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第43話『好きじゃ無いけど、楽しんでいるという事ですか? そんな事ありますか?』

獣人さんとの話し合いは、狸の獣人さんが発した提案によって大きく方向を変え、おそらくは両者の意見をちょうどいい所で落とした様な結果となった。


そして、それから他の獣人さん達もそれぞれが、それぞれの方法で人間や世界を知る為の行動を始めると言ってくれて、私は嬉しくなってしまった。


でも、だからこそ、彼らの想いに応えなくてはいけないと思う。


それが例え女神という立場だとしても。


……いや、女神は嫌だな。どうなっても。


私は一人、うんと頷くのだった。




それから話し合いの場は解散となり、私はリアムさん達と合流する事が出来たのだった。


そして、リアムさん達と一緒に獣人さん達が開いてくれた宴会に参加する。


「「「アメリア様に万歳!!」」」


「……おい。アメリア」


「はい。なんでしょうか? リアムさん」


「お前、アイツらと何を話した」


「えっと、世間話でしょうか」


「世間話だと?」


リアムさんはジロリと私を睨みながら、鼻を鳴らす。


明らかに疑っている様な眼差しだった。


「じゃあその世間話の内容を言え」


「えっとですね。実は私、昔獣人さんの村で生活してまして。色々あって家出したんですが、帰ってこいと言われました」


「……」


「です!」


「……分かった。信じてやる。どうせお前は何も言わないだろうしな」


「はい!」


「元気よく返事をするな。それで? 信用しても良いんだな?」


「はい。問題ありません。獣人さんと戦いになる様な事はありませんよ」


「そうか。なら良い」


リアムさんはいつも通りぶっきらぼうにそう言うと、お酒を飲むのだった。


それが何だか嬉しくて、私はリアムさんの空いたコップにお酒を注ぐ。


「おいおいおいおい! そこの人間! 俺と勝負しろ!! 無論賭ける物はアメリア様の隣に座る権利だ!!」


「あぁ? 誰だテメェは」


「俺は虎の獣人。ティガール! この村最強の男だ!!」


「そうかい。随分と貧弱そうな村だな」


リアムさんの挑発に、ティガールさんだけでなく、様々な獣人さんが立ち上がった。


「ほぅ。言うじゃねぇか。人間」


「そうだな。ティガールの奴が最強かどうかは置いておいても、今の発言は聞き捨てならないな」


「そう思うなら掛かってくれば良い」


「後悔するなよ! 人間!! アメリア様の隣は俺が貰う!!」


そして、リアムさんは聖人の証の力を使いながら、獣人さんと力比べを始める。


円形に座る宴会の真ん中で、二人は何も武器を持たずに睨み合った。


『ROUND ONE!! FIGHT!!』


何処からか声が聞こえ、私は周囲を見渡すと、先ほどまでリアムさんが座っていた場所に土の精霊が集まっていた。


楽しそうに笑っている。


「土の精霊さん。どうしたんですか? こういう戦いとかって好きでしたっけ?」


リアムさんが拳を振るいながら、ティガールさんの攻撃をかわし、そしてティガールさんもリアムさんの攻撃を器用に避けながら笑う。


そんな二人を土の精霊さん達はぴょんぴょん飛び跳ねながら、はしゃいで見ていた。


「もう! 話を聞いてください!」


私は土の精霊さんを風の魔力を使って捕まえると、そのまま手のひらの上に乗せてムッと見つめる。


しかし、土の精霊さんは首を横に振るばかりで要領を得ない。


「好きじゃ無いけど、楽しんでいるという事ですか? そんな事ありますか?」


私は手のひらの上に乗せた土の精霊さんを見つめながら聞くと、土の精霊さんは身振り手振りで何かを私に教えようとしていた。


いや、普通に話せば良いじゃないですか。


と思わなくも無いけれど、土の精霊さんは寡黙なのだ。


しょうがない。


「えと、森の向こうに。怖い……あ、違う。角? ドラゴンさん。これも違う。あっ、オーガさん。はい。オーガさんが居て、戦っていると、それを見て、土の精霊さんも……違う。あぁ、戦う姿を格好いいと思う様になった。そうですか? 合ってるんですね」


