25話:ラランチアと初めての夜
さて困った。二人を雇うべきか否か。まあ人間じゃないことはこの際置いておこう。それを言ったらラランチアだって人間じゃないしな。アメリーさんは「鍛えがいがありそうですね~」って言ってるし、雇ってもいいかな?ラランチアに相談した方がいいのか・・・いや!体調の悪いラランチアに負担をかけてはならない!ここは俺が決めるんだ!料理はアメリーさんにまかせて、掃除はゴン・・・ザエモンちゃんに、洗濯と夜間警備はロリさんか。うん、意外といいんじゃないかな?
「わかりました。二人にはうちで働いてもらいましょう。よろしくお願いしますね」
「ありがとうございます!」
「よろしくお願いしますわね」
こうして晴れて3人の家政婦さんが決定したのである。不安だらけだけど・・・
コンコン
「ラランチア?入ってもいいかな?」
「の、信夫様!?今は・・・ちょっと・・・」
軽くショックだった・・・。ラランチアなら具合が悪くても俺が来れば入れてくれると思っていた。いやいや、女の子なんだし寝巻姿を見られたくないのかもしれないし、風邪とかだったら俺にうつしてはいけないと思っているのかも・・・。
「今は・・・会いたくないので・・・」
「・・・」
ショックッ!!会いたくない・・・会いたくないだなんて・・・。今日が約束の7日目なのに、何か嫌われることでもしたんだろうか?・・・。俺は扉に背中を預けてズルズルと地面に座り込んだ。
「あ、や!ち、違うんです!!決して信夫様を嫌いになったとかそういう事じゃなくて!!」
扉まで走って来る音が聞こえ、扉の向こう側でラランチアが必死に弁明をしている。
「いや、いいんだ。ただ、家政婦さんの面接で2人を雇ったことを伝えておこうと思ってね」
「そ、そうですか。すみません。信夫様にご負担をおかけしてしまって・・・」
「具合が悪いのに悪かったね。心配だったからちょっと声をかけただけなんだ。ゆっくり休んでくれ」
俺は重い腰を持ち上げ立ち上がろうとすると、ラランチアが突然扉を開けた。
「信夫様!わたしはっ!・・・」
「うわっ!」
扉に背中を預けていたため扉が開いたことによって俺は部屋の中に後ろ向きに倒れ込んだ。
ゴンッ!
「いってぇ・・・んんっ!?」
「あっ!」
床で後頭部を打ち付けたが頭をさすりながら上を見上げると、布のカーテンに囲まれた薄暗い世界が見えた。肌色の柱が2本天井に向かって伸びており、その柱が交わるところにオレンジ色の茂みが見える。これは一体?・・・。
「きゃあああああああっ!」
「へぶしっ!!」
突然ラランチアの膝が俺の顔面に落ちてきて両膝で目つぶしを喰らった。
「目がああああっ!目がああああっ!」
ラランチアの膝!?一体どこから膝が飛んで来たんだ!?俺は訳が分からず目を押さえて転がりまわった。さすがに潰れてはいないみたいだが、全体重が乗ったニードロップを受けてまぶたがが腫れあがったのは分かった。ボクシングで顔面を殴られてお岩さん状態になった感じだ。
「す、すみませんすみません信夫様!大丈夫ですか!?」
「だ・・・だいじょうぶ・・・だ」
ラランチアに平気アピールをしようと笑顔で振り返ったが、目が開かずにラランチアの姿が見えない。
「きゃあっ!た、大変です!信夫様の目が腫れあがってしまってます!」
やっぱりそうだよな。でもラランチアには怪我を治す能力がある。ラランチアが舐めると舐めたとこの怪我が癒えるのだ。ひゃっほうっ!ラランチアに舐めてもらえるのだ!これぞ怪我の功名!!さあラランチア!俺のまぶたを舐めておくれっ!!
「な、軟膏を塗っておきますね・・・これで治るといいのですが」
なんでだよ!!俺のまぶたに冷たい軟膏が塗られていく。これより暖かいラランチアの舌の方がよっぽど効くというのに・・・。やっぱりラランチアの態度がおかしい・・・。その後ラランチアがアメリーさんを呼んで俺を部屋まで連れて行くように頼んだ。いつものラランチアなら一緒に俺の部屋まで来るか、そのままラランチアの部屋で介抱してくれるはずなのに・・・。結局日が暮れるまで腫れが引かず、俺は半日ベットで過ごすことになった。夜になってアメリーさんが夕食の知らせに来てくれたが、食欲が湧かず「3人で食べてくれ」とだけ告げてそのままベットで横になった。今日雇ったばかりの二人には夕食の時間に色々話を聞いた方がいいと思ったけど、ラランチアの事が気になってそんな気も起きず無理やり毛布に包まる。深夜にはラランチアが産まれて丸7日になるけど、あの様子じゃ部屋にも入れてくれそうにないしな・・・。
「明日になったらいつものラランチアに戻ってくれるかな?」
魔使「実はな、信夫・・・ラランチアちゃんは・・・むぐっ!」
天使「なんでもありませんよ。安心してお休みなさい。明日にはいつものラランチアちゃんに戻ってるわよ、きっと」
魔使が何か言おうとしていたけど天使が無理やり口を封じている。何か俺に話してはいけない天界ルールにでも触れたのかな?下手に聞いて神様の逆鱗に触れたりしたら大変なので、あえて突っ込まないでおく。そうだな。明日になればきっといつもの日常に戻ってるはずだ!
