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第6話『その人も!! 『聖人さん』なんですよ!!』

ドタバタと騒がしい道中の二人旅も終わり、私とリアムさんは以前に寄った町よりも大きな町にたどり着いた。


そして、リアムさんの後ろに付いて歩きながら、町の中を進む。


「はぐれるなよ」


「はい!」


「どうやらこの町にいる『聖なる刻印』の持ち主は戦士の適性を持った奴らしい。という事はかなり鍛えられている男という事になるな。それらしい男が居たら教えろ。俺も見ているがな」


「はい」


私はリアムさんに返事をしながら周囲を見渡して、右手に『聖なる刻印』が刻まれた人が居ないか探す。


そして、苦しそうにお腹を押さえて座り込む人を見つけ、思わずそこに駆け寄るのだった。


「あの。大丈夫ですか?」


「……え? 貴女は」


「私は通りすがりの者です。お姉さんが苦しそうにしていたので、気になってしまって」


「そう……優しいのね」


「いえ! 私は癒しの力が使えますから、当然の事です!」


私はとりあえずお姉さんの体に障らせてもらい、悪い所を見つけて、癒しの力を使う事にした。


そして癒している最中に、どうやら根本的な原因はお腹に付いていた古い傷跡だという事が分かり、そこも全力で癒す。


「ふぃー! 何とかなりました!」


「……凄い。まさか、あの傷跡が消えるなんて。貴女。本当に凄い人なのね」


「いえいえ。そんな全然凄くなんて」


「あぁ。そうだな。まったくだ。俺もそう思うよ」


「……ぁ」


後ろから不意に聞こえてきた声に、私は体を硬直させた。


しかしその人は丁寧に私の体を捕まえると反転させ、私と向き合う。


素晴らしい笑顔だった。思わず逃げ出したくなるほどに。


「さて。アメリア? 俺が何て言ったか、覚えてるか?」


「は、はい。はぐれない様にと」


「そうだ。よく覚えていたな。で? お前はここで、何をやっていた」


「いえ。その、あの……ちょっとだけ癒しの力をですね」


「この考えなしが!! 何度言ったら分かる!! 良いか!? 俺たちはここで、大事な目的があるんだ!? それは何よりも重要な事だ。復唱!」


「私たちは! この町で! 何よりも重要な目的があります!」


「よろしい。では行くぞ」


「はい!」


何とかリアムさんに許してもらい、私はリアムさんに手を繋がれたまま歩き出した。


「あ、あの!」


「お姉さん! では、さようなら!」


そしてお姉さんにも手を振って、リアムさんに歩幅を合わせる。


相変わらず歩くのは早いけれど、小走りすれば付いて行けるから問題なしだ。


まぁ、時間を取らせてしまっているし、申し訳ない気持ちの方が大きい。


「今度こそ居なくなるなよ」


「はい!」


「返事は良いんだよな。いつもいつも。まぁ良い。まずは酒場に向かう。そこで『聖なる刻印』を持つ男を調べる」


「分かりました!」


そして私はリアムさんと一緒に酒場なる場所へ向かい、そこで情報収集をする事にした。


しかし、私たちは予想外な所で、その探し人と出会う事になるのだった。




それはリアムさんが酒場の受付でお兄さんと話をしている時の事。


一人暇をしていた私はふと、遠くで女性数人を連れながら歩いている男の人に目を向けた。


そして、チラっと見えたその右手に刻まれた赤い印に思わず一歩を踏み出そうとして、リアムさんに腕を引っ張られてしまう。


「コラ。言った傍からどこへ行く」


「いや、あの!」


「お前は何度同じ事を言えば分かるんだ。良いから大人しくしていろ。周りを見るな。目を閉じていろ」


「い、いえ。それがですね」


「言い訳をするな。お前が目を閉じられないというのなら、今すぐ塞いでやるが?」


「おいおい。自分勝手に女を縛り付ける奴は嫌われるぜ?」


