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電気自動車しかない社会になって

作者: ぶんかなっとう

 2040年、我が国は電気自動車しか公道を走行できなくなった。

 5年前からガソリンなどの内燃機エンジンの販売は禁止された。 

 ガソリン価格が高騰して、エンジン車の維持管理が難しくなった。

 ガソリンスタンドも壊滅的に消えた。

 じゃあ街に電気自動車ばかりになったかというと、予想を超えた景色になった。

 自動車は走っているが圧倒的に少ない。

 バス、タクシーは見かけるが、自家用車はほとんどいない。

 たまにいても社用車と思われる高級車ばかり。

 トラックや営業車と言われた車は無くなった。

 じゃあ物流はどうしているのか。

 ドローンになったのは想定の範囲だが、基本は人力車になった。

 なぜなら電気料金が10年前に比べて数倍になったからだ。

 つまり採算が合わない。

 電気料金が上がったことで人々の生活は激変した。

 それまで電気のおかげで発達した便利な生活を維持できなくなったのだ。

 室内灯はもちろん、家電その他の電気機器は無用の長物となった。

 生活レベルを維持するなら給与の半分以上が電気代に消えてしまう。

 そのため社会の仕組みが変わざるを得なくなった。

 簡単にいえば、陽が昇ったら行動し暗くなったら寝るという文明以前の時代に戻った。

 そうはいってもスマホだけは必要なので、勤務先で充電して情報や各種手続きをしている。

 電車の運賃も上がったので自転車通勤が主流になった。

 都合よく自動車の交通量が減ったことで安全快適に移動できるようになった。

 家電が使えないことで家事労働が増えたが、勤務時間が短くなったことで夫婦協力しあうようになり,むしろ出生数が増えたようだ。

 飲食店も同じように陽が沈んだら営業を終了したので寄り道をすることなく帰宅できるようになった。もちろん自転車なので飲酒は違法になる。

 パチンコ屋は無くなった。電気料金を払えるほど客が来なくなったからだが、国がカジノを作ったので鞍替えをした。街中には無くても外国人だけが集まる観光地にはある。国民のほとんどに縁の無い場所。

 家電が無くなったのでテレビは消えたが国営放送の受信料は法律を変えて徴収されている。

 民法はネットにすべて移行した。

 おかげで正確で信頼できるチャンネルが新しくできて国民は国営放送や既存の民放は視聴しないようになった。

 実質テレビ局に世の中を誘導させる力は無くなり、政府もマスコミを使った宣伝ができなくなった。

そうそう新聞は団塊世代がいなくなった5年前に倒産するか、業態を変えてネット専門になったが、相変わらず政府寄りなので収益は上がっていないようだ。

 逆に同じ紙媒体なのに漫画雑誌とかは伸ばしている。

 電気が無くても何度でも読み返すことができるから重宝されているようだ。

 学校も親のスケジュールに沿うので早朝登校で給食を食べてすぐに下校になっている。

 放課後は親の指示で語学学習と職種体験の塾に行っている。

 いわゆる学習塾で進学を目指すのでなく、我が国以外で活躍できる語学と会話力と稼げるスキルを早くに身に着けさせるためにだ。

 中には伝統職人に習っている子供もいるようだが、向き不向きや才能の有無を早い段階で大人が見つけてやり子供に無駄な時間と人生を送らせない、そして将来性のない我が国を脱出してもらいたいと願っている。

 電気料金が上がって物流も遅く経済が良くなっていないので給与は過去50年上昇していない。

 2010年にその時の政権が上昇させると言ったが30年経った今でも同じ水準。

 しかも為替の価値が下がり物価は当時の3倍になり、税金は高くなり控除は無くなり少子化は加速している。

 出生数が増えたといっても一部の富裕層と比較的恵まれた家庭のみで、一昨年は国全体で30万人しか生まれていない。ちなみに上昇数は数百人程度。

 電気自動車だけになったのは20年前の法律の施行によってだが、当時は再生エネルギー増設とかいって、国土の西側の過疎の沿岸に海上風力発電を数万基造ったり太陽子パネルを広げたが、いざ電気社会の到来とされた数年前に問題が同時に起きた。

 海上風力発電は故障が頻発したが修理が困難で放置され続け半減したばかりか、隣国との紛争で破壊された。

 太陽光は自然災害と経年劣化で全滅。保守改修も場所が僻地なので放置。

 火力発電はとうの昔に廃止され、原発は増設されるわけでもなく既存の発電所は停止されている。

 つまり国のエネルギー政策と経済計画が破綻した結果に過ぎない。

 当時の政権を支持した西側の地域の国民にとっては身から出た錆だろうが東側や北の国民からしたら迷惑なこと。

 だからか、我が国を半分に割って独立する機運がネット上で盛んに議論されている。

 そこには既存のマスコミの影響がなく、むしろ海外からの支援などが集まっているようだ。

 数年後には実現するかもしれない。内戦になるのか外国を介して話し合いになるのかはわからないが、それ以外に生き残るすべは残されていないだろう。

 たぶん、それぞれの独立した地域が外国の保護下に入るような属州になるのは確実だろう。

 僕の実家は北だが、両親は他界しているけど子供はどうするのか。

 孫はいないから、それぞれが判断すればいだろう。

 僕はこの電気のない生活は案外嫌いじゃないから残り少ない人生、現状このままで続いてもいいと思っている。

 毎晩きれいな星空を見られるだけで充分だからね。


 

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