スカート▲スカート△
教室の黒いカーテンで私たちはお互いを隠したまま
唇を重ねる
………………
…………
……
遠くからテニスボールを打つ音が聞こえる
雨上がりの空と紫陽花の咲く中庭から風を背に
白く長いあなたの指に私の指を重ねる
熱と熱は私たちを焦がし
息は荒く鼓動も早くなり
二人は一つの林檎になる
でもこれは刹那の出来事
不条理のみを残し
箱庭の夢はすぐに暗転する
あなたは唇を離すと
これ以上は駄目だよとつぶやく
私は無邪気な子供のように
どうして駄目なのかと詰問する
本当はわかっている
この想いを願ってはならない
あなたは私の髪をやさしく撫でる
琥珀の瞳と長い睫毛がやや下がる
聞き分けのない私を諭すように
寂しそうに微笑む
………………
…………
……
譜面やピアノがなくても
私たちは音を紡ぎ奏でていく
初めは練習曲だった私たちの旋律は
今ではまるで狂詩曲
私たちのこれからを創っていく
たとえ琥珀の瞳から一筋の涙が落ちても
昨日の二人には戻れない
今度は強引に唇を重ねる
………………
…………
……
静寂の教室に一つの林檎
誰かの足音が遠ざかっていく
窓から吹き込む風は
蒸し暑さと共に私たちを包む
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