第二章 第10話 影との対決・葵の心の核心へ
『……守れなかった……守れない……全部……お前のせいだ……』
三つの顔を揺らしながら、
影が嘆きと怒りを混ぜた声で叫ぶ。
部屋の家具が震え、
畳がきしんだ。
“時代の上書き”がさらに進む。
昭和の棚、平成の机、江戸の押し入れ。
三つの異なる時代が、部屋の中で同時に存在し続けている。
(このままでは、家が完全に呑み込まれる……)
葵はその場に崩れ落ち、
震える声で叫んだ。
「私のせいじゃない……!
でも……私のせいかもしれない……!
弟も……ケガした甥っ子も……私が……!」
「ちがうよ!」
カスミが葵の肩に抱きつくように寄り添う。
「葵さんのせいじゃないよ……!
だって、全部……“あとから知った未来”じゃない……!」
葵「でも……!私は……もっと……何かできた……!」
玲が静かに言った。
「葵さん。
あなたの“罪悪感”は、本来こんな姿ではありません」
葵「え……?」
玲「罪悪感は心の反省であって、責める声ではない。
この影が叫んでいる“怒り”は――」
玲は影を指差した。
「あなたのものではありません」
「それは“浅間遼の怒り”です」
影が一瞬揺れた。
『……守れなかった……どうして……
俺は……あの日……!』
葵「この声……やっぱり私じゃ……ない……!」
玲「ええ。
この声は、あなたの心の底ではなく――
“遼の残した念”の声です」
クロベエが尻尾を立てて言う。
> 「遼の念が、葵の影に寄生してんだよ。
自分の怒りを押しつけて、強制的に形にしてる」
部屋の壁が急に“昭和”色へと染まり、
影が葵の足元へ伸びた。
『思い出せ……“あの日”を……』
葵「――っ!!」
影の手が触れた瞬間、
葵の視界に、鮮やかな過去が流れ込む。
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公園で転んで泣いている弟
叔父に怒鳴られて泣いている甥
病室で“何もできない自分”
家族に「強くなれ」と言われた日々
そして――
“私がそばにいれば”と思い続けてきた、長い後悔
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「やめて……やめて……!!
もう……思い出したくない……!」
カスミは必死に葵へ手を伸ばす。
「葵さん!!
それはあなたの傷であって、罰じゃない!!」
玲は深く息を吸い、蒼い目を見開いた。
(……見える……!
影の中心には、葵さんの罪悪感ではなく……
遼自身の“悔恨”が渦巻いている!)
「この影は――“遼の後悔”が核です!」
クロベエ> 「やっぱりか……!
じゃあ核さえ抜けば、影は崩れる!」
玲「ええ。
ただし核は――」
影が三つの顔を広げる。
『……ちかづくな……!!!』
――“奥の奥”に隠れている。
影が突然、黒い腕を広げて襲いかかる。
「くっ……!」
玲は葵を抱いて後ろへ飛び退く。
カスミ「玲くん!!」
> クロベエ「前はオレがやる!」
黒猫の霊が飛び上がり、
影の腕に噛みつくように飛びかかった。
霊体のはずなのに、
“噛みつき”が成立するほどの霊圧を持っている。
> 「若造!
核を探せ!!
今なら影が“自分を守るのに精一杯”だ!!」
玲「わかっています!」
玲は蒼眼を強く輝かせ、
黒い影の奥をじっと覗き込んだ。
(見えた……
影の奥の奥……
白く、細い糸……!)
それは――
まるで誰かが泣きながら叫んでいるような“残響”。
(あれが、核……!
あれを断てば――影は崩れる!)
玲「カスミ!」
「うん!」
玲「葵さんの心を守ってください。
僕は“核”を引きずり出します!」
カスミは葵の手を強く握った。
「葵さん、大丈夫……!
これ、終わらせよう……!」
葵「……っ……!」
影が突然、三つの顔を融合させる。
『――来るな……!!!
“核心”に触れるな……!!!』
部屋全体が震えた。
昭和の壁紙が剥がれ、
平成の机が揺れ、
江戸の畳が軋む。
時代そのものが歪み始めた。
玲「……もう隠せませんよ。
あなたの“本当の核”」
影『――――ッ!!』
玲は影へ一歩踏み込む。
そして――
核心へ手を伸ばした。
いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、第二章 第11話 影の核心/遼の残響
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