第二章 第11話 影の核心/遼の残響
影の中心には、
白く光る細い糸のような“核”があった。
それはまるで——
誰かが泣いている声の残響 に見えた。
(あれが……遼の“怒り”の源……
本来は誰かを責めるためのものじゃない……
“自分を責め続けている声”……)
玲は静かに手を伸ばす。
「影よ。
葵さんではなく……
あなた自身の声を聞かせなさい」
影『やめろ……やめろ……触れるな……!』
黒い腕が玲に襲いかかる。
> 「おらァ!!」
クロベエが影の腕に飛びかかり、
霊体にも関わらず噛みつき、引き裂くように揺らす。
影『――ッ!!』
> 「若造、今だ!
“核”をこっちへ引きずり出せ!!」
玲「わかっています!」
玲が核心に触れた瞬間——
ドクン……!
心臓の裏から、強烈な“他人の記憶”が流れ込んだ。
---
――泣いている少年。
倒れた誰かの手を握る少年。
少年『ごめんなさい……もっと早く……僕が……!』
---
玲(これは……浅間遼の“過去”……?)
---
――病院の白い天井。
家族の怒鳴り声。
少年の震える肩。
少年『私のせいだ……私のせいだ……』
---
玲「……これは……」
影『言うな……!
思い出すな……!
“あの日の俺”を呼ぶな……!』
影の声は、怒りではなく——
泣き叫ぶ子供のようだった。
玲「あなたは……
誰かを失ったんですね」
影『うるさい……黙れ……黙れ……!!
俺は……俺は“あの日”……』
葵が息をのむ。
「これ……遼さんの……記憶……?」
クロベエが低く言う。
> 「ああ。
遼の“怒りの残滓”だ。
本当は誰も責めてねぇ。
“自分自身”に怒ってんだよ」
カスミ「じゃあ……!
葵さんを責めたのも……遼さんの“勘違いの怒り”……?」
玲「ええ。
罪悪感が弱いところに入り込み、
“葵さんの影”と同化してしまった」
葵「……っ……!」
玲はさらに蒼い眼でその核を見つめた。
(……この核……
怒りでも怨みでもない……
“喪失の影”だ……)
影『俺が……救えなかった……
俺さえ動けていれば……!!』
カスミが震える声で言う。
「この声……責めてるんじゃない……
すごく……苦しんでる声……」
玲「ええ。
この影は、誰かを呪っているのではなく……
“自分を責め続けている影”です」
葵「じゃあ……どうすれば……!」
そのとき、部屋全体が大きく揺れた。
ガガガガガ……!!
江戸の壁がせり出し、
昭和の棚が軋み、
平成の机が宙に浮く。
「……っ!!
玲くん、未来がまた揺れてる!!」
カスミが叫ぶ。
「この家……“全部過去に沈む未来”が
もっとハッキリしてきてる!!
玲くんが……巻き込まれる未来……!!」
玲「時間切れですね……!」
「クロベエ! 影を押さえてください!」
> 「任せとけ! オレは噛むの得意だからな!」
「カスミ! 葵さんを守って!」
「うん!!」
玲は核心へ手を伸ばした。
「遼……
あなたをここから“外へ引きずり出す”!」
影『やめろ!!!
そこを触るな!!!
あれは——
“あの日の俺”だ!!!』
影の暴走が最大値に達し、
部屋の三つの時代が完全に融合し始めた。
葵「玲くん!!!
危ない!!」
カスミ「玲くん、早く……!!
このままじゃ時間が崩れる!!」
玲「大丈夫です……!
葵さん……!」
葵「……っ!」
玲「あなたの“影”は、あなたを責めてなんかいません。
遼の“残響”が、それを上書きしていただけです」
葵「じゃあ……!」
玲「あなたは、もう……
自分を責めなくていい」
そして――
玲は影の核を、強くつかんだ。
いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、第二章 第12話 影の決着/遼の残響の解放
気に入っていただけたら
⭐評価&ブクマして応援して下さい!




