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【前編】第3話 異世界での初めての戦闘は『おで』と俺

 このままガラクタ分解スキルで街中の素材を集めても、いつかゴミが尽きて売る物もなくなってしまう。やはり俺もいつかは冒険に出なくてはいけない。


「うーん、どうしたもんか。オープンワールドゲームみたいにダンジョンに入って、住みつく盗賊のねぐらから、全てをかっぱらってくる事ができればいいんだが、実際はインパクトありすぎる行動だし、できるもんなのかな……」


 ましてや国民的RPGのように人様の家のタンスを調べるわけにもいかず、顎に手を当てて空を仰ぎ見ると黒い尻尾が視界を横切った。


 にゃーん。


「あの時の黒猫さん」


 さっきパンをあげた黒猫が、塀の上からじっと俺を見ている。

 彼? 彼女? は視線が合うとまるでついて来いというように、少し歩いては振り向いてこちらを見てる。


「何処かに案内してるのか?」


 黒猫は大通りを抜けて脇道に逸れ、荷物で通行止めの狭い路地も進み、段々薄暗い道へと入っていく。


「物騒な道だな……」


 だが幸いなことに物取りや浮浪者はおらず、たまに謎の虫を見かける程度で危険なく黒猫の後を追う。


 知らない道を歩くと体感時間が長くなると聞いたのを思い出す。


 おそらく十分も歩いていないが、気持ち三十分ほど経過したころ、地下水路への道を辿り、さらに地下への階段の前で黒猫さんの姿が消えた。


「この階段の下が終着地点か」


 湿った階段に気を付けながら薄暗がりの中を進んでいくと、背丈が二メートルほどある大男が、扉の前で仁王立ちしていた。


「ど、ども……」


 とりあえず挨拶してみるが、大男は口を開かない。


 すると何処から出てきたのか、大男の足元をにゃーんと黒猫がすり抜け、男はハッとした表情でスグにドアを開けた。


 扉の中に黒猫が滑り込むと、お前は入らないのか、と言わんばかりの視線を投げつけてくるので、俺も扉の中にそそくさと入り込む。


 中は薄暗いがランプとろうそくにより、ほんのり状況は理解できる。

 一言でいえばガラの悪い者達が集う酒場だ。


 その奥にはギルドカウンターのような場所に、気怠そうに机に突っ伏している受付嬢の姿が見えた。


 もしかしてここもギルドなんだろうか。


「あ、あの、空いているパーティーか、初心者でも出来るクエストを探しているんですが」


 カウンターに倒れていた受付嬢はゾンビのような緩慢な動きで顔を上げる。顔面は蒼白で化粧の色が濃く、ツインテール。何とも個性の強い女性だ。


「あんたどうやってここに来たの……」

「ど、どうって」

「ガイルの奴、また門番さぼりやがったな……」


 舌打ちしながら俺の頭からつま先まで見て、くくっと彼女は笑う。

 きっととステータスを確認したのだろう。


「紹介できるパーティーはない。どうしてもっていうなら、あんたの後ろの誰かを納得させることだね。さもないとパーティーを組んでもお背中からさされて死んじゃうからね……」


 振り向くと筋骨隆々で世紀末を生き抜いてきたような肩パッドを付けたモヒカンたちが、ナイフを下で舐めながら、下品な笑い方をしている。


「じゃ、じゃあクエストの方は……」

「クエストは紹介してやってもいい」


「ほ、ほんとですか!」


「ああ、好きなのを選びな。ここのゲロ掃除か便所掃除だけどな、げへ、へへへ……」

 受付嬢の笑いに合わせて、屈強な男たちも手を叩いて笑う。

【カクヨム】

https://kakuyomu.jp/works/16818093086666246290

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