「なーに。さっきから一人でブツブツ喋ってるの。アメリアぁー」


「キャロンさん。大丈夫ですか? 大分お酒飲まれてますけど」


「らいじょぶ。らいじょぶ。明日はまたお願いするとおもうけど」


「それは構いませんけど、無理をしては駄目ですよ」


私はキャロンさんを癒しながら、手のひらの上に居る土の精霊さんを見ると、右手を高く上げながらそれだとアピールしていた。


「これ? 癒しの力ですか? 戦って、倒れても、私が居るから大丈夫。そういう事ですかね? あぁ、合ってるんですね。ありがとうございます。土の精霊さん」


「んぁー? なにぃ、アメリアー。土の精霊と話してんの?」


「はい」


「そうなんだぁ。私は適正無いから見えないんだよね。で? なんだって?」


「それが、どうやらオーガさんの影響で最近人や魔族の戦いを見るのが好きらしく、ちょうどここに私が居たので、いざとなったら癒しの力でどうとでもなるから、戦わせてみているとの事でした」


「……中々、アレな事やってるのね。土の精霊」


「うーん。本来はもっと堅実な事が好きな性質なのです。しかし、時を追うごとに闇の精霊は力を増していますからね。それに対抗する為に精霊さん同士で繋がりを強めているのでしょう。その結果火の精霊さんと似たような性質が出てくる様になったのかもしれません」


「なるほどね」


キャロンさんは大きく頷きながら、私の体にぐったりと体を預けていた。


そんなキャロンさんを引き寄せて、崩した足の上に頭を乗せる。


ついでに、水の魔術を使って額を冷やす事も忘れない。


「……まま」


「はい。ママですよ」


涙を一筋流しながら、辛そうな顔をするキャロンさんの頬を撫でて安心して貰える様に声を掛ける。


そしてキャロンさんが眠りに入る様な小さな呼吸になった頃、宴会の中央に向けて歓声が上がるのだった。


『勝者ァァ! リアム!!』


「フン。余裕だな」


服をボロボロにしながら、誇らしげに笑うリアムさんに私はパチパチと拍手を送った。


しかし、リアムさんが解放される事はなく、次なる挑戦者がリアムさんの所へ向かうのだった。


「アメリア様。お隣失礼してもよろしいでしょうか」


「え? あ、はい。どうぞどうぞ」


リアムさんが戦っている姿を見ていた私は、不意に死角から話しかけられて、相手が誰とも分からぬまま頷いた。


そして、隣に座った猫の獣人さんは恭しく頭を下げると、私の手を取って、改めて頭を下げる。


「アメリア様」


「はい」


「実は私、一族で一番毛並みが良いと言われておりまして」


「そうなんですね。おめでとうございます」


「はい。ですので、アメリア様を満足させる事が出来ると自負しております」


「満足?」


「どうでしょう。私の体を心行くまで撫でまわして! あぁ! アメリア様ァ!」


「おい、雌猫! それくらいにするんだな!」


「何奴!! お前は……! 狐里のコン!」


「獣人で最も可愛い狐の獣人である私を差し置いて! 生意気なんだよ!」


「アンタが最も可愛いですって!? 一番可愛いのは猫に決まってるでしょ!」


「あぁ!? 一番は狐だ!」


「そこまでにしなよ。可愛い対決なんてさ! 私以外には居ないんだから」


「「お前はオコジョ!!」」


何か続々と集まってきたな。


と思いながら私は小型の獣人さん達が集まっていく姿を見る。


見つつ、宴会場の中央で戦うリアムさんと熊の獣人さんも見るのだった。


忙しい……!


「ふふ。最も可愛いと聞いて、私が来た!!」


「「失せろ! 狸!!」」


「この害獣が!」


「イチイチ媚びててキモイんだよ!」


「酷い!!」


っ! くっ!


「どうしたどうした!! 人間の実力はそんなモンか!!」


「舐めるなよ! 俺はまだ、負けちゃいねぇ!」


「それでこそだ!! 人間!」


「行くぞ……! グリム! 受けてみろ!」


「来い!! リアム!!」


忙しい……!


あっちでこっちで大盛り上がりだ!

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