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22話:ラランチアの面接

「すいません。家政婦さんを雇うにはどうしたらいいですか?」

「いらっしゃいませ。こちらにお住いの住所、部屋数、ご希望の家政婦ランクと希望人数をお書きください」


 いきなり躓いた。住所なんてあったのか。家政婦ランクってなんだ?文字も読めないし・・・


「ラランチア、頼む・・・」

「あ、はい!」


 ラランチアは紙とペンを受け取ると、しばらく読んでからさらさらと書き始めた。


「部屋数10のお屋敷ですと家政婦さんの実用ランクはいくつですか?」

「お貴族様のお屋敷ですか?」

「いえ、一般商家です」

「それですと・・・」


 本当に一般常識は兼ね備えているんだな。俺には何のことかさっぱりだ。その後も話を聞きながら書き込みして最後に俺に確認してきた。


「信夫様、家政婦ランクEの方を3名雇いたいのですがよろしいですか?給料は月で銀貨8枚づつです」


 俺とラランチアのバイト代が月に銀貨20枚。家政婦さん3人で銀貨24枚か。赤字じゃん!まあ、まだ手元に金貨7枚と銀貨95枚もあるし当面は問題ないか。来月にはゴブリンさんが帰って来て金貨60枚の収入予定もあるし。


「うん、なんとかなるか」


 ラランチアに向かって頷くと再び書類に書き込み始めた。受付の人に書類を渡すと面接の話になった。それもそうか。なんとなく買い物の延長の気分だったけど、家の管理を任せる人を雇うのだ。人柄や特技など面接するのが当たり前だ。


「今この施設にいるのは3人だけですので、お気に召さなければ後日お屋敷に別の者を面接に向かわせます。それでよろしいですか?」

「ええ、それで構いません」

「それでは面接の準備を致しますのであちらに掛けてお待ちください」


 壁際にある長椅子にラランチアと一緒に座る。改めてロビーの中を見渡すとほとんどの人が入り口から中ほどまでの受付を使っている。客の数は20人くらいだろうか?


「なあラランチア。最初に行った受付は何の受付だったんだ?」

「あれは仕事の依頼受付のようですね。荷運びや片付けなどの日雇いから、商品の仕入れに関するものまで幅広く扱っているようです」

「へ~」


 仕事の依頼か。ハンガーみたいな単純な物ならここで依頼することも出来たのかな?人間の国でどれだけ需要があるかわからないけど。


「お待たせしました。面接の準備ができましたのでこちらへどうぞ」

「ああ、ありがとう」


 案内されたのは6畳ほどのこじんまりした部屋で、2人掛けのソファーがコの字型に3つ配されている。奥側にあるソファーに俺とラランチアが座ると3人の女性が入って来た。若い女性が二人と老女が一人だ。若い女性二人が「よろしくお願いします」と言って左側に座ると、老女は立ったままで頭を下げた。


「あ、どうぞ、座ってください」

「失礼いたします」


 そう言って老女が座ると若い女性二人がバツの悪そうな顔をした。貴族相手ならマイナスなのかもしれないけど庶民相手だし特に気にしない。さて、何から聞けばいいか。ラランチアを見ると笑顔を見せて頷いた。まかせてもいいのかな?


「ラ、ラランチアにまかせるよ」

「畏まりました」


 俺に頭を下げて了承すると若い女性二人に向き直った。


「ご主人様の許可もなく座ったお二人はお帰り頂いてかまいませんよ」

「「「えええええええええええええっ!?」」」


 二人の女性と俺の声がはもった。いくらなんでもそれで一発退場は厳しくないか?


「一般商家ランクは年商金貨100枚を超える家も珍しくありません。そこの旦那様ですと扱いはそれなりの物が要求されます。許可もなく座るという初歩的なミスを犯すなんて、ご主人様が若いので舐めている証拠です。ご主人様は見た通り若いですが年商金貨80枚を超える方です。それなりの振る舞いが出来る方でなければふさわしくありません」


 言いたいことは分かるけど、酒場の看板娘の仕事とえらい違いだな。いや、そうじゃないか。看板娘をする時はそれにふさわしい笑顔と愛嬌をふりまいて接客をして、俺の秘書のような仕事をする時はそれにふさわしい振る舞いをしているという事か。確かに年商金貨80枚はうそじゃないけど。二人の女性がトボトボと退場して老女一人が残った。ラランチアが面接を続ける。


「貴女が家政婦になればお屋敷に住み込みになりますが、ご家族は大丈夫なのですか?」

「息子と旦那は戦争で死んでしまい、孫も昨年事故で亡くなりました。独り身の老婆ですので住み込みの方がありがたいです」


 戦争・・・そう言えば警官のゴブリンさんが言っていたな。人間は野蛮だとか蛮族だとか。


「悪いことをお聞きしました。お許しください。お名前を伺ってもよろしいですか?」

「アメリーと申します。得意と言える家事はコレといってありませんが、苦手な物もありません」


 ラランチアが頭を下げて謝罪すると、アメリーさんが自己紹介をしてくれた。得手不得手はないのか。それでEランクということは平均的な人ってことなのかな?いや、歳のせいか。


「ありがとうございます。貴女のような人材を探していました。是非ご主人様のお屋敷で働いてください」


 あっさり合格になった。ラランチアはどのような人材を探していたんだ?


「10人も20人もメイドさんがいるのなら突出した特技がある人でいいのですが、3人しか雇わずすべてをこなすには得手不得手があっては困るのです。最低一人はオールマイティな人材が必要ですね」


 なるほどね。確かに料理が得意な者ばかり3人もいてもしょうがないか。体調不良になっても仕事を回すには平均的な人が必要なんだな。


「よろしくお願いしますご主人様」


 アメリーさんが立ち上がって俺に頭を下げた。俺は慌てて立ち上がると同じく頭を下げる。


「えっと、困ったことがあったら言ってください。できるだけえっと、そう!善処しますので!」


 遥かに年上の女性に頭を下げられるとなんだか居心地が悪いな。おばあちゃんには頭を下げるもので下げさせるもんじゃない!


「ほっほっほ、やさしいご主人様で安心しました。老い先短い老婆ですが身体が動く限りお側に置いてやってください」

「こちらこそ!よろしくお願いします!」


 そして再度90度の角度でお辞儀するのだった。アメリーさんは手荷物一つでこの施設に寝泊まりしていたそうで、すぐに移動できるというので一緒に屋敷に帰ることになった。来るときは歩きだったが1時間半もかかったので、帰りは馬車を手配することにした。片道銀貨2枚は少しお高いがチャーターしたリムジンみたいなものなのでこれでも安いみたいだ。乗合馬車なら同じ距離で銅貨20枚くらいだったらしい。


 馬車で20分ほど走ると屋敷が見えてきた。屋敷に着いて扉を開くと先に降りてラランチアに手を差し出す。


「ありがとうございます。信夫様」


 続けて降りるアメリーさんにも手を差し出すと、外の景色を見てアメリーさんの動きが止まった。


「ここが、ご主人様のお屋敷なのですか?・・・」

「ええ、そうです。先日買ったばかりですけど」

「これも何かの縁なのですかね~」


 縁?アメリーさんの手を持つとゆっくりと階段を降りてきた。


「ありがとうございます。ご主人様。ここは若いころわたしがメイドをしていたお貴族様の別荘だったのですよ。今は没落してしまったようですけどね」

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