18話:ラランチアの手形
魔使「信夫のヤツ、こんな面倒くさい性格だったか?」
天使「信夫君がラランチアちゃんに感じているのは7人分の女の子の魂よ。初心な15歳の少年に女の子7人は刺激が強すぎたみたいね」
わたしたちの目の前には手を繋いで夜道を戻る二人の姿がある。ラランチアちゃんは真っ赤になって俯いて、信夫君は左右の手足を同時に動かしてカクカク歩いています。
魔使「とりあえずこれで信夫が他の女の子に手を出す心配はないかな?」
天使「ラランチアちゃんみたいにかわいい子を知っちゃったら、他には目もくれないでしょうね」
神様に創造されていない唯一の人間。身体の作りは普通の人間と変わらないみたいですけど、まったく同じというわけがありません。他の世界の神が彼をどういう風に創っているのか。そしてどうしてこちらの世界に送り込んだのか。そしてそんな稀有なニンゲンが出会ったのがラランチアちゃんと言う異形の生物。偶然にしては出来過ぎていますけど、他の世界の神がそこまで干渉出来るわけもありませんし。
天使「もう少し監視するしかありませんわね」
納屋に向かう俺とラランチア。二人とも無言だ。つい数十分前にラランチアとキ、キスを、してしまった。俺のファーストキスだ。しかも「愛してる」とか言っちゃってるし!?好きと愛してるってどう違うんですか!?どこまでが好きでどこからが愛なのか、だれか教えてください!!愛が永遠ならこの世に離婚するカップルなんていないはずだろ!それなのに気安く「愛してる」とか言っちゃっていいのか!?気まずい、気まずすぎる・・・。ラランチアには3日待って欲しいと言われた。3日待てば・・・て、手を出していい・・・のかな?これは愛なのか?どうなんだ?
「待て待て待て!!落ち着け俺!3日後のことより今夜ラランチアの色香に耐えることを考えるんだ!」
「の、信夫様ぁ!?マスター様とペオーニア様に聞こえてしまいます!」
声に出てたぁっ!!もうテンパってしまって考えがまとまらない!!同じ部屋で寝て大丈夫なのかっ!?こんな野獣と同じ部屋でラランチアは眠れるのかっ!?俺、外で寝た方がいいんじゃない!?ちらっと覗き見たラランチアは指で髪をずらし耳にかけている。ドキンッ!細く綺麗な指がしなやかに動き、小さくかわいらしい耳が姿を見せる。一つ一つの仕草に心を奪われる。あ、これあかんやつだ。絶対耐えられそうにない。
「ラランチアこれを」
「これを?どうすればいいんですか?」
背嚢から取り出したのはゴブリンさんから貰ったロープだ。
「縛ってくれ」
「えっ!?・・・」
最終手段。シーツに身体を包みロープで縛ってもらう。ザ・スマキ!!これなら絶対ラランチアに手は出せない!こうまでしないと俺は俺を信用できなくなってしまった・・・
「信夫様・・・痛くないですか?」
「大丈夫だ。思いっきり縛ってくれ」
「わたしは・・・その・・・」
ラランチアが申し訳なさそうにロープを結んでいく。ラランチアの言葉が途切れる。「信用しています」とでも続けるつもりだったのかもしれないけど、俺の行動が信用しきれないのだろうな。まあ、ムリもないけど・・・
「それでは信夫様、おやすみなさい」
「おやすみ、ラランチア」
3日後か。その日はラランチアが産まれてちょうど1週間目だな。何があるんだろう?目をつむって眠ろうとしたけど眠れない。ラランチアから漂ってくる甘い香りが日に日に強くなっていく。目をつむればなおさらラランチアを感じられる香りに敏感になる。耐えられるのも今日までかもしれない。香りを遮れる別の部屋が必要だ。でもこの納屋じゃ・・・あれ?そう言えば俺って結構お金持ってなかったっけ?そうだよ!なんでまだ納屋を借りてんだ!?家だ!そう!家を買おう!!それだけのお金は持ってるんだ!どのみちペオーニアさんの怪我が治るまでの仕事なんだ。明日ラランチアと一緒に不動産屋にいってみるか!村の中心に近い方が色々便利だけど、ラランチアと二人で暮らすなら村はずれの静かなとこの方がいいかな?うん、それがいい!そんなことを考えているといつの間にか眠っていた。甘い香りは増々強くなっていった。
「ん?・・・ん~朝か・・・あれ?」
昨夜簀巻きにしてもらって寝てたはずなのにロープが解けていた。ラランチアが解いたのかな?そう思ってラランチアのベットを見ると、スカートがまくれ上がりパンツが丸見えの状態で寝ているラランチアの姿があった!この世界のパンツは確かに色気はないが、それでもそこから覗く綺麗な太ももから目が離せない!
「と、ととととりあえずシーツをかぶせて・・・」
意外に寝相が悪いのかシーツがベットの下に転がっている。俺はそれを手に取りゆっくりとラランチアに近づいた。無意識に息を止め起こさないようにシーツを足元から上半身に・・・
ギシッ
俺がベットに上がったことでシーツの下に敷き詰められた藁束が思ったより大きな音を立てた。ラランチアに跨り両手でシーツを持って上半身にかけようとした時、ラランチアの目がパチリと開いた。朝からラランチアの目をこんなアップで見られるなんて幸せだ・・・な・・・
「きゃあああああああっ!」
パンッ!
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「いや、もういいって。驚かした俺も悪いんだし」
ラランチアと村を歩きながら不動産屋を探す。起きてからずっとラランチアは謝りっぱなしだ。目はパッチリ開いていたけど、どうやら寝ぼけていたらしく無意識にひっぱたいたようだ。
「ごめんなさい。痛くないですか?」
俺の頬には見事な手形がついている。漫画とかではよく見るけどこんなにクッキリ跡が残るもんなんだな。昨夜もひっぱたかれたけど、今回も同じとこだ。ラランチアが右利きなのが分かった。
「音は良かったけどそこまで痛くないから気にするなよ」
「本当にごめんなさい・・・」
ラランチアはなおも謝って来るので「手を・・・繋いでくれたら許す・・・」と言うと、恥ずかしそうに俺とは反対側を見ながらそっと手を伸ばして来て俺の手に重ねた。昨夜も手を握ったけどこんな真昼間の往来で手を繋いで歩くのは恥ずかしい!恥ずかしいけど、幸せだああああああっ!!ラランチアの手は小さくて柔らかくて肌触りが最高だ!二人ともお互いを見ずに明後日の方角を見ながら歩いていると、すれ違う男からは「ちっ」と言う舌打ちが、女性からはクスクスという忍び笑いが聞こえてくる。仕方ないだろう!女の子に慣れてないんだ!スキップしないだけ褒めてくれ!
「ふ、不動産屋はどこだろうな?」
「そ、そうですね。聞いた話だとこ、この辺のはずですけど」
ラランチアが再び通行人の女性に不動産屋のことを聞いて戻って来た。
「わかりました信夫様。この裏路地だそうです」
「そうか。行ってみよう」
少し細い裏路地に入ると意外にお店がたくさんあった。表通りだけでなくこっちにも店があったんだな。鍛冶屋に武器屋に今の時間は閉まっている怪しい宿もあった。そしてその一角にある看板の前でラランチアが足を止めた。
「ここですね」
あいかわらず俺には文字が読めないがここが不動産屋らしい。
「ごめんください」
ラランチアが扉を開け中に声をかける。俺も続いて入ると奥から女性の声が聞こえてきた。
「は~い。いらっしゃいませ。お部屋をお探しですか?」




