【後編】第1話 リアルはモブ、異世界ではオープンワールドのように
――1時間後。
『ようこそ、王都セブンスへ』
※実績が解除されました。
「おー、実績が解除された」
俺はユウギ デンジ、召喚前は30代の超絶働きアリな会社員だ。
今はぼうっと城下町の路肩に座りながら、自身のステータス画面を眺めている何処にでもいる無職の中年である。
「口も挟めぬまま、早々に投げ捨てられてしまった」
初めての海外旅行で一人になってしまったような、あまりの無慈悲さに1時間ほど放心してしまっていた。
「本当なら家でゆっくりゲームしてるはずだったのになぁ」
心待ちにしてた新作ゲーム、「ナイトブレードライダー4099 2」をやりこんでるはずが――秋葉原のゲームショップを出たとたんに新作ゲームと共に異世界転移に巻き込まれた。
「異世界でも長期的なキャリア形成の観点から、おっさんは不要ってことかね。何も城下町に投げ捨てなくたってなぁ」
改めてステータス画面を眺めると、確かにレベル1で生まれたての小鹿よりも貧弱だろう。
レベルアップに必要な経験値に至っては【∞】(無限)マークなので、一生レベル1なのも笑える。
「まあ、他に召喚された高校生たちの中に、おっさんが混ざるのも忍びないし、低ステータスの俺を無駄死にさせないように放り出してくれた――と解釈しよう!」
俺の良いところは切り替えが早く前向きなことだ。
――と、ステータス画面にバグってるボタンがあるんだけど。
ボタンの形はしているが、文字は読めず、砂嵐のような線がいくつも入り、色も大昔のブラウン管テレビが不調時のように、カラフルな色合いを放っている。
「お、押してみるか……?」
俺は恐る恐るバグったボタンに触れると、宙に浮かんでいるステータス画面が、突然クルッと回転し、親の顔よりも見た「ナイトブレードライダー4099」のメニュー画面へと切り替わった。
「ん? んんん?」
ところどころ違うのは「2作目」仕様なのだろう。
情報収集に余念がない俺は詳しいのだ。
「えーっと、パーク、装備、ステータス、乗り物――おお、新要素のカンパニーとハウジング、育成もある。グレーアウトしてるけど」
2作目からの新要素は、後々使用できるってことなのかな。
「おおおお、やっぱりあった実績解除!」
1作目は100%になるほどやりこんだのだ、2作目も100%になるほどやりこもうと心に決めていたのだが――。
「異世界に来ちゃったしな……」
新作ゲームを発売日当日にできない悲しみが襲ってきたが、ふと視界の右側に、まだ残っている実績解除アナウンスに気が付いた。
「もしかして、異世界でも実績解除できる……かも?」
ようこそ、王都セブンスへ、が表示されるってことは、おそらく可能だ。
そう思ったとたん、おなかの下あたりから、だんだん気合が湧き出てくる。
「よおし、ならやってやろうじゃねえか」
英雄召喚として王都セブンスに召喚されたが、不要と捨てられ、楽しみだった新作ゲームもできないおっさんが――。
「異世界の実績を全て解除してやるよ!!」
そうすりゃ、城下町に投げ捨てられた俺が、異世界に召喚された意味もあるかもしれない。
それに自分自身を主人公として、ビルドを作っていくのって楽しそうじゃん?
現実の人生ではモブ脇役のように生きてきたおっさんだ、異世界では主人公として生きても悪いことはないだろう?
――オープンワールドの仕様が適応されてるんだ、ゲームの彼らみたいに自由気ままに過ごそうじゃないか。
そうさ、大好きな近未来型オープンワールドゲームのパーク(※スキルのようなモノ)で、生き抜いてやろう、この異世界を。
「手始めに初期ポイントで必須パークだけは取得しとくか」
俺はパーク画面から『ガラクタ分解1』を取得して、近くに捨てられいる木材の切れ端を視界に捉える。
すると勝手に俺の無限アイテムボックスの中に素材:木材として放り込まれた。
次にゴミ捨て場に捨てられている真っ二つに折れた剣を視界にとらえると、今度はアイアンインゴットとして収納される。
「すごい……分解するものによっては、ナイトブレードライダー4099に登場した、近未来っぽい素材になって収納されるのか」
じんわりと手ごたえを感じて、久しぶりに生きた心地が身体を駆け巡る。
「まずは町中の素材を集めて、素材屋を見つけて売買するところから始めるか!」
召喚された訳は他の召喚英雄さんたちにお任せして、投げ捨てられた俺は自由気ままに異世界で実績解除させていただきます!
――開幕
【カクヨム】
https://kakuyomu.jp/works/16818093086666246290
※最新話 毎日 7:17 に更新中!
※カクヨムが先行して配信されています。
小説家になろう様をはじめ、カクヨムでも感想、レビュー、★評価、応援を受け付けておりますので、お気軽にいらしてください!