34話:ご主人さま
「ただいま~」
ダマスさんの鍛冶場で製作したスライサーの試作品を10点ほど持ち帰った。刃の幅や長さ、厚みの違うスライサーのうち使いやすいものを選ぶためだ。スライサーの入ったリュックを玄関前ロビーに降ろすとエプロンで手を拭きながらモエちゃんが出迎えに来てくれた。
「おかえりなさいませ信夫様。奥様はもうお仕事に行かれましたよ?」
「ただいまモエちゃん。そっか、試作品を作るのに手間取っちゃってね」
先日からゴンザエモンちゃんのことをモエちゃんと呼ぶようにした。見た目が中学生くらいのかわいい女の子を、本名とは言えゴンザエモンちゃんと呼ぶのに抵抗があったからだ。最初は狐人族の伝統とかしきたりとかでそう名乗っているのかと思ったけど・・・本当にそうだった。どう呼ぼうかと困っていると深夜に部屋を訪れたロリさんが、ゴンザエモンと言う本名は変えられないが愛称をつけるのは問題ないと教えてくれた。ゴンザエモンだから縮めて「エモ」、ロリさんとコンビならひっくり返して「モエ」がいいかと思いそう呼んだらとても喜んでくれた。ロリモエコンビの誕生である。・・・一応言っておくが俺にロリ萌え属性はない。
「これをアメリーさんに渡してもらえるかな?野菜を薄く切れる道具なんだけど、どれが使いやすいか教えて欲しいんだ」
「かしこまりました。お預かりいたしますね」
モエちゃんが弾むようなステップで厨房に走っていく。楽しく仕事をしてくれてるようで何よりだ。
自室に戻りスライサー、ピーラーに次ぐ商品の開発を考えようとノートを開く。紙は貴重品で10枚ほどの荒い紙を紐で束ねたノートが銀貨1枚もする。日本円なら1万円だ!いずれ紙も生産したいけど作り方が大雑把にしかわからない。なんかの木の皮を煮詰めてほぐして・・・紙漉きというのか?テレビでやっているのを見たことはあるがよく覚えていない。知識を吸収するために見ていたわけではなく、暇つぶしにながら見をしていたので覚えてないのだ。
こちらの世界に来て3週間が過ぎた。あっという間の3週間だったけど今一番思うことは、もっと勉強をしておけばよかった、ということだ。学校の勉強がまったく無駄だとは思わないけど、それよりは生活するための知識がほしかった。
火をつけるためにはライターを使えばいい。そんなものはこの世界にはない。
水を飲むためには蛇口を捻ればいい。そんなものはこの世界にはない。
一人暮らしを始めてから100円ショップで衝動買いをしたことがある。なんとなく買ったプラ容器をそのまま使うこともなくゴミで捨てたことがある。
なんてもったいないことをしたんだ!こちらで同じものを作ろうと思ったら木の板を組み合わせて作るしかないが、まず綺麗な板を手に入れるのが難しい。もし手に入ったとしてもどうやってくっつけるか。接着剤なんてないのだ。プラ容器なら落としたとしても簡単には壊れないが、木の容器ではバラバラになってしまう。
火の起こし方、安全な水の入手方法、紙の作り方、接着剤の作り方。どれも元の世界では簡単に手に入るので考えたこともなかった。もっと勉強をしていれば・・・。
「はぁ、今更後悔しても仕方ないか。俺の僅かな知識でも作れるものはある。今はそれを作るしかない」
夕食後、大きくなったラランチアの妹の実の様子を見てからスライサー、ピーラーに続く商品のことを考えた。鉄や鋼はなんとかなったがプラスチック製品は不可能だ。木で再現可能な物ならなんとかなるが小さな部品が必要なものは困難。それでもいくつかアイディアをひねり出していると扉をノックする音が聞こえた。
「ん?誰だろ?どうぞ」
