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8話:ラランチアとベット

 何が起こっている!?

 たった1畳の部屋にあるのはベットのみ。そしてそこに座っているのは俺と、ラランチア。二人の間には微妙な距離があり、間に一人座れるかどうかだ。そしてさっきから二人とも無言だ・・・

 こんな状況どうしたらいいんだ!!俺とラランチアは別に恋人同士じゃないし、そ、そりゃ、一度裸で抱き合って寝ていたけど・・・あれは服がなかったラランチアが裸が恥ずかしくて潜り込んで来ただけ・・・だと思う・・・

 ちらっとラランチアを見てみると女の子座りをして、股の間に両手をついてスカートを押さえているように見える。これはもしかしてガードしているのかっ!?俺が襲ってくるんじゃないかと思って怯えてるのか!?

 怯えなくても大丈夫だよ!!そんな度胸ないよ!こんな近くで女の子と一緒に座ったのも幼稚園以来かもしれない!手を握るとこからお願いしたいよ!


 頭の中のパニックが一周して少し落ち着いてきた。改めてラランチアと初めて会った時のことを思い出す。ラランチアは七色の種から実った果実の中から産まれた。人間ではないんだろう。見た目は完全に人間の女の子だけど。ラランチアが顔の横の髪の毛を指で耳にかける。真っ赤になった小さな耳に柔らかそうな頬、長いまつ毛が少し目を隠している。ラランチアが動いたことで微かに甘い香りが漂ってきた。ラランチアの匂いだけで頭がクラクラしてくる。理性が崩壊しそうだが今夜はペオーニアさんもマスターもダウンしているので援軍がいない!頑張ってくれ俺の理性!!そ、そうだ!話をしよう!黙っていると色々考えすぎてしまう。色々聞きたいこともあるしな!


「・・・ラ、ラランチア!!」

「は、はいっ!!」


 思わず大きな声が出てしまった。声も裏返っちゃったし・・・女慣れしていないことがバレバレで恥ずかしい・・・


「あ、えっと・・・その服、かわいいね・・・」

「あ、ありがとうございます。ペオーニア様が選んでくださいました・・・」


 会話が終わってしまった・・・何か話題!話題はないのか!?


「あ、あの・・・」

「なんだい!ラランチア!」


 ラランチアから声をかけてくれた!助かったと思っている俺はチキンだ・・・


「わたしのことで聞きたいことがあるんじゃないかと思いまして・・・」


 ああああ!そうだった!さっきまで聞こうと思っていたのにテンパって頭から吹っ飛んでいた・・・


「えっと、ラランチアは人間・・・じゃないんだよね?」

「その、たぶん・・・としか・・・」


 たぶん?人間?人間じゃない?


「わたしの最初の記憶は、産まれた瞬間ご主人様・・・信夫様を見て、この人がご主人様だと思ったことです。わたしが何者なのか、人間なのかそうじゃないのかも分かりません・・・」


 ご主人様・・・ほぼ同年代の女の子にそう呼ばれるとむず痒いと言うか、心躍ると言うか、何かに目覚めてしまいそうだ。


「まあ、ラランチアが何者かなんてたいした問題じゃないよ。こ、こんなに・・・かわいいんだし・・・」

「の、信夫様・・・ありがとうございます」


 よし!ようやく服じゃなくラランチアがかわいいと言えたぞ!小さな一歩だが俺にとってはバンジージャンプするくらいの勇気が必要だったんだ!かわいいと言ったらラランチアが真っ赤になって照れたように俯いてしまった。なんだこのかわいい生物は!?この微妙な距離がもどかしい!!なんでもっと近くに座らなかったんだ俺!!


「そう言えば、服を買うお金はどうしたんだ?ペオーニアさんに借りたの?」


 話題を見つけた!これでもう少しラランチアと話ができるぞ!


「あ、いえ、ペオーニア様がマスター様にお願いしてくださいまして、日払いでお給料をいただきました」

「ああ、そうなんだ。日払いのお金でそんなにいい服が買えたんだね」


 古着みたいだけどペオーニアさんが着ている服より良さそうに見える。村で見かける女性はワンピース姿が基本で、上下が別れているツーピース?ってタイプはほとんど見かけない。ブラウスにはフリルがついているし、スカートも二重になっていて、黒いプリーツスカートの外に透けている少し長めのスカートがついている。


「マスター様が準備金だとおっしゃいまして、銀貨を1枚おまけで頂きました」


 準備金!?俺にはそんなのなかったんですけど、月給につけてくれますかね!?ラランチアがかわいいからオマケしやがったなあのスケベオヤジが!グッジョブッ!!


「とてもかわいいお洋服がたくさんありまして、今度信夫様も一緒に行きませんか?」


 ラランチアが両手を合わせてもじもじしながら誘ってくる。女の子の服を売っている店!あ、ああああ、あれか!?パステルカラーの下着がいっぱい並んでいるような!?・・・


「信夫様に似合いそうなお洋服もたくさんありましたよ」


 男女兼用・・・しま〇らみたいな所か・・・そういえばこのやたらと細長い村でここ以外の店に入ったことがほとんどないな。明日はラランチアと一緒に色々出歩いてみようか?


「信夫様」

「ラランチア」

「「あ・・・」」


 同時にお互いを振り向いて声をかけた。向きを変える時横に手をついたのだが、ラランチアも同じようにしたためラランチアの手を俺の手が押さえつける形になった。手の平から柔らかいラランチアの手のぬくもりと感触が伝わってくる。そして目の前に俺を見つめるラランチアがいる。少し潤んだようなその大きな目、かわいい桜色の唇、手のひらほどの距離にあるラランチアの顔から目が離せない。心臓がバクバクと破裂しそうだ!


「あ・・・信夫様・・・」


 ラランチアの吐息が漏れ、俺の名前を呟く。その瞬間俺の理性は崩壊し、ラランチアの手を握り顔を近づけた。


「ラランチア!」

「あ!」


 身体を前のめりにした時、俺の足が壁に当たった。


 メキメキメキ・・・ズズーン・・・


「きゃ!」

「あれ?・・・」


 俺にDIYは無理だったようだ・・・軽く当たっただけだったのに、仕切りの壁はあっけなく崩れ落ちてしまった。崩れた壁の向こうにラランチア用のベットが見える。ということは・・・

 チラッとラランチアを見ると、


「そ、それではわたしはあちらに・・・」


 ラランチアはそう言って俺のベットから降りてそそくさと自らのベットに潜り込んだ。


「お・・・おやすみなさい信夫様!」


 とても今から眠るとは思えない元気な声でシーツを頭からかぶる。


「お、おやすみ、ラランチア・・・」


 はぁ・・・何をやってるんだ俺は!!理性が崩壊して襲い掛かるなんて!!ランプを消すと俺もシーツに潜り込んだ。

 でも、ラランチアの手を握ることは出来た。暖かくて柔らかい女の子の手だった。

 今日はこれだけで満足することにしよう!ご主人様と言ってもラランチアは奴隷というわけじゃないんだし・・・少しづつ仲良くなれれば・・・


 興奮はしていたけど仕事の疲れが今頃やってきていつの間にか眠りについた。


 シーツから微かに漂うラランチアの香りが、俺を夢の世界にいざなう。

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