「おやすみ!」
そうして眠りについたまま7日目の深夜がやってきたのだった。
ギィッ
俺は夢の中で寝ていた。夢の中で寝てるってなんなんだ?でも夢なのは分かる。この後の展開がありえないからだ。部屋の扉がゆっくりと開いていくと目がトロンとしたラランチアが入って来た。深夜にノックもなしでラランチアが入ってくるわけがない!乱れた寝巻姿で俺の部屋に来ることもありえないし、あまつさえ俺の毛布に潜り込んでくるなんてもっとありえないっ!!
「はぁはぁ、信夫さまぁ・・・」
ラランチアが甘えた声を出すなんて聞いたこともないけどなぜか俺は想像ができたようだ。甘くかわいらしい声で俺を誘惑してくる。そのラランチアの耳の上には大きな水色の花が咲いている。蕾の先から見えていた水色の花だ。なんだか朝顔に似ているかな?その花からは甘く香しい匂いが漂ってきて俺の頭を麻痺させて来る。
「ごめんなさいごめんなさい信夫様。わたし、もう我慢できなくて・・・」
そう言ってラランチアは自らの唇を俺のそれに重ねてきた。夢の中とはいえ一度体験したことがあるので想像がつくのは分かるが、舌を絡める感触まで想像できるなんて思ってもいなかった。柔らかく暖かいラランチアの舌が俺を求めて這いまわっている。想像通りなのか今度お願いして確認してみたい!
「信夫様!ごめんなさい!」
「ふおおおおおおおおっ!!」
ラランチアの豊満な胸が顔の上にのしかかって来た。柔らかい水風船が隙間なく広がり、鼻も口も覆い隠してしまって息が出来ない!!
「あああああっ!!信夫様!!・・・」
ラランチア!!息があああああっ!死ぬ!死んでしまう!!夢の中で俺は死んでしまうのかっ!?出来れば最後までいい夢を見させてくれええええっ!!・・・そこで俺の意識は途絶えた。
そして、朝になった。
ちゅんちゅん
「生きてる・・・昨日は変な夢を見たな・・・いや、いい夢だったんだけど」
コンコン
ん?誰か来た。もしかしてラランチアかな?
「どうぞ」
「し、失礼します!ご、ご主人様、朝ごはんの用意が・・・し、失礼しましたっ!!」
バン!
朝ごはんの知らせに来てくれたのはゴンザエモンちゃんだった。でも急に慌てて扉を閉めるなんて一体何が?ふと、扉から視線を戻すと目の前にオレンジ色の髪が見えた。視線をずらすと髪の横に肌色が見える。肩から背中が見え、お尻の半分まで見えた所から毛布が続いている。あれ?どこかで似たようなことがあったような?俺の身体に密着した丸い柔らかい感触は確か?・・・
「んっんん・・・」
「ラ、ラランチア!?」
慌てて身体を起こそうとしたけど腕枕をしていたみたいで、ラランチアの頭が腕を押さえて起き上がれない。昨日のアレは、夢じゃなかったのかっ!?
「あ、信夫様・・・お・・・おはようございます・・・」
「ラランチア!えっと、あの、これは・・・」
俺に密着して寝ているラランチアのこの感触!!間違いなくラランチアは全裸だ!!まさかラランチアが夜這いをかけてくるなんて思いもしなかった。あそこで気を失わなかったらラランチアと最後まで・・・。なんで気を失った俺っ!!死んでも気を失うな!なんか矛盾してるけどぉ!!シーツをかぶって顔を隠したラランチアが何かぼそぼそと言っているのが聞こえる。恥ずかしがり屋のラランチアにあそこまでさせといて気を失ってしまったんだ。女の子に恥をかかせたってやつだ・・・。ちゃんと謝らないと!!
「ごめんラランチア!!俺・・・」
「ご、ごめんなさい!信夫様!我慢しきれなくて・・・襲って、しまいました・・・」
最後の方は尻窄みになっていたけど、確かに「襲った」と聞こえた。
「えっ!?えっ!?」
襲ったって・・・どこまで?




