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第4話『貴方が誰か困っている人を見つけた時は、その人に手を差し伸べてあげて下さい』

リアムさんと共に森の中の道を歩き続け、私たちは遂に大きな町へとたどり着いた。


「わぁ……! すっごい大きな町ですね!」


「まぁ、お前基準ならそうだろうな」


「と言いますと?」


「中央都市とか聖都はこれの数倍はデカい」


「そうなんですね! それは驚きです!」


私は城壁に囲まれた町を遠くから眺めながらその大きさに何度も頷いた。


そして、入り口と思われる場所から伸びている人の列を見て、凄い数の人だとまた驚きを重ねる。


「あぁやって、おかしな奴が居ないか確認してるんだよ」


「そうなんですか。大変ですね!」


「まぁ、そうだな」


私はリアムさんと色々な話をしながら列の一番後ろに並び、城壁を見たり、並んでいる人を見たりして笑う。


小さな村の、さらに外れた場所で三人暮らしをずっと続けてきた私には何もかもが新鮮なのだ。


「お前は楽しそうで良いな」


「はい!」


「いや……嫌味を言ったんだが、まぁいいや。どの道、まだ時間が掛かる……って、アメリア!? お前、何やってるんだ!」


「え? あの、こちらの方が苦しそうに咳をしていたので、癒しの力をと」


「お前っ! 昨日魔術の使い過ぎで倒れたばかりだろうが! 無駄遣いするな!」


「大丈夫です! 私、魔力量には自信がありますので! という訳で症状も分かりましたし。はい治しますねー。ピカー」


私はお爺さんの胸に手を当てて癒しの力を使い、お爺さんの病気を治す。


たったこれだけで苦しい思いをしていたお爺さんは苦しくなくなるし、みんな嬉しくて最高だと思うのだ。


「終わったか? 終わったな? じゃあ、大人しくしてろ」


「はい! あ、そこの方。杖をついているという事は足が悪いのですか? 見せてください!」


「言ったそばから……!」


私はリアムさんの傍から離れて、並んでいる人の中で体が悪そうな人を順番に診て、治してゆく。


そうこうしている間に、列の先頭の方に歩いていた私は、入り口の所に立っていた騎士さんに声を掛けられてしまった。


「お前! 何をやってる!」


「あ、ごめんなさい。お仕事の邪魔をしてしまいましたか?」


「いや、そういう訳じゃないが、先ほどから何をやっていたんだ」


「はい。私は癒しの力が使えますので、怪我や病気を癒しておりました」


「……? 何故?」


「え? 何故? えっと、苦しんでいたので……?」


騎士さんは首を傾げ、私もまた首を傾げてしまう。


困惑する状況の中、私はとりあえず話しかけてきた騎士さんの肌に見えた古傷に癒しの力を使った。


「うわっ、なんだ!?」


「あ、いえ。痛そうだなと思いまして」


「そ、そうか? ありがとう」


「いえ! お仕事、頑張ってください! あ、よく見たら騎士の皆さん、みんな傷だらけじゃ無いですか!」


私は話しかけてきた騎士さんから離れ、入り口の近くに居た騎士さん全員の傷を治す。


そして周囲には誰も傷がある人は居ない事を確認して、またリアムさんの所に戻るのだった。


「満足したか?」


「はい! でも町の中には」


「駄目だ!! 町の中にはちゃんとした医者が居るし、金は掛かるが、癒せる奴が居るんだ! お前がやる事じゃない。良いな!?」


「は、はい」


「この町は寄っただけだ! 足りない物をサクっと買い足して、サクっと出る。良いな?」


「はい!」


「じゃあ復唱しろ! 町の中では癒しの力は使いません! 困っている人を見かけても手伝いません!」


「はい。町の中ではなるべく癒しの力は使いません。困っている人を見かけても、なるべく手伝いません」


「余計な言葉を付けるな! 絶対に、だ! 絶対に手を出すな! 良いな!?」


「は、はぃ」


私はリアムさんの剣幕に頷き、しょうがないと諦める事にした。


確かにこれだけ大きな町なら助ける人も多いだろうし、癒しの力を使える人だっていっぱい居るだろう


うん。


それから、私たちはゆっくり順番を待ち、騎士さんには何故か皆さん揃ってお礼を言われ、何も問題なく町の中に入れたのだった。


そしてキョロキョロと周囲を見渡していた私をリアムさんが捕まえて、歩き出す。


「放っておくと、また何見つけるか分かったものじゃないからな。オラ。さっさと行くぞ!」


「はーい」


リアムさんは私の手を引いたまま、多くの人が行き交うお店屋さんの並ぶ場所に行き、そこで様々な物を買っているのだった。


お店で売っている物は美味しそうな食べ物だったり、綺麗な装飾品だったりしたが、お金を持っていない私には何も買う事は出来ない。


しかし目で楽しむ事は出来る為、私はお店を一つずつ見て楽しむのだった。


そしてリアムさんも私が楽しめる様にと、いつもよりゆっくり歩いてくれる。


「えへへ。リアムさん。楽しいですね」


「まぁ、そうだな……っ! 待て! お前!!」


「っ!? リアムさん!?」


