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美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第3章 第四・第五のアンナユニット編
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 第25話【集結】2/2 -第3章 完-


『XENO、消滅確認』


 ナイトシェイドのナビゲートボイスが、無感情な報告を伝える。


 上空でホバリングしながら、状況を静かに見守っていた凱は、モニタに映された二人の戦士の姿に、ため息を漏らした。


「二人とも、お疲れ……って、見てるこっちまで疲れたよ。ハハ」


 凱は、周囲にこれ以上XENOと思しき動体がいないことを確認すると、ようやく機体を着地させようとした。

 その時、彼方から三本の光のラインが飛んでくるのが見えた。

 青、緑、そしてピンク。


「おお、向こうも片付いたか!」


 凱は、心底ホッとして表情を緩めた。

  

 

 あれほど大きな身体だったにも関わらず、破壊されたワーベアの肉体は、あっという間に崩壊し消滅してしまった。

 燃え尽きた灰のような状態となり、天から降り注ぐ破片を見上げていたアンナパラディンとアンナブレイザーは、お互いを見つめ合った。


「勝利、ってことでいいのかな?」


「そうね。

 初陣にしては、なかなかだったと思うわ」


「へへ、ありがとさん!」


「今回の戦闘で、分析しなければならない事が、また山積みになったわ」


「あんた、明日から学校でしょうが。

 そんな暇あるの~?」


「そうだったわね。

 私としたことが、夢中になって忘れてたわ」


「へっ、未来がド忘れなんて、珍しいこともあるもんだ!」


 そう言いながら、アンナブレイザーは右拳を突き出す。

 一瞬戸惑ったが、彼女の表情を見て、アンナパラディンも拳を突き返す。

 コン、という金属同士がぶつかるような音が響き、二人の顔に自然な笑顔が浮かんだ。


「ありさ。

 これからも、私と組んでくれる?」


「勿論さ。

 意外とモロいあんたを支えてやんのが、あたしの役目だからね」


「私はもう、何があっても、決して屈しないわ」


 アンナパラディンのその言葉に、アンナブレイザーはニヤリと微笑んだ。


「向こうも、終わったみたいね」


「おっ? 愛美来た?」


 飛行音と共に、三つの光が上空から現れる。

 やがて光は人の形となり、ゆっくりと静かに着地した。


「あ~♪ 二人とも、実装してる~☆」


 一番最初に反応したのは、アンナミスティックだった。

 珍しそうにパラディンとブレイザーの姿を見つめ、更に前から、後ろから、横からじろじろ見回した。


「おめでとうございます、お二人とも」


「良かったです! これで、五人全員実装できたんですね!」


 喜ぶアンナウィザードと、アンナローグ。

 その祝福が、何故かとても恥ずかしい。

 やがて、ナイトウィングを降りた凱も、その場にやって来た。


「五人とも、お疲れ!

