12話:ラランチアとひざ枕
商会で両替をした後近くの甘味処であんみつと団子を食べた。あんみつなんて生まれて初めて食べたけど意外においしかったな。ラランチアなんか満面の笑顔で本当においしそうに食べていた。桜色の唇に吸い込まれるあんみつが羨ましい・・・いや、何言ってるんだ俺は!口直しに緑茶を飲みながら、ふとラランチアの髪を見た。あれ?ラランチアの髪に葉っぱがついている。
ガタッ
「信夫様?」
俺は立ち上がってラランチアの顔の横にそっと手を伸ばす。
「あ、あの・・・信夫様、こんな所で・・・」
なぜかラランチアが真っ赤になっていたがそっと髪に触れて葉っぱを手に取った。
「あいたたたた!」
「あれ?・・・」
この葉っぱって?ラランチアから生えてるのか!?そう言えば七色の種から育った植物から産まれたんだったな。かわいすぎて忘れていたけどラランチアって植物なのかな?
「ご、ごめん!葉っぱがついてるんだと思ってた」
「い、いえ。説明してなかったのが悪かったのです。毎日一枚づつ増えるんです、この葉っぱ」
そう言えば昨夜も2枚ついていたような。顔ばっかり見ていて気付かなかった・・・
「毎日増えて言ったらいずれ葉っぱに覆いつくされるんじゃ?・・・」
「たぶんそんなことにはならないと思います。おそらくですけど、明日には蕾が出来て7日目には花が咲くんじゃないかと」
おお!花が咲いたらきっとラランチアはもっと可愛くなりそうだな!耳の上に花のアクセサリーができるのか。楽しみにしておこう。
「花が咲いたらきっと・・・」
ラランチアが俯いて小声で何か言っている。耳が真っ赤になってるけど花が咲くのが恥ずかしいのかな?
どんな色の花が咲くんだろう?きっと似合うと思うんだけどな。オレンジ色の髪に白い肌、それに・・・赤いあざ?
「ラランチア、その首筋のあざはどうしたんだ?」
そう言った途端ラランチアが素早く首に手を当てて隠した。
「こ、これは!のぶ・・・いえ、聞かないでください・・・」
のぶ?俺かな?俺が何かしたんだろうか?ラランチアの首に触ったことはないはずだけど。聞かないでと言うなら聞いたらダメなんだろう。でも、まるでキスマークみたいに見えたな・・・
ふあ・・・
「あ、ごめんなさい信夫様」
「いや、別に謝らなくても・・・」
ラランチアが小さくあくびをした。昨夜あまり眠れなかったのかな?・・・眠れなかったに決まっている。突然襲いそうになった男と同じ部屋に寝てるんだ。緊張と警戒で眠れなかったんだろう。太陽の位置からすると仕事まであと3時間くらいはあるな。
「ラランチア、戻ろう」
「え?あ、はい」
二人分で銅貨を10枚置くと急いで店を出た。
「ごちそうさん!」
「ごちそうさまでした」
それからしばらくして酒場ペオーニアに帰って来た。直接裏に回るとラランチアと一緒に納屋に入る。
「信夫様、どうかなさったのですか?」
「仕事まで3時間近くあるからラランチアは寝てくれ。俺は外に出てるから、あまり眠れなかったんだろ?」
自然に腰を押してベットに座らせる。ラランチアが横を通り過ぎるとまたしてもいい香りがする。女の子ってなんでこんないい匂いがするんだ!?
「そ、それじゃ、俺は店の方にいるから」
後ろ髪を引かれるが回れ右をして納屋を出ようとすると、ラランチアが服の裾を掴んで引き留めた。
「あ、あの・・・いえ、何でもないです!」
なんだろう?何かお願いがあるのかな?俺はラランチアに向き直り膝をついて視線を合わせる。うわぁ、かわいい顔だなぁ・・・ヤバイ!心臓がバクバクしてきた!落ち着け落ち着け!落ち着いて言うんだ。安心して寝てくれって。
魔使「俺に添い寝してほしいのかい?だ」
「俺に添い寝してほしいのかい?」
あああああああああああああっ!!てめえ!余計な事を言うな!つい復唱しちまったじゃねえかっ!!
