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第1話

初投稿になります。よろしくお願いします。

 夕方の報道番組で、どっかの大学の偉い人が解説してた。

 ダンジョンの深い奥底には人類の可能性を広げるウンタラカンタラが存在しているから、俺たちは国家をあげて攻略しなきゃいけないんだって。


 でも、俺からすれば話はもっと単純だ。


 ダンジョンには誰をも魅了する夢とロマンがある。


 そして同時に、それよりもずっと大きくて、ずっと不平等で、どうしようもないくらいに真っ黒な絶望で溢れている。


「牛宮悟君だっけ、君のスキル何なの?」


 ダンジョンの第三層への遠征中、パーティーメンバーが焚き火を囲んでいる中、俺は少し離れたところで行動食を食っていた。

 すると、男に話しかけられた。


 刈り込んだ爽やかな短髪で、装備も小綺麗で、顔も良い。

 確か、このパーティーの副リーダーだったっけ。名前は高宮さん。


 中間管理職は俺みたいなのにも気を遣わなくちゃいけなくて大変だな。


「俺、『無能』で……」

「え? スキルないのにダンジョン潜ってるの? ハハ。すごい勇気だね」


 高宮さんの口から苦笑が漏れた。

 多分、他意はないのだろう。ただ単に、スキルを持たない人間がダンジョンに潜るという事態に驚いているだけだ。


「俺、『ダンジョンマスター』がガキの頃からの夢なんです」


 と言うと、今度は確かに高宮さんから嫌な感じの苦笑が漏れた。


「おお……! 言うねえ! すごいねえ! うん」


 言葉に迷っている。


 俺には彼が何を感じているのか、手に取るようにわかるよ。

 だってこういう反応には慣れっこだから。


「俺、このカンダタダンジョンの知識なら誰にも負けないですし、ステータス結構強いんで。『ダンジョンマスター』になるのは俺です」

「おお、志()立派なんだね」


 ……。

 それはもう「できない」と思ってるって言ってるようなもんじゃないか。

 高宮さんが言葉を濁していると、焚き火を囲んでいるその他パーティーメンバーの皆さんから彼に声がかかる。


「副リーダー。そんな『無能』なんかに構ってないで、こっち来いよ! 今マシュマロ焼いてんだけど!」


 高宮さんは困ったように俺と焚き火の方を見比べた挙句、


「ああ、わかった。俺のもくれよ」


 と大きな声で言って去っていく。


「じゃ、悟くん。夢もそこそこにしなよ。身の程ってのがあるからさ」


 そう言い残して。


 俺は高宮さんが去っていくのを見届けると、新しい行動食のパックを開けて齧る。

 冷たくてボサボサと食感の悪い物体を水筒の水で嚥下する。

 相変わらずまずい。


 ダンジョンが突如現れて五十年。

 ダンジョンを探索する探索者や探索者向けビジネスもそれくらいの歴史があるわけだが、

 どういうわけか行動食は美味くなる気配がない。


 食べながら考える。

 高宮さんのスキルは『風刃』だっけ。

 戦闘向きで、いかにも探索者って感じだ。


 それに引き換え俺は……


「ステータス・オープン」


 と呟くと、目の前に透明な板状のステータスウィンドウが現れる。

 体力や俊敏性やらが書かれた板の一項目。

 俺の目は何千回も見たその表示を捉える。


『スキル:オナラマスター

     おならを操る』


 俺は『無能』じゃない。けど、ことによっちゃもっと悪いかもしれない。


「ハハッ。こんなの、人に言えるわけないよな」


 誰にも言えない下ネタみたいなハズレスキルに生まれついたのに、俺はまだダンジョンへの夢を諦めきれずにいた。

次回、ダンジョン探索。1000字くらい。

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