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27話:魔王様とペオーニアちゃん

「ここが人間の国か。ド田舎だな」


 わたしは魔王ボッチリーノ。魔族の国の王だ。国民は二人しかいないけど・・・。もう一人の国民であるわたしの娘のフィオリトゥーラには同年代の友達がいない。娘は強がって「友達なんていらない」と言っているが、時々わたしの美少女フィギュアコレクションを見て羨ましそうにしているのを知っている。きっと女の子の友達がほしいのだろう。わたしはそんな不憫な娘の為に友達を作ってあげようと「女の子の種」を作った。

 まだ試作段階なので()()()()も出るだろうが、その種を植えると女の子が産まれるのだ。DNA素材にフィオリトゥーラの髪の毛を混ぜているので、産まれた子はフィオリトゥーラに似るかもしれない。赤ちゃんで産まれても困るので成長促進に「ハチク」という成長の早い植物の情報も混ぜてみたがどうなるか?うまくいけば15歳ほどになるはずだ。

 その他にも特殊な能力を得られないかと思って以前実験で作った人工魔物の素材も混ぜてみた。癒しの能力を持つオランジドライアド、水を生み出せるダイムトレント、発火能力を持つポリモラフレイムなど。

 そのうち呪いの能力を持つ一匹が脱走してしまったのは御愛嬌だ。必死に・・・ちょっと探してみたけど見つからなかったので仕方ない。あれに刺されると怪我が治らなくなりやがて衰弱死するのだが、わたしなら解呪できるから問題ないだろう。たぶん。

 そうして完成した種の実験をしようと思ったのだが、その実験前に事故で紛失してしまった。城壁前の川に落ちて流されたので下流のゴブリンの国を探してみたが見つからなかった。すでに拾われたのかまだ先まで流されたのか。この先は人間の国だ。理知的なゴブリンならともかく野蛮なニンゲンに拾われていたら大変な事になる。植物の栄養などの知識のない人間では、カラッカラの土に植えてきっと貧相な娘が産まれることになるだろう・・・。わたしは急いで人間の国を探すことにした。


「川はこの先の村に向かっているな。行ってみるしかないか。幻術で人間の姿になれば見破れるやつなどいまい」


 日が暮れ始めた頃村に到着した。しかしなんて貧相な国だ。家屋は木造どころか丸太小屋ばかり。人間の服装も麻の服ばかりで未開の住民そのものだ。


「さて、情報を集めるならまずは酒場か。どこかに酒場はあるかな?」


 しばらく村を散策するとかなり繁盛している店を見つけた。酒場「ペオーニア」か。村の規模の割に客が多すぎる気もするが情報を集めるにはちょうど良いか。


「いらっしゃいませ!!お一人様ですか?カウンター席へどうぞ!」


 店に入ると三つ編みのおさげの女が元気な声で話しかけてきた。娘のフィオリトゥーラと同年代だが、さすがに下等な人間では娘の友達にはなれんな。腕を怪我しているのか包帯を巻いている。


「ご注文はお決まりですか?」

「ふむ」


 下賤な人間の作る料理など食べる気にはならんが、ゴブリンの国も近いし輸入品などあるかもしれんな。


「出来るだけ上等な酒と料理はあるかね?」

「上等な・・・お酒とお料理ですかぁ。うちで一番高いのは「ラランチアちゃんの手絞りフルーツジュース」ですけど、今日はだせないんですよね~」


 一番高いものがラランチアちゃん?の手絞りフルーツジュースだと!?ただのフルーツジュースがか!?ゴブリン国のドソペリとかではなくっ!?


「ちなみにそれはいくらするのかね?」

「えっと、銀貨10枚です」

「銀貨10枚っ!?」


 なんだそのぼったくりは!!ドソペリでもコップ一杯で銀貨10枚もしないぞっ!!ラランチアちゃんという者はフルーツのソムリエだとでも言うのか!?・・・ちょっと飲んでみたい気もするが今月の小遣いは0だ・・・。仕方ない。


「それではおすすめの肉料理とワインがあればそれをいただけるか」

「は~い!少々お待ちくださいね」


 さて、どうやって七色の種の情報を集めるか。慎重に事を勧めなければならない。まずは先ほどの娘に恩を売って情報を聞き込んでみるか。しばらく待つと怪我をした娘が料理を持ってやってきた。


「お待たせしました!イノシシの香草焼きとブドウ酒です!」

「ありがとう。ところでお嬢さんその腕はどうしたのかな?わたしは旅の医者でね、診てあげよう」

「本当ですか!ちょっとドジしちゃっただけで大したことじゃないんですけど、腕を柱にぶつけちゃって痛めたんですけど中々治らなくて・・・」


 んん?取った包帯の下から見えたのはただの打撲だったが、その腕に呪いの文様が浮き出ていた。あれ?これって脱走した呪いのモズキートンの・・・。


「お嬢さん・・・最近コレくらいの虫に刺されなかったかね?」


 親指と人差し指を10cmくらいに広げて問いかけると「ああ~」と間の抜けた声を出し。


「えっと、柱におっきな虫がいてびっくりして振り払おうとしたら潰しちゃって」


 潰しちゃってって・・・ま、まあこれで憂いが一つなくなったという事だ。それならお礼も兼ねて治してやるとするかね。


解呪(リベラッツィ)魔法(オネ・マギカ)


 彼女の腕に手をかざし()()を発動させると呪いの文様が消え去った。怪我を治すものではないがこれで自然治癒することだろう。


「お、お客さん・・・もしかして人間じゃないんですか?・・・」


 あれ?彼女がなぜか少し怯えたように後ずさった。あ!そうだ。ニンゲンは魔法が使えないんだった・・・。どうする!どうすればいい!


「な~んて、そんなはずないですよね~。怪我も治ってないし」

「あ、ははは。いや、すまない。最近中二病を発症してね。魔法が使えたらな~って時々やらかしてしまうんだ」

「面白いお客さんですね。チュウニ病なんて初めて聞きました。さすがはお医者様ですね」

「あっはっはっは。あ、コレお薬です。打ち身に効くので飲めば2、3日で治ると思いますよ」


 そう言ってゴブリンの国で手に入れたビタミン剤を手渡した。


「ありがとうございます!それではごゆっくり」


 危なかった。わたしのフィギュアコレクションを初めて見たフィオリトゥーラに言われた病名が役に立った・・・。なぜだろう。目から汗が流れた。

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