【前編】第4話 黒の魔女
「あ、あんた何をした……無職でレベル一じゃないのか……」
ダルそうだった受付嬢もさすがに背筋をしっかりと起こして俺を見据える。
「いや、行けそうだなって思っただけだよ」
「ありえない……」
そりゃそうだろう。筋力1と表示されている無職がレベル20の戦士にかなうはずがない。
けど俺は確信していた。
例えステータスが低くても、「ナイトブレードライダー4099 2」のゲームシステムの恩恵を受けている俺なら出来ると。
オープンワールドは自由度が高いゲームが故、高難易度地域にすぐに足を運ぶこともできる。そんな時、地域のモンスターが危険か判断するために、モンスターのふちの色で相対的に強さを計ることができる基本システムがある。
今回のバッカスはレベル20だったが、ふちの色は緑色だった。
つまり「ナイトブレードライダー4099 2」のゲームシステムや攻撃倍率で計算したとき、俺の方が優位だったからこそ、勝ち目があると踏んだのだ。
さすがバグっているだけあって、チート級のシステムが俺をアシストしたということである。
「も、もういっかいだ おで まだ やれる」
流石に拳法1程度では倒しきれる程の威力はなかったようで、バッカスはふらふらと身を起こそうとする。
何度でも、といおうとしたとき、かつかつかつと床を鳴らして、バッカスと俺の間に歩み出てきた一人の少女がいた。
「やめとこ、勝負はついたよ」
「あ、あんだは……」
バッカスはその少女を見て、戦意を失ったのか地面に倒れてしまう。バッカスの言葉の続きを引き継ぐように受付嬢が呟いた。
「黒の魔女……」
受付嬢の言葉には恐れや恐怖が含まれているような気がした。
周囲のギャラリーたちも息を飲んで黒の魔女を見つめている。
「黒の魔女……?」
「私はクロバナ。うちのネコさんがお世話になったね、おにーさん」
頭の先から足の先まで真っ黒なシルエット。
絵に描いたような先端が曲がっている魔女の帽子に、漆黒のローブ。闇夜のように美しい長い黒髪と整った可愛らしい容姿、年の頃は15から16歳くらいに思える。
彼女の足元には俺をここまで案内してきた黒猫さんが寄り添っていた。
「今回は私が組んであげるよ、ネコさんのお礼」
「ほ、ほんとか!」
こんな強そうな魔法使いがパーティーを組んでくれるなんて願ったりかなったりだと思ったが、視界の端で受付嬢が首を左右に振っている。
視線は『や・め・と・け』と、俺に訴えている。
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