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15話:諸王国会議

 バサァッ!


 漆黒のマントを翻し優雅に席に着く。


「では、始めようか」


 円卓に両肘を付き、手の平を組んで口元を隠す。円卓についているのは各種族の代表だ。わたしの左隣には一番勢力のある理知的な妖魔族のゴブリン首相。それから時計回りにナルシストの妖精族のエルフ公。やる気も生きる気力も無い不死族のヴァンパイア国王委員。一日の大半を寝て過ごす獣人族のキャット女王。野蛮で下賤な人族の人間王。最後にわたし、超少数精鋭魔族の王!ボッチリーノ魔王!


「まずは遅刻してきたことを詫びてはどうなのですか?魔王」


 隣のゴブリン王がくいっと眼鏡を押し上げて発言する。御年20歳の老人だが、未だ衰えないはち切れんばかりの筋肉をキッチリとしたスーツに押し込んでいる。口元から鋭い牙が覗いているがベジタリアンらしい。


「ふっ、我ら魔族は時間などに縛られないのでな」

「大方その髪のセットに時間がかかったのでしょう?なんとムダな」


 くっ!・・・その通りだが美形のエルフ公に言われると反論しずらい・・・話しかけておいてこちらを見ることもなく爪のケアに勤しんでいる。羨ましいほどの長い金髪を逆立て、毛先だけを緑に染めている。最近エルフの間にパンクロックが流行っていると、娘のフィオリトゥーラが言っていた。


「なんでもい~からさ~、そろそろ終わろうよ」

「まだ初めてもないだろう!」


 思わずツッコミを入れてしまった。円卓に頬を付けてだるそうにしているのはヴァンパイア国王委員。誰も王様をやりたくないから国民の中でくじ引きをして、はずれを引いた彼が国王委員に就任したらしい。ちなみに当たりはヒキニートだ。


「まったく、諸王国会議をなんだと思ってるのですか?国から選ばれた代表が、話し合いで種族間のいさかいを納める場ですよ。もう少し代表として恥ずかしくない振る舞いは出来ないのですか?」


 ゴブリン王が再びくいっと眼鏡を持ち上げ嫌味を言う。あんた眼鏡の大きさ合ってないんだろう?


「それはキャット女王に言ってあげてよ~。起きてるだけ僕の方がましだよ~」

「かーかー・・・」


 猫獣人のキャット女王は会議の場に枕まで持ち込んで鼻提灯をぶら下げ爆睡している。鼻提灯とか話では聞いたことがあるけど生で初めて見たぞ。


 ガタン!


「ふざけやがってっ!!」


 突然人間王が椅子を蹴倒して立ち上がり、背中の大剣を抜いてキャット女王に振り下ろした。


「ふんっ!!」


 ピタッ


 全体重が乗っていた大剣の一振りはキャット女王の目の前で止まる。爆睡していたキャット女王は2本の指で大剣を受け止めていた。


「そんにゃに殺気を振りまかれたら目が覚めちゃうにゃ。人間は弱いんだから大人おとにゃしくしてにゃさいにゃ。ふわぁ~・・・むにゃむにゃ」

「くそおおおおおっ!!」


 キャット女王は指で挟んだ大剣をポイッと背後に放り投げると、くるくると回転して壁に突き刺さって止まった。本来諸王国会議の場に武器の持ち込みは禁止なのだが、あまりに弱い人間だけ特別に持ち込みが許可されている。持ち込んでもこんなもんだが。

 10年ほど前、領土を増やしたい人族が獣人の領土に侵攻したが、1000人の人間に対してわずか50人の獣人に撃退されてしまった。敗色濃厚な人族はそこで悔しがっている人間王が一騎打ちを申し込んだが、同じくそこでいびきをかいているキャット女王に指一本で負けてしまった。それ以来諸王国会議のたびに同じことが繰り返されているのだ。


「もう諦めた方が良いのではないですか?人間王。幸いどの種族も()()()()()()()()()()()()()()ので、領土は安泰ですよ」


 ゴブリン王がさらっと「荒野に興味はない」と辛辣な言葉を浴びせる。


「それよりも今回の議題ですが、魔王の番でしたか?」

「その通り!」


 2か月に一度開かれる諸王国会議は持ち回りで話し合う議題を決めている。今回は魔族の番だ!わたしはマントを翻して立ち上がると一同を見渡して厳かに告げる。


「我が国との交易を全面解除してもらいたい!!」

「「「「好きにしたらいい」」」にゃ」


 あっさり認められた!?関税や輸出禁止品の確認とかはいらないのか!?


「あれは交易ではなくただの露天商でしょう?我がゴブリン民主主義共和国の辺境の町でこっそり露店を出しているのは知っています。すでに黙認していますのでお好きになさればいい」


 なんだとっ!?完璧な変装で出していた露店がバレているとは・・・


「そうですね。我が公国でも醜い露天商の噂は聞いています。大通りで露店を出す場合は美醜チェックが入りますが、あの裏路地なら見逃してあげますよ」


 醜いって修飾語をわざわざつけなくてもいいだろうっ!?しかし、美形ばかりで大通りに露店を出す勇気がなかったから、人通りのないあの裏路地に露店をだしたが、すでに公王にまで伝わっているのか!?


「うちはお店を出す人がいないから露店を出すのは別に構わないよ~。買いに行く人もいないだろうけどね~」


 やる気も生きる気もない不死族の国にはもう出店はしないよ。一個も売れなかったし・・・しくしく。


「んにゃ?・・・あ~露店のはにゃしだっけ?別に()()が露店を出すのに許可にゃんていらにゃいにゃ」


 露店の話ではない!交易のはなしだ!それと個人と言うな!我が国民の()()が従事している仕事だぞ!とりあえず露店・・・じゃない!交易をしたい国とはすべて許可を取り付けた。これで堂々と輸出ができるぞ!フィオリトゥーラ!パパやったよ!


「うぉほんっ!魔王よ、わが人間の国と交易したいのなら関税率100%を・・・」

「あ、おたくの国はいいので」


 辺境の蛮族の人間の国とは輸出品が被るのだ。持って行っても意味がない。


「なんだとっ!魔族ごときがっ!!貴様の国など国とは言えんわっ!人口たったの二人ではないかっ!!」


 あ~っ!それ言っちゃう!?言っちゃうの!?確かにわたしと娘のフィオリトゥーラしかいないが、てめえの国なんかには負けんぞ!!


「ここは喧嘩をする場ではないぞ、人間王よ。それとさっきから何やら言いたそうな顔芸をしている魔王。意見があるなら発言しなさい」


 眼鏡をくいっと持ち上げながらゴブリン王が口を出して来た。え?顔芸してた?わたし?マジで?・・・


「さて、本日の議題は以上ですが、臨時の議題がある国はありますか?」


 ゴブリン王が周りを見渡して意見を求める。すると人間王が立ち上がりキャット女王に指を突きつけ、


「某と決闘しろっ!キャット女王!!」

「他にはないようですので今回の諸王国会議はこれにて終了いたします。お疲れさまでした」

「「「「お疲れ様でした」」」にゃ」

「・・・」


 こうして無事に諸王国会議は終了したのである。


 戻ったら七色の種の捜索だ!!

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