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39話:ラランチアの寿命

 お姉さまとデート!お姉さまとデート!

 あああ、なんて幸せなのかしら!二人っきりでお買い物デートだなんて!


「リメッタ、随分うれしそうですね。そんなに新しい服がうれしいんですか?」


 お姉さまの腕を抱え込んで密着しながら歩いていると、そんな的外れなことを言われました。ご主人さまであるお姉さまと一緒にいることがうれしいのであって、服がほしいわけではないのですけど?

 は!?もしかしてお姉さまはあたしに着て欲しい服でもあるのでしょうか?お姉さまのご希望ならどんな服でも着ちゃいますよ!ウサギ獣人の恰好だって!猫獣人の恰好だって!


「お姉さまはあたしに着て欲しい服とかあるんですか!?」

「え?ああ、そうですね~。リメッタは小柄でかわいらしいですし、フリルのついた服とか似合うかもしれませんね」


 フリルのついた・・・服ですか?

 お姉さまは意外に少女趣味なのでしょうか?もっと胸元の開いた服とかがお好みかと思いましたが、そういうのがいいんですね!心のメモ帳に記録しておきます!まあ、胸元の開いた服をご希望されても膨らみなんて皆無ですけど・・・。


 あたしの種を植えて育てたのは信夫だそうです。どうやら栄養が足りなかったらしくこんな貧弱な身体で生まれてきたとか・・・。あのゴミ虫のせいですかっ!いつかお姉さまのいないところでギッタンギッタンにしてやります!いえ、やっぱりいいです。二人っきりなんてなりたくないですし。

 それより今はお姉さまとのデートを楽しむことにしましょう!





 俺はなんでこんな所にいるんだろう・・・。見事な調度品の置かれた部屋のソファーに座って窓の外を見つめる。


「おまたせしたね。タナカノブオ君だったか」


 突然部屋の扉が開き煌びやかな服を着た壮年の男が入室してきた。どこからどう見ても貴族だろコレ!?俺は急いで立ち上がって腰を90度に曲げて頭を下げる。


「は、初めまして!タナカノブオです!」


 ダマスさんの小屋を出てしばらく歩いた所で3人の男に囲まれた。全員武器を所持していて勝ち目がないので降参したが、ただ話が聞きたいだけだと言われた。

 彼らはとある方に仕える騎士でダマスさんはその息子だとか?ダマスさん貴族だったのか・・・。確かに見た目は鍛冶師って言うよりどこかのボンボンって感じだけど、なんであんな所で鍛冶師なんてやってるんだ!?


「ああ、そんなに畏まらないでも良い。どうぞ座ってくれたまえ。わたしはダマスの父でディオス・カス・テーラと言う。一応この町の領主だ」

「はい!よろしくお願いします!」


 日本と言う国でただ普通に育った15歳の俺には、貴族という立場の人とどう接すればいいかわからない。校長先生に接する感じでは・・・足りないか・・・。


「旦那様、こちらでございます」

「これが?」


 ダマスさんの打った刀に驚いた騎士さんは、「是非、見せたい方がいるので一緒に来てくれないか?」と、川を渡った町まで俺を案内してきた。川を渡ったこちらは完全に町だった。俺の暮らす村と違い石造りの建物が多くあり、道も整備されている。おそらく川向こうはこちらの町が発展しきったため、溢れて出来た村なんだろう。


「なんと!これが剣・・・か?」


 鞘から刀を抜いたディオスさん・・・様は、その刀身を見つめて感嘆の声をもらした。鋳物の剣しかないような世界では、鍛造の刀は美術品に見えるかもしれない。

 ディオス様は刀を鞘に戻すとテーブルに置き、眼をつむって天井を見上げた。


「うぅむ・・・これをあやつが作ったというのか・・・」


 えっと、俺はどうすればいいんだろう。そもそも刀が目的だったんだろうし、俺は来なくてもよかったんじゃないのか?


「あの・・・」

「ああ、すまないタナカノブオ君。この剣なんだが・・・わたしに譲ってくれないか?・・・国王に献上したい」





 リメッタと買い物を終えてお屋敷に戻りました。ゴブリンさんの輸入服専門店はまだ閉まったままです。あそこが一番かわいい服を数多く扱っているのですが、他の店では残念ながらあまりいい服は手に入りませんでした。


「おかえりなさいませ奥様、お嬢様」

「ただいま戻りましたアメリーさん。申し訳ありませんが今日は酒場のお仕事があるので、夕食を早めにお願いできますか?」

「あたしお腹ぺっこぺこです~」


 リメッタもペオーニアさんの酒場で働くと言うので、夕食を食べたら一緒に連れていくことにします。


「かしこまりました。すぐにご用意いたしますので手を洗ったら食堂へお越しください」

「ありがとうございます」


 食堂に行き席に座ると、食事の準備が出来るまで酒場のお仕事についてリメッタに説明をします。


「・・・以上ですけど、何か質問はありますか?」

「お姉さまはどんな女の子がお好みですか?」


 テーブルに両肘をついて、両手で顔を支えて楽しそうに質問してきました。

 リメッタは産まれて最初に見たのがわたしです。刷り込みによってわたしを「ご主人様」だと思っています。わたしが信夫様のことを好きなように、リメッタもわたしのことを好きみたいです。・・・困ったものです。


「リメッタ。何度も言うようですがわたしが好きなのは信夫様です。女の子を特に好きとは思えないのです」

「そんな・・・お姉さま・・・」


 リメッタはすごくかわいいのですが、かわいいと思う事と好きは違うのです。泣き真似をしているリメッタにまじめな声で話しかけます。


「わたしたちの寿()()が短いことはリメッタも分かっていますね?」

「・・・ええ。それは本能でわかります。本来あたしたちは()()()()()()()()()()()()()()()()()ですもの」


 わたしたちは植物です。それだけは何となく分かります。わたしが信夫様のことを好きなのは本能のせいでもあるのかもしれません。種子を残せるチャンスは4回だけ。それを無駄にしないように。


 寿命が尽きる前に一つでも多くの種子を残せるように・・・と。

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