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10話:ラランチアと買い物デート

 ざわざわざわ・・・


 見られている。村を歩いていると男はもちろんのこと、女性までもが振り返る。当然俺のことじゃない、ラランチアだ!


「信夫様、あの角を曲がった所ですよ」


 ラランチアが満面の笑顔で角を指さす。改めて周りの人を見回してみるとみんな地味な服装で、ラランチアみたいなかわいい服を着ている人はいない。異世界の服装の基準がわからないが、やっぱり村人が着るような服じゃないみたいだ。胸についているリボンがラランチアの歩みに半歩遅れて弾む・・・胸って歩くだけで上下に揺れるものなのかっ!?女の子の胸のサイズがいまいちわからないが、高校のクラスの女子が身体測定の後にこそこそ話していたサイズで、「D!?でっか!」と言っていたのを思い出す。決して聞き耳を立てていたわけではない。それだけは言っておく。ただ、Dと言っていた女子の胸はラランチアとは比べるべくもないサイズだった。とゆーことは、


「ラランチアのサイズって・・・」

「え?わたしのサイズですか?」


 ヤベエ!声に出てた!!


「あ、いや・・・そう!靴も買った方がいいかなって、足のサイズだよ!」

「ああ、足ですか。いくつなんでしょう?産まれたばかりなのでよくわからなくて」


 ラランチアがスカートを少したくし上げて足を見せる。おおおおいっ!!!


 ざわざわざわ・・・


 ラランチアが足を出すと振り返るだけでなく立ち止まり、近寄って来る男まで現れ始めた。ほっそりとして白磁のように白く滑らかな肌に目が釘づけになる。昨夜は膝上のスカートで足はしっかり堪能させて・・・じゃなくて、見ていたのに!昼間の往来で見る生足はなんともエロく感じる。


「ラランチア行こう!」

「あ!・・・はい・・・」


 俺は咄嗟にラランチアの手を掴むと速足でその場を離れた。握れた!!咄嗟だったけどラランチアと手を繋いで歩けることに涙が出てきた!何度触ってもやわらかいその手はもう離したくなくなるよ!俺に引かれて歩くラランチアは、耳まで真っ赤になって、もう一方の手を口元に当ててうつむき加減について来る。かわいすぎるぞ!そのしぐさ!いっそ抱きしめられたら・・・


 魔使「いいじゃないか?!男が女を求めるのは当たり前」


 お前はでてくるな!天使!しっかり仕事してくれよ!


 天使「ダメに決まっているではありませんか!バカなんですか?死ぬのですか?連れ込み宿に入ってからにしなさい!」


 お前もかよ!実は二人とも悪魔だろ!!しかしこれで昨日の繁盛具合が理解できた。おそらくペオーニアさんと一緒に服を買いに行った時もこんな感じだったのだろう。ラランチアが金魚の糞のように客を引き連れて・・・あれ?そう言えばラランチアってトイレに行ったっけ?まさか「アイドルはトイレに行かない」ってやつじゃ?・・・ここは異世界だし、もしかしたらそういうこともあるのかな?・・・ま、まあ直接聞くわけにもいかないし今度確認してみるか・・・


「あ、信夫様ここです」


 おっと、考え事をしながら歩いてたらいつの間にか洋服店についていたようだ。入り口の横に看板が出ている。相変わらず文字は読めないがなんて書いてあるんだろう?


「ここが洋服を売っている店なのか?」

「ええ、ここに書いてある通り『輸入服専門店ゴブリン』です」


 は?・・・待て待て待て!ツッコミどころが二つもあるぞ!


「輸入服?」

「ええ、お隣のゴブリン民主主義共和国からの輸入品を専門に扱っているお店ですね」


 あのゴブリンさんの国ってそんな名前だったのか!?しかし種族の名前を国名にするなんて。それじゃこの国は人間王国とでもいうのかな?それからもう一つ。


「ラランチアってこの看板が読めるの?」

「え?ええ、普通に読めますけど?」


 なんてこった!読めないのは俺だけか!?そう言えば生まれてすぐ会話もできたし、この世界で産まれたからなのかな?