声を掛けると扉がゆっくりと開き、枕を胸元に抱いたラランチアが入って来た。もう酒場の仕事が終わる時間になっていたのか!?時計がないので時間感覚がなくなっていた。
「はぁ、はぁ・・・の、信夫様・・・もう我慢できません」
そうだった!今夜は発情期の7日目だ!ラランチアの頭にはオレンジ色の大きな花が咲いている。前回の反省から今回は数日前から距離をとってラランチアの媚薬効果を無効化していた。新商品の開発にも夢中になり妹の実の成長不良も気にしていたためすっかり頭から抜け落ちていた。
「信夫様!」
枕を放り出したラランチアが薄着のまま俺に抱きついてきた。今はそんな気分じゃなかったけど、ラランチアの頭の花から漂う香りをかぐと意識が朦朧としてきた。俺の両手が自然とラランチアを抱きしめそのかわいらしい唇に自然と吸い込まれる。
魔使「おいっ!なんで目隠しするんだ!?ほどけ!」
天使「あなたがいやらしい目でラランチアちゃんを見るからです!大人しくしてなさい!わたしだって手で顔を隠して見てないのです!ええ!見てませんとも!はぁはぁ、まあ!ラランチアちゃん、なんてはしたない!」
魔使「見てるじゃないか!ほどけええええっ!」
「ラランチア!ラランチア!」
「信夫様!信夫様ぁっ!」
耳元で聞こえるラランチアの荒い息遣いが俺の理性を崩壊させる。もう何が何だかわからない。ただひたすらにラランチアの身体を求めた。ラランチアもそれに答えてくれる。これが女の子なのか!・・・。
「うぅん・・・」
なんだか頭がぼーっとしています。わたしは何をしていたんでしょう?・・・。いつの間にかベットで眠っていました。なんだかとても疲れていて身体がすごく重いです。起き上がって自らの身体を見て驚きました。
「は、裸っ!?わたしは一体・・・信夫様!?」
そうです!昨夜は発情期でした!酒場の仕事が終わってお屋敷に帰って、湯あみをした後枕を持って信夫様の部屋に来て・・・。すべて思い出しました。あああああ・・・わたしったらなんて恥ずかしい真似を・・・。
枕を抱きしめそこに顔を埋めます。ちらっと横を見ると大の字で熟睡している信夫様の姿が見えます。全裸で寝ている信夫様を直視することが出来ません。横を見ながらシーツを信夫様にかけて静かにベットを降りました。部屋のあちこちに散らばっていた下着や寝巻をすばやく集めて部屋を見回します。信夫様は熟睡していますからここで着ても大丈夫だとは思いますが、もし起きたら・・・。ふと窓辺を見ると大きくなった水色の実が見えました。この陰なら万が一信夫様が起きても見られることはありません。急いで実の後ろに隠れて下着を付けようとすると目の前の実がボコンっと膨らみました。
「ひゃあ!」
びっくりして尻もちをつくと実のあちこちが膨らんだりへこんだりを繰り返します。これってもしかして?
ベリッ
「あ!」
実の一部が裂けてそこから真っ白で小さな手が現れました。実を左右に引き裂きながら水色の髪が姿を現します。尻もちをついているわたしに覆いかぶさるようにゆっくりと手が前に進んできて、濡れた長い水色の髪がわたしの肌に触れました。ついに全身が実から出てきましたがわたしより一回り以上小さいでしょうか?両目を閉じたままの顔も小さく12歳くらいに見えます。この子がわたしの妹?・・・。そう思っているとパチリと目が開きました。髪と同じ綺麗な水色の瞳です。
「あ、あの・・・」
なんと言えばいいのでしょうか?おはようございます?はじめまして?お誕生日おめでとう?言葉に詰まっていると水色の女の子が小さく唇を開き。
「ご主人さまぁっ!」
「ええええええええっ!?」
そう言ってわたしに抱きついてきました。二人とも全裸なのですから自重してください!