「……いい度胸だな。お前」


「っ! 離せよ!!」


「誰が離すか。財布泥棒が、ガキとは言え、見逃さんぞ」


人込みの中で、不意にリアムさんが私の手を離し、代わりに捕まえたのはまだ小さな子供だった。


その子供はリアムさんの拘束から逃れようとしている様だったが、体格でも力でも勝てないのだろう、もがくばかりで逃げ出す事は出来ないようだ。


「リアムさん?」


「あぁ、すまんな。アメリア。財布泥棒って奴だ。ちょっと突き出してくるから適当な所で待ってろ」


「離せ! 離せよ!! 妹が病気なんだ!」


「知るか。……っ、その手はなんだ。アメリア」


「いえ。私にも、その子とお話させていただけませんか?」


「断ると言ったら」


「私、頑張ってリアムさんを説得します」


「……はぁ。分かった。話を聞くだけだぞ」


「はい!」


私はリアムさんに許可を貰い、リアムさんが捕まえている子供の所へ向かった。


私とそれほど変わらない年にも見えるが、病気の妹が居るという事は癒しの力を使えないのだろう。


「あの。先ほど聞こえた話なのですが」


「なんだよ! 嘘じゃねぇ! 妹は病気なんだ! でも、治すには大金が必要で、俺じゃどうしようもねぇんだ!」


「なら、私が癒しますね!」


「……は?」


「アメリア」


「一人だけ。一人だけですから!」


「……しょうがねぇな」


私は改めてリアムさんの許可を貰い、子供に笑いかける。


「その妹さんの所へ案内して貰えませんか?」


「……でも」


「あ、私の力がどれほどか分からないんですね、大丈夫です。今から証明しますよ」


「おい! バカ! アメリア!」


私は手袋を取って、果物屋さんからナイフを借り、手のひらを切った。


そしてそれを癒し、力を見せる。


「どうでしょうか? 病気も問題なく治せますよ」


「……聖人様」


「ん?」


「聖人様だ!!」


「聖人様が現れたぞ!!」


「チッ! 行くぞ! アメリア!」


私はあっという間に、リアムさんが捕まえた子供と一緒に抱きかかえられて空中へ飛び上がった。


そして、そのまま家の屋根を走るリアムさんに捕まったまま、人々から離れ、静かな場所へと向かう。


「んの! バカ! あんな場所で印見せたらこうなるのは分っていただろうが!!」


「ごめんなさい。ごめんなさい!」


「チッ、まぁ、良い。幸いまだ噂が広まるまで時間がある。さっさとこのガキの妹癒して、町から出るぞ」


「はい!」


「オラ、場所はどこだ。言え。ガキ。あんまり時間を取らせるならその辺に捨てていくからな」


「あ、いや、案内するよ。いえ。案内します。聖女様」


「私の事は聖女様じゃなくて、アメリア。で良いですよ」


「分かりました。聖女様」


うーん。何も分かってない!


でもしょうがないか。


あんまり親しくない相手を名前で呼ぶのって抵抗あるしね。


私はとりあえず納得して、リアムさんと一緒にその子供に付いて、より暗い場所へと移動していった。


そして、小さな、本当に小さな家とも言い難い壁と布に囲まれた家の中に入った子供に付いて中に入る。


中には苦しそうに胸を押さえている一人の女の子が居た。


私はこの子か。と納得するとすぐに近づいて、女の子の状態を診ながら酷い場所を確認する。


「そうですか。ここですね」


「……? だ、れ?」


「私はアメリア。今から貴女の苦しいのを無くしますからね」


私は癒しの力を使い、女の子の胸から悪い部分を癒した。


そして、魔術によって悪い部分が無くなった女の子はだんだんと落ち着いた顔になってゆく。


「リーシャ!」


「お、にいちゃん? りーしゃ、苦しかったのに」


「聖女様だ。聖女様が助けてくれたんだ!」


私は一仕事終わったなと額の汗を拭い、リアムさんに笑いかける。


リアムさんは相変わらず呆れた様な顔をしていたが、終わったと分かったら私の手を取って、すぐに行くぞと言うのだった。


「聖女様!」


「ガキ! デカい声を出すな!」


「ご、ごめんなさい。ただ、お礼が言いたくて、それで」


「良いんですよ。気にしないでください。あ、でも悪い事はあんまりやっちゃ駄目ですよ。妹さんが悲しみますから」


「はい! でも、俺、何かお礼をしないと」


「お礼ですか……」


私はふむと一瞬考え、そして子供の前にしゃがみ込んで、その手を取って笑う。


「では、貴方が誰か困っている人を見つけた時は、その人に手を差し伸べてあげて下さい」


「え?」


「それが私は何よりも嬉しいです」


「アメリア。そろそろ行くぞ」


「はい。分かりました」


「聖女様っ! 待っ!」


「では、妹さんと仲良く過ごしてくださいね!」


私はリアムさんに抱きかかえられたまま、子供たちの家から離れ、お店があった場所からも離れてゆく。


そして、どこからか手に入れてきた顔を隠せるフードを着る様に言われ、大きな宿屋に向かうのだった。

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