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美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第3章 第四・第五のアンナユニット編
64/226

 第23話【混戦】4/4


「タイプIII・ソードっ!」


 突然、横に並ぶアンナミスティックが叫ぶ。

 と同時に、2メートルはあったマジカルロッドは80センチ程度の長さに縮み、変形した。

 末端部を刃に見立てた「剣」のような形状となったロッドを前方に翳し、アンナミスティックはローグ同様の姿勢で突撃した。


「たぁ――っ!!」

「やぁ――っ!!」


 二人の声が重なり、ほぼ同じ踏み込みと速度で挑む。

 アサルトダガーは頭部を正面から、そしてマジカルロッドはもう一体の頭部を真上から垂直に攻撃する。

 ムカデの巨体は、その大きさに似合わない高速で攻撃を回避しようとしたが、アンナユニット二体のダッシュの方が早い。


 しかしアンナローグは、頭部を狙うが攻撃をかわされ、逆にムチのような太い触角で払いのけられた。


「きゃっ!」


 体勢を立て直し、触角の攻撃を巧みにかわしながら、アンナローグは次の攻撃のチャンスを狙う。

 気のせいか、この個体は妙に防御性能が高い気がした。

 

“Completeion of pilot's glottal certification.

I confirmed that it is not XENO.

Science Magic construction is ready.MAGIC-POD status is normal.

Execute science magic number C-017 "Search-scan" from UNIT-LIBRARY.”


 斬りかかりながら、アンナミスティックは科学魔法を使用する。

 ジャイアントセンチピードの身体をスキャンした情報が、視界内に展開していく。

 頭部にマジカルロッドの先端が突き刺さった瞬間、アンナミスティックは、そのまま下方向に向けてブーストした。

 そのまま、全体が縦に切り裂かれる。

 

 ギャアァァァ―――ッ!


 断末魔を上げ、ジャイアントセンチピードの一体が崩壊する。

 しかし、着地したミスティックは、アンナローグが闘っている方のセンチピードを睨んだ。


コアがなかった!」


「こ、コア? ですか?!」


「ローグ! そっちが本物!

 尻尾の端に、コアの反応があるの!」


「コアってもしかして、あの目玉のような――」


「そう、それ!

 たぶん、それを壊せばもう分裂しないと思う!」


「わかりました!」


 その会話に反応したかの様に、ジャイアントセンチピードは後退し、二人から距離を取り始めた。

 触角を鎌のように構え、更に顎肢がくしを肥大化させた。

 その様相は、まるで頭から四本の腕が生えているように見える。


 鎌首をもたげ威嚇しながらも、ジャイアントセンチピードは廃墟の中に後退するような動きを見せ始めた。


「お待たせしました」


 アンナウィザードが駆けつけ、ようやく一対三の状態にまで持ち込む。

 

「ウィザード、お疲……あーっ!」


 一瞬の隙を突くように、ジャイアントセンチピードは廃墟内に向かって逃走し始めた。

 アンナミスティックの叫び声に反応するように、滞空中のウィザードロッドが、また自動的にマジカルショットを撃つ。

 しかし、僅かにタイミングが合わず、中に逃げ込まれてしまった。


「早く、追わなきゃ!」


「あのXENOは、このままこの空間に閉じ込めておけばいいのではないでしょうか?」


 アンナローグの発言に、二人は首を横に振る。


「それは駄目なんだよ。

 パワージグラットは時間制限があって、それを超えると元の世界に戻されちゃうの」


「えっ?! それはXENOも含めてなのですか?」


「元の世界から転送された対象は、全て該当します。

 ですから、この世界にいるうちに倒さなければならないのです」


「じゃあ、今もし逃がしたら――たたた、大変なことになるじゃないですか!」


「そうです。

 制限時間は、最大でも一時間。

 急ぎましょう、追いますよ」


「は、はい!」


「おっけー!」


 アンナウィザードの指示で、二人は廃墟への突入を開始することにした。


 ――だが彼女達は、現実世界で起きている事態を、まだ知らない。





「くそっ! こんだけやっても這い上がって来やがる!

