26話:いつものラランチア
「えっと、どういうことなのかな?」
「ごめんなさい!説明いたしますのでその・・・服をいただけませんか?・・・」
毛布で身体を隠したラランチアは全裸だ!服!?服!?とりあえずクローゼットの中を漁りゴブリンさんの所でもらった服をラランチアに渡す。
「これ、でいいかな?」
「大丈夫です。ありがとうございます」
ふと視線を下に向けるとシーツに赤いシミが出来ていた。これはまさか!?俺の視線に気づいたラランチアが慌ててシミを毛布で隠す。
「申し訳ありません信夫様・・・後ろを、向いてていただけますか?・・・」
「ああ、すまない!」
部屋から出て行ってほしかったのだろうけど俺はその場で後ろを向く。少しためらうような間があったが、やがて毛布をずらす音が聞こえラランチアが服を着始めた。
「あの、もういいですよ」
無意識に渡したのはカッターシャツだった。ボタンを留めてはいるけど上から3つ目のボタンが止まらなかったらしく手で押さえて隠している。ボタンが止まらないだと!?俺はアーチェリーをやっていたから胸筋は同年代の平均より大きい。確か86cmあったはずだけど、そのシャツのボタンが止まらないラランチアは一体何cm・・・
ゴクリ・・・
俺の目の前にはカッターシャツのみで女の子座りをしているラランチアがいる。はち切れそうなシャツの裾からは白く眩しい太ももが斜め前に伸びていて、その太ももの根元はシャツの影の中に消えている。
ドクンドクンドクン!!
「ラ、ラランチアアアアアアアッ!!」
昨日の夜のことを思い出して俺の理性が吹っ飛んだ!これまでにも何度かキスはしたけど昨日のようなむさぼるようなキスは初めてだった。しかもそれがラランチアから求められてとなると、もう我慢する必要はないってことだ!ゴンザエモンちゃんが朝食に呼びに来たことも忘れて、ラランチアに抱きつこうと両手を広げて突撃した!
「ちょ!ちょっと待ってください信夫様!!」
ラランチアが押しとどめようと手の平を突き出して俺の顔を押さえるが、俺の勢いが止まらず滑った指が目に突き刺さった。
「ぎゃあああああ!!目があああああっ!目があああああっ!」
「信夫様!?ご、ごめんなさい!!」
ベットから転がり落ちた俺はそのままゴロゴロと転がりタンスに激突し、上から落ちてきた花瓶の直撃を受けた。さらにその衝撃で隣のポールランプが倒れて俺の後頭部にヒットしガラスが砕け散った。コントかよ!
「大変!信夫様血が出てます!」
「え?ああ・・・」
ガラスの破片で頬を少し切ってしまったようだ。まあたいした怪我じゃないし軟膏でも塗って置けば・・・
ペロッ
「!!!!!!!!!!!!!ラ、ラランチア!!?」
昨日からラランチアに避けられてたのに!ニードロップを受けて眼が腫れあがっても舐めてくれなかったのに!こんな小さな傷を舐めて治してくれるなんて一体ラランチアに何が起こってるんだっ!?
「えっと、えへへ。傷、綺麗に治りましたね」
「え、ああ、ありがとう・・・あの~・・・」
昨日からラランチアに何が起こっているのか説明をしてもらいたかったのだが、みんなが朝食を待っているのを思い出した。
「聞きたいことは色々あるんだけど、まずは朝食にしようか?新しく雇った子たちも紹介したいし」
「そうですね。わたしも何から話せばいいのか分からないので後ほど説明させてください」
ラランチアが手を差し出して来たのでその手を掴んで起き上がる。
「それじゃ、食堂に行こうか?」
「あの・・・この恰好じゃ・・・お部屋で着替えさせてください」
「そうだね・・・」
ラランチアはカッターシャツの裾を引っ張りながら俺の部屋を後にした。俺は先に食堂で待ってようと思い扉に向かって歩き出すと、ベットの上に落ちている物に気づいた。そこには水色の花びらが数枚落ちていた。
「お待たせしました信夫様」
先に食堂で待っていると程なくして着替えたラランチアが食堂に入って来た。首元や手首などにフリルのついた白いワンピースだ。胸元に水色の小さなリボンがついている。無駄に長いテーブルの端に俺が座り、その斜め前にラランチアが進む。
「こちらへどうぞ、奥様」
「え、ええ・・・ありがとう」
ラランチアは「奥様」と言われて、少しぎこちない素振りだが否定はしない。アメリーさんが椅子を引いてくれてラランチアが腰をかけると俺の視線に気づいてこちらを向くが慌てて視線を逸らした。赤くなって俯くラランチアがかわいすぎる!こんなにかわいいラランチアと昨夜は・・・なんで記憶がないんだっ!!ラランチアは一体どこまでやっちゃったんだ!?
「旦那様」
「あ」
俺が妄想に耽っているとアメリーさんがそっと声をかけてくれた。いかんいかん、そのことは後でラランチアを尋問するとしよう。今は新しい家政婦さんの紹介をしないと。
「ラ、ラランチア。ラランチアがいないときに雇ってしまって申し訳ないが二人を紹介させてくれ」
「いえ、信夫様がいいと思われたならもちろん構いません」
俺が目で合図すると入口付近に立っていた二人がテーブルを挟んだラランチアの対面に移動した。
「こちらが狐人族のゴンザエモンちゃんで、隣がレッサーヴァンパイアの・・・ロリさんだ」
ゴンザエモンちゃんは男だけど見た目は女子中学生くらいに見える。身長だけでなく外見も。面接した時はなんちゃって巫女服のような恰好だったけど、今はメイド服に袖を通している。ただし腰に大きな鈴をつけているけど。狐人族にとって大事な物なのかな?
ロリさんは名前が長くて覚えきれないので、本人からの希望通りロリさんと呼ぶことにする。ロリさんもメイド服を着ているけど長く黒い手袋をつけ、頭から黒いヴェールのような物を被っている。直射日光を浴びると灰になるそうだから仕方ない。しかし灰になっても夜になると復活するそうだから正に不死族か。いや、でも25歳で死んじゃってるらしいからアンデットなんじゃ?・・・。
「「よろしくお願いいたします。奥様」」
「こちらこそよろしくお願いしますわね。ラランチアと申します」
緊張した面持ちのゴンザエモンちゃんとのほほんとしたロリさんがテーブル越しに頭を下げる。ラランチアも椅子に腰かけたままだが同じく頭を下げた。ラランチアはゴンザエモンちゃんの名前にもレッサーヴァンパイアにも特に驚いた様子はない。この世界の一般常識は備えているという話だったけど、アメリーさんは不死族は珍しいと言っていた。それに男の娘なんて普通にいるのか?俺のいた世界ですら男の娘を生で見たことなんてないぞ!今も楽しそうに談笑しているけどラランチアはいたって普通に接している。いったいどこの世界の一般常識なんだ?
兎にも角にも無事に新人二人とラランチアの顔合わせも終わった。執事組合の時のように一発失格にはならなくてほっとしたよ。
魔使「ラランチアちゃんの魂が分裂してるな」
天使「ふ~ん、こんな風になるんですね。ラランチアちゃんの妹なのかな?娘なのかな?」
魔使「産まれてからのお楽しみだな」