「!?・・・お、お願い・・・します・・・」
えええええええええええええっ!?ど、どういう事なんだ!?昨日はあんなに警戒していたのにっ!魔使まで目を丸くしている。
ゴクリ・・・
ほ、本当にいいのだろうか?俺がラランチアのベットに深く腰掛けると「し、失礼します」と言ってラランチアもベットに上がり四つん這いで近寄って来る。そしてゴロンと俺の腿に頭を載せて横になった。これは!?ひざ枕!?
「お、おやすみなさいっ!」
昨日の夜と同じく元気いっぱいに眠る宣言をすると、ギュッと目をつむって身体を硬くしている。さすがに俺の方を向いて寝るのは恥ずかしいのか背中を俺に向けている。これで本当に眠れるの?・・・俺の右手の届くところにラランチアの頭がある。俺はそっとその髪に触れた。
ビクン!
「あ!ご、ごめん!」
「い、いえ!そのまま・・・お願いします・・・」
こ、こんな感じかな?俺は猫を撫でるようにゆっくりとラランチアの髪を撫でた。柔らかく滑らかな髪が指先をするすると抜けていく。堅かった表情が安らかになっていく。気持ちいいのかな?ふと他に視線をやると肩出しのワンピースを押し上げた山脈の谷間が見えた。大きくて柔らかそうな山脈から目が離せない!手を伸ばせばきっと届くだろう・・・ヤバイ!俺の息子が目を覚ました!このままではラランチアの顔にタッチしてしまう!こんな時は・・・そうだっ!目を閉じてお経を唱えれば!な、なんみょうほうれんげきょう?・・・お経なんて知るか!!何か!何かないか!?・・・
スースー・・・
あ、あれ?もう寝た?ラランチアの顔を覗き込むと目を閉じて静かな寝息を立てている。なんだろう・・・あれだけラランチアの山脈に興奮していたのに、天使のような寝顔を見たらそっとしておこうって気持ちになる。
天使「呼びました?」
お呼びじゃねえよ!俺が二択で迷った時だけにしろよまったく・・・あれ?おい天使、なんで声だけじゃなく姿まであるんだ?俺の頭の中だけの存在じゃなかったのか?そういえばさっきも目を丸くした魔使の姿が見えてたな・・・
俺の頭の高さに2等身のぬいぐるみのような天使が宙に浮かんでいる。槍を持って黒目が大きいやや不気味な女の天使だ・・・一応天使っぽい羽は生えているが、どっちかと言うと堕天使だろ。
天使「何をおっしゃってるんですかこのガキは?妄想のし過ぎですか?このキュートな姿が見えないのですか?」
そう言って空中でくるっと一回転してポーズを決める。いや、不気味だから・・・
魔使「今更だな。僕たちはずっと側にいたのにな。ゴブリンに逮捕された頃から」
本当にこの世界に来た最初からだな!え?ずっといたの?マジで?
全身真っ黒で片手に本を持ち、眼鏡をかけている蝙蝠の羽のある魔使。魔使のほうがぬいぐるみとしてはかわいいのはなぜだ・・・
「お前たちは俺の妄想の産物じゃないのか?」
天使「だから違うと言ってるではありませんか。バカなんですか?死ぬのですか?」
魔使「こんなハッキリした魔格があるのに、お前の妄想なはずがないだろう?」
天使・・・口悪いなぁ・・・そ、それじゃお前たちは一体?
魔使「僕たちは天界と魔界から来た監視役だよ」
天使「この世界に入って来た汚物、失礼、異物であるあなたが変な事をしないようにと」




