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星海の涙  作者: サク


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17/20

17.破綻の旋律

「それを踏み越えて無理やり引きずり出すなんて――俺たちの舞台と一緒にするな!」


海斗の声が空間を裂いた。

怒鳴り声ではない。だが、胸の奥から絞り出した言葉には鋭さが宿り、残響となって光の舞台全体に染みわたった。


エウリュディケの表情が一瞬で固まる。

無垢な少女のように輝いていた瞳が、微かな揺らぎを帯びて震え始める。

唇が小さく開き、掠れた声が漏れた。


「……一緒に……するな?」


その言葉は、か細い子供の呟きのようでありながら、同時に空間全体を振るわせる重みを持っていた。


黒いノイズが舞台の隅から溢れ出す。

それは煙のように漂い、照明を歪ませ、観客席の幻影をぐにゃりと溶かしていく。

悲鳴の音色は甲高い悲鳴から低いうめき声へと変わり、和音だったものが無惨に外れた音階のように響いた。


「どうして……どうして認めてくれないの?」

エウリュディケは両手を胸に当て、首を振りながら後ずさる。

「私は……あなたに見てほしかったのに……!」


涙のような光の粒が頬を伝い、それが床に落ちると、床面が割れるようにノイズが走った。

黒と白の亀裂が舞台全体を走り、虚構の観客席が次々と崩れ落ちていく。


「もっと……もっと輝いてほしかったのに!

私の舞台は、間違っていたの……?」


その声は必死で、無邪気な少女の叫びにも似ていた。

けれど同時に、空間を歪ませる狂気の力を孕んでいた。


観客席の幻影が完全に崩壊すると、そこに広がったのは虚無の闇。

光の粒が漂うだけの空間に、エウリュディケの声とノイズが交錯する。


「違う……これは音楽じゃない……」

彼女自身の声が反響し、黒い残響となって返ってくる。


舞台はもはや、調和を失った不協和音の渦だった。

海斗の叫びは、その渦の中心に鋭く突き刺さったまま、エウリュディケを揺さぶり続けていた。


クラウスの嗤い声が、それを掻き消すように舞台を支配する。

「否定されてこそ、お前は完成する! その痛みこそが真実なんだ!」


エウリュディケの瞳は涙で濡れ、同時に狂気の光に揺らめいていた。

海斗の言葉で芽生えた戸惑いが、クラウスの囃し立てによって、苦しみへと変わっていく。

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