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幽霊助手のいる霊能探偵事務所  作者: スガヒロ


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第7話 未来を読む影


逃げ去った男が階段を駆け下りる音は、アパートの外まで響いていた。


「玲くん……大丈夫?」


「ええ。向こうが一方的に怯えて逃げただけです」


 玲は落ち着いた声で答えながら、ドアの外に漂う黒紫の残留念をじっと観察した。


(……未来を“見せられた”反応……

 いや……カスミがマコトの未来に強く干渉した影響か?)


 さっきカスミが未来を覗いた瞬間――

 彼女の霊気が一瞬だけ“跳ねた”のを感じた。


「カスミ。霊体が……少し不安定になっていますよ」


「う、うん……なんか……胸の奥がざわざわする……」


 カスミは自分の腕を見つめた。

 確かに、さっきより“揺らぎ”が強い。


 だが――

 玲はそれを見て顔をしかめるのではなく、逆に目を細めた。


(……これは“消える兆候”じゃない。

 霊力が再構成されている……

 封印が解けかけているような波形だ)


 玲はカスミに悟られないように軽く息を吐いた。


「無理に未来を見ようとしないでください。霊体に負担が出ます」


「でも……マコトが危ないんだもの……!

 放っておけるわけないでしょ……!」


 玲は目を伏せた。


(時間がないのは事実……

 そして連中は確実に“儀式”の準備を加速させている)


 そのとき、階段の下で――

 “誰かの足音”が響いた。


 軽い靴音。

 だが念の“色”は異様に暗く、深い。


「……来ましたね」


「だ、誰が……?」


「この気配……予想どおりなら――」


 玲とカスミは階段の隙間から下を覗いた。


 逃げた男が、階段下で“誰か”と向き合っていた。


「せ、先生……!」


 逃げた男は、恐怖に膝を震わせている。


 その前に立つのは――

 長身の男。

 黒いコートに、顔は逆光で見えない。


 ただ、周囲に漂う“霊の濃度”が異常だった。


(……あれが……“先生”……)


 カスミは震える。


「“色”が……視えない……」


「……僕もです」


 玲は審眼を開いたが――

 男の周囲は真っ黒に塗りつぶされたように視界が乱れた。


(念が濃すぎて、“視えない”……

 こんなの……初めてだ)


 “先生”は動かず、ただ静かに男に言った。


「お前は震えたな」


 その声は静かで、低く、耳の奥に直接触れるようだった。


「さっきの光……未来の断片を視たのだろう」


「ひっ……!」


「お前が視た未来は、“お前自身の死”。違うか?」


「な、なんで……!」


「私は“未来を視る者”だ」


 先生の瞳が、逆光の中でかすかに光った。


「未来を固定するためには、

 揺らぐ因子を排除する必要がある」


 


(……揺らぐ因子……?

 僕……?)


 玲は息を呑んだ。


「行くぞ」


 先生は背を向ける。


「マコトは……もう“解放の準備”が整っている。

 “儀式の日”は前倒しだ。

 今夜、最終確認を行う」


「今夜……!?」


 カスミの霊体が震え上がった。


「カスミ、声を抑えてください。気づかれます」


「ご、ごめん……!」


 だが――遅かった。


 階段の下から、ゆっくりと視線が上がってくる。


 “先生”が――

 確実に、玲とカスミのいる位置を見ていた。


(……バレた……!?)


 玲は気配遮断をしている。

 普通の人間はもちろん、霊でも簡単に見破れない。


 だが“先生”は、迷いなく言った。


「光る色の“柱”……」


 玲の背筋に冷たい衝撃が走る。


「お前か」


(なぜ……?

 僕の“霊的特性”を知って……)


 先生は微笑んだ。


「未来を揺らす者よ」


 そして――

 黒い霧のようなものに包まれ、

 先生の姿も、逃げた男も消えた。


 ただ残ったのは、不気味な静けさだけ。


 


「……玲くん……今の人……」


「はい。間違いありません。

 あれが――“未来を固定する怪物”です」


 玲は拳を握りしめる。


「今夜の儀式。必ず止めます」


 カスミは震える霊体で、玲を見つめた。


「お願い……玲くん……

 マコトを……あんな未来に行かせちゃダメ……!」


 玲は静かにうなずいた。


「カスミさん。あなたも来てください。

 あなたの力がなければ、この未来は変えられません」


「……うん!」


 カスミの霊体は弱い。

 しかし、光は消えていない。


むしろ――

ふっと、小さく強く輝いた。


(……やはり。これは“消滅”じゃない……

 カスミさんの霊力は、何か“覚醒前”の揺らぎだ)


 玲はそう確信しながら、夜の街へ駆け出した。


 すべての未来線が、

 今夜――一つの場所へ集まり始めていた。

いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、第8話 儀式の場所へ向かう夜/カスミの“揺らぎ


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