を無視して眉をひそめた。「あのアクシスってやつ、嘘をついてないのか? 俺たちはただのコピーで、力ある存在の操り人形なのか?」
「彼の言葉から分かるのは、神々は不死じゃないってこと」ソフィラははっきりと言った。「そして今、彼らは弱ってる。もし“最初の者たち”が神々を滅ぼすなら、私たちもそれに賭けるべきよ。世界を作り変えるの――苦しみや戦争のない世界に!」
彼女の声は張り詰め、表情は歓喜と狂気が混ざったものに歪んだ。
グレブは一歩退いた。自分の手を見つめる――ただの人間の手。
「俺たちにそんなことができると思うか?」彼の声には苦さが滲んでいた。「神になる気はない。ただ家に帰りたいだけだ。闇の約束はどう思う?」
「願いを叶えるって話?」ソフィラは笑った。「私は自分の力を信じる。奇跡に頼るのは馬鹿げてるでしょ?」
「何を信じればいいのか分からない」グレブは黙り込んだ。アニの顔、笑い声、手の温もりを思い出す。それらはここではガラスのように脆かった。
「せめて私を信じなさい」ソフィラは微笑んだ。その笑顔には迷いがなく、山をも動かすような確信だけがあった。「さあ、行くわ。時間がない」
彼女は返事を待たずに歩き出した。グレブもそれに続く。
だが三歩も進まないうちに、建物の中から憑かれた者たちが現れた。
それは影ではなかった。重く、肉体を持ち、血と泥にまみれていた。一人は首がねじれ、血まみれの斧を引きずっていた。もう一人は目がなく、手を前にさまよわせていた。三人目は腹が異様に膨れ、うめき声を上げ、口から黒い唾液を垂らしていた。
グレブはテスカを握った。刃が紅く燃え、空気を裂く光を描いた。
待たずに振るう――三つの火の弧が放たれ、群れを切り裂いた。
一体は胸を貫かれ崩れ落ちた。別の一体は腕を失い絶叫する。三体目は真っ二つになりながらも動こうとしていた。だが次々と敵は押し寄せてきた。
グレブは斧の一撃を受け止め、次の敵に側面を裂かれた。四本の爪痕が走り、血が流れた。それでも彼は振り抜き、敵を切り伏せる。
呼吸が乱れる。腕が震える。だが彼は止まらない。
ソフィラもまた戦い続ける。彼女の剣は赤く脈打ち、輝きを増していった。
— グレン。
命令はそれだけで十分だった。
ロボットは即座に反応し、装置を展開。爆発が敵を吹き飛ばす。
だが敵は倒れても、すぐに立ち上がる。
戦いは続く。
やがてソフィラが放った一撃が空気を裂き、紅い波動が街を薙ぎ払った。
静寂。
彼らは倒れ、歩みを進める。
破壊された街を越え、城へ向かって。
遠く、空には巨大な影――ドラゴンが飛んでいた。
「見えるか?」グレブ。
「ドラゴンだ」ソフィラ。
彼らは進む。
そして、ついに城の中へと足を踏み入れた。
だがその背後で――何かが動いていた。
それは巨大で、熱を帯び、彼らの存在を知っていた。