「あ?」


リアムさんをどう説得しようかと悩んでいた私は、ふと後ろから聞こえてきた声に振り向いた。


そして、先ほどの男の人がすぐ近くに立っている事に気づき、驚き声を上げる。


しかし、それよりも早くリアムさんは私を背中の方に移動させながら前に一歩踏み出すのだった。


「なんだ。随分と余裕のない男じゃないか」


「いきなり話しかけてきてなんだ、お前は」


「俺はフィン。世界最高の剣士さ。知らないのか?」


「知らん。お前の様な雑魚はな」


「……ふぅん。言うじゃないか。なら決闘でもするか? 俺が勝ったらそっちのお嬢さんを俺にくれよ」


「ハッ。俺はお前みたいな暇人と違って忙しいんだ。他を当たれ」


「怖いのか?」


「無駄な挑発だな。失せろ」


「そこのお嬢さん! こんな臆病者と一緒に居ても楽しくないだろう! 俺と一緒に行こうぜ」


「コイツに話しかけるな」


「おいおい。俺が誰と話そうが俺の自由だろ? それにそっちのお嬢さんだってそうだ。それともそれを邪魔する権利がお前にあるのか?」


「あぁ、あるな。この小娘には重要な仕事がある。そしてそれはお前と話をする事じゃない。分かったら失せろ。三度目は無いぞ」


「自分勝手な奴だ。なら、勝手に貰っていくか」


「あ? ……っ! お前!!」


一瞬前までリアムさんの背中に隠れていた私は気が付くと、知らない男の人の腕の中で横抱きにされていた。


何が起きているのか分からないまま私はキョロキョロと周囲を見るが、状況はやはり理解出来ない。


「ふむふむ。中々の逸材だ。しかし、まだ子供だな」


「え? え?」


「よし、このまま磨いて十八になったら俺の物にするか」


「ソイツから、離れろ!!!」


リアムさんの怒りに満ちた声が聞こえてくると同時に、私の体は宙に舞い、近くにいた女の人に受け止められる事になる。


そして、女の人に抱きかかえられたまま、リアムさんを見ると、剣を抜き男の人に襲い掛かっている所だった。


「こんな所で抜くなよ。危ないだろ? 俺じゃ無きゃ事件だぜ?」


「チッ。ふざけた野郎だ。望み通り、このままその首飛ばしてやるよ!!」


「だ、駄目です! リアムさん!」


「お前は黙っていろ!! アメリア!」


「おいおい女の子には優しくしろよ」


「お前も黙っていろ!! このまま真っ二つにしてやるよ!!」


「その人も!! 『聖人さん』なんですよ!! リアムさん!!」


「なっ」


「その人も、だって?」


私の言葉で二人は動きを止め、そして私はお姉さんに抱きかかえられたまま右手を男の人に向ける。


「その証は」


「はい。『聖なる刻印』です。そしてリアムさんの右手にもあります」


「……マジか」


男の人は驚きながら私のすぐ傍に凄い速さで移動すると、私の右手を取ってマジマジと見た後、自分の右手と比べるのだった。


「おぉ、マジだ。てことはお嬢ちゃん達は、闇の力を封印する為に旅してるって感じ?」


「はい。そうです」


「という事は、もしかしてこの町に来たのは」


「はい。えっと、貴方を「フィンだ」あ、はい。フィンさんを闇の力を封印の旅にお誘いする為に」


「そうか。なるほどなぁ」


フィンさんはうんうんと頷きながら、剣を収め私の右手を取る。


そして、微笑むととんでもない事を口にするのだった。


「よし。じゃあそんなモン辞めてここで俺と一緒に暮らそうぜ? お嬢さん」


「え」


「あぁ、そうそう。お嬢さんの名前を聞いてなかったな。なんて言うんだ?」


「あ、アメリアです」


「そうか。アメリアちゃん。闇の力を封印なんて危ない旅は辞めてさ。ここで俺と楽しく暮らそうぜ?」


「え、えぇぇええー!?」

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