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最初の  作者: リナット
13/13

第12章 ――

突如として強い風が吹き荒れた。鋭く、氷のように冷たく、黒い雪を伴って。

それはまるで燃え尽きた世界の灰のように空を渦巻き、地面へと吹雪となって降り積もる。川の水は泡立ち、うねり始め、その深淵から、天使的な均整と不自然な機械性が融合した存在が現れ始めた。

その身体は巨大な結晶構造を思わせ、脈動する光の血管が走っている。中心には核――紅蓮の炎の球体が輝き、それを惑星の軌道のような輪が取り囲んでいる。その輪は収縮と拡張を繰り返し、低く震えるような唸りを発し、大地を揺らしていた。

その顔は同時に美しく、そして恐ろしい。滑らかで特徴のない表面だが、その奥では像が渦巻いている――目が瞬き、口が現れては、声なき未知の言葉を紡ぐ。

「翼」は羽毛ではなく、紫の光を放つ物質の花弁のようなもので、現実そのものの裂け目のようだった。それが開くたび、空気はオゾンと、古く忘れ去られた何かの匂いで満たされた。

グレブはベンチに身を押し付け、心臓が喉のあたりで激しく脈打っていた。リザと娘を抱えて逃げようとした――だが足は地面に縫い付けられたかのように動かない。

すべてが止まっている。アーニャも、リザも、通行人も、不自然な姿勢で凍りついた人形のように。

ただ黒い雪だけが舞い続け、風は何千もの声がささやくように唸っていた。

そのとき――アーニャが動いた。

彼女の顔が歪み、母、父、そして再びアーニャへと変化していく。

「まだ、その幻想に縋っているのね」

グレブは息を呑み、後ずさる。

「違う……そんなはずは……彼らは……本物だ」

「彼らはシステムの一部よ」

アーニャの身体は灰のように崩れ始め、風にさらわれていく。

「でも、あなたは違う。私も」

グレブは手を伸ばし、掴もうとするが、灰は指の間をすり抜ける。

「アーニャ!」彼は叫んだ。「行くな!」

「目を覚まして」

背後から声がした。

振り返ると、ソフィラが立っていた。

彼女の瞳は人間のものではない、冷たく古い光を宿していた。

「彼らはひとつの意識の断片。終わりなき循環に囚われているの。ここに囚われているのは私たち。でも――私たちは“存在している”。彼らは違う」

グレブは頭を振り、唇を噛んだ。血が滲む。

痛み――それだけが現実を繋ぎ止めるはずだった。

だが世界は崩れ続ける。視界の端がピクセルのように剥がれ落ちていく。

「何を言ってるんだ!」

その声は水の中のように鈍く響いた。

記憶が戻る――塔の記憶。球体に触れた瞬間。天使の囁き。選択。

ソフィラは一歩近づく。

「私たちは神々によって、無限の生と死の循環に落とされた存在。ここでは“本当の死”はない。ただ再起動するだけ」

彼女が手を伸ばす。

その瞬間――

ナベレナヤ(ナベレナヤ景色)が溶けていく。

カフェも、街も、川も、すべてがピクセルとなって崩れ落ちる。

「思い出して」ソフィラは言う。「エリジウムを。塔に来る前を」

水面から“深淵の天使”が現れる。

核が強く輝き、空間に亀裂が走る。

彼らは歌う――言葉ではなく、周波数で。

世界が軋み、割れていく。

「あなたは毎回、彼らを選ぶ。でもそれは罠」

グレブは崩壊する世界の中で立ち尽くした。

――世界の破片。

――エリジウムの庭園。

――知識の樹。

「もしこれが幻想なら――なぜこんなに痛い?」

一体の天使が彼を見た。

その核が赤く輝き、言葉なき声が直接脳に響く。

「お前は“綻び”。創造の設計の誤りだ」

だがグレブの中に生まれたのは恐怖ではなく、怒りだった。

「来て、グリフ」

ソフィラが手を差し伸べる。

「現実とは何だ!」

「今、見えているもの。そして、選ぶもの」

世界は完全に崩壊した。

灰色の霧だけが残る。

そして二人。

「アクシスは嘘をついていた。彼の目的は均衡ではなく混沌。でも私たちは変えられる」

霧が形を取り、街や塔の残骸、顔を映し出す。

グリフは深く息を吸った。

――そして口にする。

「アーダの地へ行こう、我が愛しきエッラ」

彼らは霧の中へ消えた。

その足音は天使の歌に溶け、新たな始まりを告げていた。

――

アクシスは球体の前に立っていた。

「はあ……疲れた……」

あくびをしながら伸びをする。

「何回目だ?百万回?」

彼は笑う。

「ようやく気づいたか。あとはお前たち次第だ」

彼はグレンを見る。

「行け」

指を鳴らす。

空間が黄金の糸で満たされ、歪む。

グレンは蹴られ、回転しながら裂け目の中へ消える。

「はあ……一緒に行けないのが残念だ」

アクシスは窓の外を見た。

血の月が、まだ世界を赤く照らしていた。

創世の伝説

塔の中で、彼らは一つの法則を悟った――封印は均衡によって保たれている。だが、もし天秤を悪で傾けるなら――憎しみ、欺き、絶望によって――均衡は崩壊する。

……そして彼らは決めた。世界に、選択の自由を持つ存在を与えることを。

そして知っていた――その選択が闇に傾くとき、塔もまたそれに続いて崩れ落ちることを。

そして“最初の者たち”は人間を創り出した。

完全ではない。永遠でもない。

だが――感じることができる存在を。

彼らは人間に“悪の火種”を宿した――怒りの影、恐怖のささやき、痛みの味を。そして告げた。

「汝らの心に闇を育てよ。天秤を満たせ」

人類が罪に堕ちたとき、塔は震え、封印は崩れ、古き悪が解き放たれ、神々を打ち倒す。

それこそが“最初の者たち”の計画――人間を、悪を解放する鍵として利用すること。

「我らは赦しを求めない」彼らは言った。創造主たちが隠れている星々を見上げながら。「我らが求めるのは清算だ」

年月が過ぎ、世紀が流れ、千年が過ぎた。

人は増え、戦争は燃え広がり、世界は起源を忘れ、真実は物語へと変わっていった。

だが地下の静寂の中、“最初の者たち”は待ち続けていた。

彼らは知っていた――その時は来る。

そしてそのとき、天は震える。


つづく。

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