「ちょっと聞いてみるんだけど・・・」

「なんでしょうか?」

「ラランチアって産まれたばかりだけど、この世界の常識とか分かるの?」


 会話も出来れば文字も読める。産まれたばかりの赤ちゃんは恥ずかしいとか思わないけど、ラランチアには恥じらいもある。元の世界の女子大生より知的で美人だし。美人は今は関係ないか・・・


「そう・・・ですね。何が常識なのかよくわかりませんけど、普通の人くらいには分かっていると思います」

「そうなんだ。えっと実はさ、俺ってこの世界の常識がよくわかんないんだよね。その辺頼ってもいいかな?」


 ちょっと情けないけどここで見栄を張ってもしょうがないし、ゴブリンさんの国みたいに発展もしてない国じゃ何が問題になるかもわからない。ゴブリンさんも「王族じゃあるまいし」って言ってたから、人間のこの国には王様がいるんだろうな。うっかり王族批判とかしたらあっとゆーまに死刑になりそうだ・・・


「は、はい!まかせてください!!」


 ラランチアが胸元で両手を組んで勢いよく返事をしてくれた。そして後ろを振り向きまたしても小さくガッツポーズをするのだった。


 カランカランカラン


「いらっしゃい」


 扉を開けて店の中に入るとベルが鳴った。元の世界でもよく見た仕組みだな。扉の上にベルがついている。


「こんにちわ。またお洋服を見せてください」

「ああ、昨日の!やっぱりその服も似合ってるな」


 ラランチアと挨拶をしている店員はゴブリンさんだった。人間は蛮族とか言っていたけど、人間の国でお店を出しているゴブリンさんもいるのか。店内は所狭しと服が並んでいて、しま〇らとゆーよりアキバの電気街にあるジャンク屋のような雰囲気だ。通路は狭く歩くと必ず服に引っ掛かる。しかもなぜかハンガーではなく棚にそのまま服がたたんで置いてあるのだ。上の服をどけないと下の服を見ることも出来ない。


「ハンガーで服を掛けておけばいいのに」


 俺がぼそっと言った言葉が聞こえたようで、ラランチアと会話をしていたゴブリンさんが俺を見た。


「はんがあ?」


 あれ?ハンガー知らないの?


「こんな感じで弓なりになってて、服の首の部分から入れて、上に取り付けた鍵型になった金属で引っ掛けるやつ。それを棒かなんかに引っ掛ければ狭い場所でも大量に服を並べられるでしょ?」


 こんな説明で伝わるかな?


「ちょ!ちょっと待て!描く物を持ってくるから!!」


 ゴブリンさんが服のデッサンをしている荒い紙を持って来た。お店のメニューが書いてある紙が古ぼけて見えていたけど、これを見ると紙の質は元の世界に及ぶべくもないようだ。ボールペンどころか鉛筆もないようで、初めて使う万年筆でなんとかハンガーの絵と、それを並べているハンガーラックの絵を描いて説明した。


「んで、こんな感じで並べれば服も見やすいでしょ?」


 紙を持ち上げて凝視しているゴブリンさんの手が震えている。


「おぬしは天才かっ!?」


 天才って・・・あ!これってアレか?異世界物でよくある現実世界チートとか言う。


「信夫様、すごいです!」


 ラランチアが目を輝かせて俺を褒めてくれる。ま、まあ悪い気はしないかな?ゴブリンさんは急いで奥に引っ込むと木切れや釘を持ってきて試作品を作り始めた。まあ作りは単純だし不格好でもよければ俺でもできる。ゴブリンさんは手先が器用なようで、ものの5分足らずで簡単なハンガーを作り上げた。弓なりにはなってないし板も分厚いけど曲げた釘はしっかりと引っ掛かりそうだ。


「ここに服を通してこの部分を引っかければ・・・」


 ランプを吊るしていたフックに試作品のハンガーを掛ける。うん、いいんじゃないかな?


「これは!?すごいぞ!これを量産すればもっと服を置くことができる!!」


 いや、服は十分あるから通路を広くしようよ・・・。ラランチアも同じことを思ったのか俺と視線が合うと肩をすくめて苦笑を浮かべた。


 あああ!苦笑するラランチアもかわいいなぁ!!

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