第1章:選択
彼は車椅子に座り、拳を握りしめていた。風が銀色の髪を揺らし、視線は湖に釘付けにされていた — 底知れぬ傷のように巨大で、黒い湖。
それは彼を誘い、ささやき、呼び寄せていた…
— そっちを見ないで、 — 母は彼の肩に手を置いた。 — ここではね、悪魔の場所だって言われているの。穢れているって。
しかし、彼は彼女の声を聞いていなかった。湖の奥で何かがきらめいていた — 幻影、亡霊、禁じられた力の約束。目の前に、イメージが閃く:笑いながら手を伸ばす娘、ベッドから起き上がって微笑む父、後悔に凍りついた元妻…
「父さんに、もう一度歩いてほしい、 — 彼は思った。 — 娘に、愛していると伝えたい。僕は…」
考えきる前に、車椅子が揺れ、崩れかけた土手の上を滑り始めた。肘掛けを掴み、止めようとしたが、車輪は容赦なく崖の縁へと滑っていく。
— 母さん! — 彼は叫んだ。
そして、落ちた。
水が冷たい拳のように彼を包み込んだ。最後に見たのは、自分の顔が黒い湖面に映る光景。そして、誰かの無音の笑いだった。
朝。救助隊が湖を捜索し、彼らの懐中電灯が波間を怯えた蛍のように揺れていた。岸辺、濡れた石と海藻の間に、ひとつの身体が横たわっていた。
— 生きている! — 誰かが叫んだ。
彼は息をしていた — かすれ、断続的に。目は開いていたが、視線は空虚で、ガラスのように濁っていた。母は彼の手を顔に押し当て、泣き崩れていた。
— 目を覚まして!
周囲では医師、警察、野次馬たちが慌ただしく動いていた。
「溺れたのに、死んでいない… — 群衆が囁いた。 — あの湖は魂を奪う…」
救急車が彼を病院へ運んだ。診断は昏睡。医師たちはただ首を振るしかなかった。
そして彼は、落ちていった。
周囲にはただ闇だけ。濃く、触れられるように重く、胸を圧迫する闇。そして、ランプ。
小さく、鍛造されたそれは、古いゴシックの物語から抜け出したかのようだった。その炎は赤く燃え、まるで生きている心臓のように脈打っていた。
— それを壊せ… — 声がささやいた。低く、多数の声が重なり合うように、同時に何百もの口が語っているかのように。 — そうすれば、お前の願いを叶えてやる。
— それを壊せ…封印を… — 声が繰り返し、今度は金属の残響が混ざっていた。まるで無数の刃が擦れ合うように。 — …願いを。
— 何だって…? — 彼は息を吐いた。その一音すら、苦しさに満ちていた。 — 何の…?
— ランプに触れろ。
手が震えた。望んではいなかった。それでも手を伸ばしてしまう。
指が金属に触れた。
頭の中で爆発が起きた。
数百の声が叫び、互いにかき消し合う:
— 力!
— 知性!
— 支配!
— 秩序!
記号が目の前に閃き、渦を巻き、混ざり合い、飲み込んでいく。彼は叫び、抗おうとしたが、幻影はさらに深く、さらに深く入り込んでくる…
「大事なのは、正気を失わないこと…」
彼は選んだ。
— 知性。
冷たい石が手のひらに触れる。草と水の匂いを運ぶ風。
ゆっくりと頭を上げた。洞窟の入口が前方に口を開けている — 黄金の長方形、太陽の光。外には、緑の草、鳥、石の上を流れる小川。
凍りついた。
脚。
震えながら、彼は立ち上がった。最初はおぼつかなく、やがて確かに。一歩。もう一歩。
彼は歩けた。
彼は笑った — 涙を流しながら、声をあげ、痛みと不信の中で。
しかし、その笑いは途切れた。
洞窟の奥で、何かが動いた。闇が濃くなり、その中に巨大で人ならざるものの輪郭が浮かび上がった。