 さぁ、夜も遅いし、帰還行動に移ろう」


「はーい!」

「りょうかーい!」



『待て、皆』


 と、そこに通信が入る。

 アンナユニットの五人には、それぞれのモニタに。

 そして凱には、腕時計型の端末から。

 通信の声は、勇次だった。


『五人勢揃いしたな。

 皆、よく頑張った』


 珍しい、勇次からの労いの言葉。

 いつもと違う落ち着いた口調に、六人は神妙な面持ちで耳を傾けた。


『アンナユニットが五体全て起動したら、命名しようと考えていた、チーム名がある。

 この機会に、皆にそれを伝えておきたい』


「命名?」


 アンナパラディンの呟きは、その場に居る全員の疑問だった。


『ああ、そうだ。

 いちいち各個の名称で呼んだりするのもなんなのでな。

 ――お前達五人には、“アンナセイヴァー”という名称を贈りたいと思う』


「アンナ……セイヴァー……」


『アンナユニットの“アンナ”と、我々“SAVE.”を合わせたものだ。

 以降は、お前達チームをそう呼称させてもらいたい。

 構わないか?』


 勇次の、どこか優しさを感じる言葉に、皆は複雑な気持ちと同時に、奇妙な安堵感を覚えた。


「アンナセイヴァーか。なんか、かっこいいじゃないか」


 凱の感想に、アンナブレイザーとミスティックが大きく頷く。

 他の三人も、まんざらではないようで、微かに微笑んでいる。


「いいねいいね! あたしは気に入ったよ!」

「うん、私もー♪ アンナセイバ、アンナセイバ☆」

「よくわかりませんけど、言いやすくて覚えやすい、いい名前だと思います!」


「確かに、悪くはないわね」

「個人的には、~マンや~ジャーが良かったんですけど、多数決なら従います」


 一部おかしな反応があったが、満場一致で賛成となったようだ。


『反対意見がないなら、以降はその呼称で統一させてもらう。

 これからもよろしく頼むぞ、アンナセイヴァー!』


 通信が切れる。

 珍しく張りのある明るい声に、凱は、やれやれといった表情を浮かべた。


「あの野郎、相当嬉しがってるみたいだな」


「みたいですね。あんな蛭田博士の声は、初めて聞いた気がします」


「そうだよな、ようやく念願の夢が叶ったんだか……ら」


 アンナパラディンを見つめていた凱の声が、途中から妙に小さくなる。


「そ、それはそうと……早く、実装を解除した方が、い、いいかも……な、みんな」


 何故か、凱は顔を赤らめ、アンナセイヴァー五人から目を逸らす。

 その意味にいち早く気付いたアンナウィザードは、顔を真っ赤にしてアンナローグの後ろに隠れた。

 アンナパラディンも、その様子を見て、ようやく察したようだった。

 途端に、スカートの端を手で押さえ、ジロリと凱を睨む。


「……お兄様ぁ……見ちゃ、イヤです……」


「全然、気にしてなかった……

 私、こ、こんな格好で……今まで」


 アンナパラディンの顔も、ウィザードのように真っ赤になる。

 慌ててブレイザーの背後に隠れようとするが、彼女はすっと身をかわし、盾になることを避けた。


「え? ちょ」


「みっともないなあ、もっとこう、堂々としなさいよ」


「そ、そんな事言ったって! こ、こんな短いスカートで……」


「ご、ごめん!

 見ないから! 俺、出来るだけ見ないから!」


「あ~? 今更恥ずかしがってるわけぇ?」


 慌てて距離を取ろうとする凱と、ニヤニヤ顔で冷やかすブレイザー。


「かわいいのにねー、そんなに恥ずかしいかなあ?」


「えっと、私は作業服の感覚なので、そういう気持ちはないですねー」


 恥ずかしくない組が、それぞれ真逆のコメントを放つ。

 またもその場で楽しそうにクルクル回るアンナミスティックの、ふわりと浮き上がったスカートから覗く下半身を見て、今度は凱が顔を赤らめた。


「や、やっぱり、今川さんに進言して、ダウングレードしてもらいます!

 こんな……やだ、お尻見えちゃうじゃないですか……」


 初めて見る、恥じらいまくる未来の仕草に、アンナローグは、とても新鮮な気持ちになった。


「諦め悪いなあ。

 こんなん、ぱーっと開放しちゃえば、すぐに慣れるってば!」


 そう言うと、アンナブレイザーは、アンナパラディンのスカートを、思い切りめくり上げた。


「!!」


「へ?」


「きゃ……!」


「ひえ?!」 

 

「やーん!」


 捲り上げられたのは、スカートの後ろの方。

 その為、正面に立つ凱には見えないが、アンナパラディンのお尻は丸出しになった。


「うっわぁ、めっちゃ際どいTバック!

 おお、こりゃあ、でっかくて良いエロ尻じゃわい」


「ありさちゃん、言い方がえっちなおじさんみたいだよ~!」


「ありささん、なんてことを……」


「凱さぁん、こっち、見に来るぅ?」


「……え、え~っと……」


 その後の事態を察したのか、凱は慌てて目を隠し、急いでナイトウィングの方へ移動した。

 顔中を真っ赤に……否、真っ赤を通り越してもはや真紅の粋に達していたアンナパラディンは、お尻を軽く叩かれ、ようやく我に返った。


「あ、あ、あ、ありさぁ~~!!」


 背後で活火山が爆発し、溶岩が噴き上がる。


「うひゃあ~! 爆乳大元帥が怒ったぁ♪」


「なんですってぇ?! このまな板将軍が!」


「なぁっ?! 誰がまな板だぁゴルァ?!」


「自分の胸に手を当てて考えてみればわかるでしょ!」


「こ、こ、こ、こん野郎~!! 言ってはいけないことを、とうとう言いやがったなぁ!」


「その言葉、そっくりそのまま返してあげるわよ!」


 噴き出す溶岩、落ちる雷。

 アンナパラディンとアンナブレイザーは、今度は怒りの形相で対峙した。


「え、ちょ、お二人とも! おやめくださーい!」


「あわわわ! た、闘いが始まっちゃうよぉ!」


「ひええ! が、凱さ~ん! なんとかしてくださいよぉ~!!」


「俺は知らない、俺は見てない、何も関係ない……」


 

 六人がSVアークプレイスに帰還したのは、それから一時間も経ってからだった。



 


「あ~あ、せっかくガルガンチュアになったのに。

 やっぱり、もっと強い個体に成長してからじゃないと、負荷に耐えられないのかなあ?」




 六人が揉めていた場所から、僅か数十メートルほどの場所。

 なぎ倒された木々の上に座っていた黒いパーカーの少女は、軽く舌打ちすると、スッとその場から姿を消した。

 まるで、空中に溶け込むかのように。





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