プロローグ③
……女は深い暗闇にいた。
幾星霜の時をその暗闇の中で過ごし、やがて自我を失い何も分からなくなった。
ここはどこか。自分は何者か。私が愛した人は…。
「神選級!?ウソでしょ!?」
リファは目を見開いてそう叫んだ。
「ウソじゃありませんっ!。」
少女もそう叫んだ。
「神選級だって?」
「ホントか?」
「ウソでしょー」
周りの人間もザワザワと騒ぎだす。
「二人共行くぞっ!」
カイトは二人の手を引っ張りその場から走りだした。
「いらっしゃいませー。3名様ですね。」
カイト達はひとまず料理屋へと入る事にした。
「それで?あなた本当に神選級なの?」
リファが半分疑いの目で少女を見つめる。
「はい!神選級魔術士、名をルーナと申します。」
「この度エルディアンテ魔法学院へと進学するため、中枢島より参りました。」
少女は真っ直ぐな目でリファを見つめ
そう言った。
「そういえばルルフィラから教官が来るって言ってたよな?それってもしかして…。」カイトがハッとた顔でルーナの方を見る。
「多分私の試験の教官です。私の魔法は少々特殊なので、普通の試験は出来ないのです。」
「特殊だから魔法を見せられないの?」
「う〜ん、見せられないというか、なんというか…」
「どういう事よ!はっきり言いなさい。」
リファが詰め寄る。
「…ここで魔法を使えばこの街は消し飛びます。。」
カイトとリファは顔を見合わせて言葉を失った…。
それからしばらく談笑をしながら食事をした。
同い年同士すぐに打ち解け合い、
鹿肉の香草炒めやワタリ蟹のスープなどに舌鼓を打った後、
2人はルーナと別れ、料理屋を後にした。
「多分あの子マジで神選級よね。」
リファは遠くを見ながらそう言った。
「ルーナの目は嘘なんかついてない目だった。それに魔法の話も随分と具体的だったし。ほんとに神選級だと思う。同じ年なのに凄いな…。」
カイトは驚きながらも感心していた。
「そういえばあんたって卒業した後は何するの?私は剣術が得意だから騎士か剣の教官あたりだけど。」
「俺は決まってるよ。世界を冒険するんだ。そして未知の世界を発見する。」
「…は?そんな職業無いわよ?それに世界って言っても6つの島以外は海じゃない。真面目に考えなさいよね、、」
リファが呆れながらこっちを見る。
「本気だぞ?世界を冒険して、いつかまだ誰も見たことの無いモノをみつけるんだ。それに職業ならぴったりなのがあるだろ?」
「…?そんな職業あったかしら?」
「ってもしかして!!」
「うん、ハンターだよ。」
ハンターとは魔物がいた時代、それらを狩って生活していた者達である。
古来よりハンターは魔物を積極的に狩り、未開の地を探索して世界を開拓していた。騎士が世界を守る者ならハンターは世界を開拓する者として、存在していた。
しかし、既に数百年前には6つの島全ての探索を終え、魔物自体もほぼ絶滅している。
現代においてその存在価値は薄れ、
よっぽどの物好き以外はハンターになる事などないのである。
「…あんた本気!?」
「もちろん!俺はリファみたいに強くはないし、ルーナみたいな特別な力もない。だけど、この夢だけは絶対に譲れない。」
目を輝かせてそう話すカイトにリファはただ呆れていた。
(それに、いつも夢の中に出てくる女の人を探さなくちゃいけない気がするんだ…。)
ーーしばらく話しながら歩き、やがて2人は大きな学院の門の前に到着した。
「さぁ着いたわよ!ここがサントリナ学院。さっさと試験を終わらせましょ。」
「あぁ、ここがスタート地点だ。」
2人は門をくぐり、物語は始まる…。