第11章 最初の者たち
グレブはゆっくりと目を開いた。最初の瞬間、自分がどこにいるのか理解できなかった。内側の視界には、まだ断片的な幻影がちらついている――剣を持つソフィラ、アクシス、そして彼が通り抜けた地獄のような渦巻く闇……しかしそれらは風に煙が溶けるように消え去り、ただ大きく恐ろしい何かの余韻だけを残した。
彼は瞬きをして光に慣れていく。
彼の上に顔がのぞき込んでいた――家族。父は厳しいビジネススーツに身を包み、髪にはわずかな白髪。母は涙で目を赤くしながらも、口元には幸せな笑み。リザは彼の手を握り、指先が震えている。そして娘のアーニャは彼の首に抱きつき、喜びに満ちた声で叫んだ。
「パパ! パパが目を覚ました!」
グレブは必死に唾を飲み込んだ。声が出にくい中、かろうじて言葉を絞り出す。
「アーニャ……」
彼は彼女に手を伸ばし、弱った体でできる限り強く抱きしめた。少女は笑い、彼の目には涙が浮かんだ。
「戻ってこないかと思った……本当に……」リザがささやき、彼の肩に額を寄せた。
母はすすり泣きながらハンカチで目を拭いた。
「昨日の夜、医者から電話があったのよ。あなたが目を覚まし始めたって。すぐに来たの……」
父は彼の肩に手を置き、強く握った。
「生きている。それだけで十分だ。あとは何とかなる」
グレブは目を閉じ、家族の匂いを吸い込んだ――母の香水、父のコロン、娘の温かい息。すべてがあまりにも現実的で、正しいもののように感じられた……だが心の奥で、何か大切なものを忘れているという奇妙な感覚が静かに蠢いていた。
二週間後、グレブは退院した。まだ体は弱く、疲れやすかったが、心は喜びで満ちていた。愛する人々がそばにいる。
迎えに来た家族と共に、父が大きなSUVのハンドルを握り、母が助手席、後部座席にリザとアーニャ。グレブは前の席に座り、街の風景を眺めていた。
しかし、進むほどに疑念が強くなる。
「こんな感じだったか?」
その思いが突然、鋭く不自然に頭に浮かんだ。
振り返ると、家族は楽しげに会話し、笑っている。アーニャはスマートフォンで何かを見せ、リザは頷いて微笑み、父は片手で身振りを交えて冗談を話していた。
すべてが――正常だった。あまりにも正常すぎた。
グレブは眉をひそめ、消えかける記憶を掴もうとする。何かが違っていた気がする。記憶の彼方に、別の顔、別の声が残っているような――
脳裏に閃きが走る。
両手剣を持つ少女、皮肉な笑み。
空を覆う巨大な竜。
ぼろぼろの服を着た少年が、未知の言葉をささやく。
彼は頭を振った。
「大丈夫?」と父が気づいて尋ねる。
「うん、ただ……少しめまいが」グレブはつぶやいた。
「昏睡からの回復よ」母がうなずく。「もっと休まないと」
彼はうなずいたが、不安は消えなかった。
家ではささやかな祝祭が開かれた。台所からは焼き上がった鶏肉と焼き菓子の香り。アーニャは隅でタブレットをいじっている。
グレブは父の隣に座った。
父は二人にお茶を注ぎ、少し沈黙してから尋ねた。
「何を考えている?」
グレブはカップを見つめながら答えた。
「変な夢を見るんだ……ここじゃないどこかにいたような」
父は鼻を鳴らした。
「昏睡の後はよくある。脳が回復しているだけだ。大事なのは、君が家にいることだ」
「……ああ」
だが疑念は消えなかった。
窓の外にはいつもの街の夕暮れ。だが、どこか他人の世界のようでもあった。
やがて生活は穏やかに流れた。皆が仕事や学校へ行き、母だけが家に残って家事をしながら歌を口ずさむ。
グレブは退屈の中でゲームをしていた。
画面では、彼がかつて作ったキャラクター「G・リフ」が戦っていた。
モンスターに攻撃し、回避し、戦い続ける。
だが――尾の一撃。
防げない。
画面に表示される。
「低HP。ヘマティスを使用してください」
そして――
「あなたは死にました」
「くそっ!」
彼はコントローラーを投げた。
そのとき母が入ってきた。
「また飲んだの!? このバカ!」
グレブは驚いた。
「……え?」
「薬は飲んだの?」
「ああ……飲んでるよ。心配しないで」
母は何も言わず去った。
グレブは小さく首を振る。
何かが少しずれている――世界が。
昼過ぎ、アーニャが帰宅し、タブレットでゲームを始めた。
「何してるの?」
「プリンセスをドラゴンから救うの」
「ロボットが?」
「別の次元の使者なんだって」
「エネルギーコアってやつ」
グレブは凍りついた。
「エネルギーコア……?」
――その言葉に、胸の奥が反応する。
「なくなると壊れるの。でも結晶で回復できるの」
彼は息を呑む。
――これは……
夕方、リザが戻る。
「ふう、疲れた! 散歩に行こう!」
やがて彼らは川沿いを歩く。
夕暮れ、カフェ、風、光。
すべてが美しい。
カフェでコーヒーを飲みながら、グレブは言葉を紡ぐ。
「現実って、ひとつじゃなくて、たくさんの断片の集合体だと思わない?」
彼は続けた。
「もしかすると、私たちはそれぞれ違う世界を見ているのかもしれない」
アーニャが言った。
「みんな一人の人間が、忘れているだけじゃない?」
彼は微笑んだ。
「かもしれないな……」
そして言う。
「大切なのは、今この瞬間だ」
アーニャは肩に頭を預け、リザは彼の手を握った。
川は静かに流れ続けていた。