 なんてしぶとさだ!」


 ナイトウィングは、民家のない地区への移動を図りつつ、ワーベアがキャノピーまで登って来ないよう、揺さぶりをかけていた。

 だが、何度もずり落ちながらも、ワーベアは決して落ちようとしない。

 その眼には、凶悪なほどの殺意が感じ取れる。

 コクピット内のありさと未来は、青ざめながらその様子をただ見つめるしかなかった。


「どうすんだよこれ!! 絶体絶命じゃん?!」


「そうね。

 このままじゃ、ナイトウィングも攻撃が出来ない。

 アンナユニットは使えないし、あの三人も戻って来ない。

 かなり追い詰められてるわね」


「そんな冷静に言うなぁ~!」


 慌てふためくありさと、このような事態でも冷静さを維持しようとする未来。

 その対極とも云える様子に、凱は、「なんだかんだで良いコンビだな」と少しだけ考えた。


(――コンビ?)


 ふと、凱の脳裏に何かが閃いた。


「ナイトシェイド! 勇次に繋いでくれ」


『了解――チャンネル接続』


 機内に響くナイトシェイドのナビゲートボイスに続き、勇次の声が聞こえてくる。


『凱! 大丈夫か!?』


「勇次、ちょっと確認したい事がある」


『こんな時に、なんだ?!』


 状況をモニタリングしていたようで、勇次の声もかなり焦っている。

 しかし、そんな彼の態度が、逆に凱に冷静さを取り戻させた。


「未来の実装についてだが、失敗した理由は、もう分析出来たのか?」


『ああ、今川が仮眠室に居たのでな。

 叩き起こして今解析させているが――』


「今川に伝えてくれ。

 “クロス・チャージング”なら、どうかってな」


 その凱の言葉に、勇次だけでなく、未来も声を上げて反応した。


『何を言ってる?! 向ヶ丘の実装コードは“チャージアップ”だ!』


「そうです、凱さん! こんな時に何を」


「そんな事は承知の上だ。

 未来のユニットがそれで実装出来なくなったってんなら、その辺りの情報が書き換えられたんじゃないかって思ったんだ。

 あの、謎のアップデートでな」


『……馬鹿げた話だ。

 クロス・チャージングは、双子である相模姉妹だからこその』


 愚痴るような口調で呟く勇次の言葉を遮り、凱は尚も続ける。


「そもそもなんで、パイロットが二人同時に実装する必要があるんだ?

 愛美ちゃんみたいに、全員個別に実装すりゃあいいだけの話だろ。

 だが、わざわざそう設定されてるってことは」


「仙川博士には、何かしらの意図があった、と――」


「わわわ! おいい! 熊野郎、また登ってきたぁ!!」


 状況を再分析している状況ではない。

 このままでは、ワーベアの襲撃でコクピットが破損し、乗っている者達に被害が及ぶ。


「くそっ!」


 凱は、ペダルを踏み込んで機体を急加速させた。


「み、未来! その、くろすちゃーじんぐって、なんだ?!」


「舞衣とメグが実装する時のコードよ。

 二人同時に、気持ちを揃えて唱える必要があるんだけど」


「やるぞ」


「は?」


「だから、そのクロス・チャージングってヤツをさ。

 あたし達でな!」


 そう言いながら、ありさは自分の左手首に装着しているサークレットを突き出した。


「な、何を言い出すのよ!?」


 突然のありさの提案に、未来が珍しく動揺する。

 だが、今はありさの方が冷静のようだ。


「だったら、試しにやってみりゃあいいじゃねぁか。

 このままだと、あたしら全員死んじまうかもしれないんだよ!」


「ほ、本気で言ってるのか、ありさちゃん?!」


「ここまで来て、四の五の言ってる場合じゃないじゃん!

 一か八か、でやるしかないよ!」


「……一理あるかもしれんな」


 サブモニタに表示されている周辺マップで、ナイトウィングが民家の全くないエリアまで到達したことを確認すると、凱は、機体を豪快に横倒しにした。

 あと数センチでキャノピーの爪が当たる、というところで、ワーベアの身体はずるずると滑り出した。


「うわぁっ?!」


「……っ!」


「未来、ありさちゃん!

 俺からは、これ以上、何も言うことは出来ない。

 後は、二人で決めるんだ!」


 益々、機体は傾いていく。

 ワーベアが落下するのも、時間の問題だ。

 凱の意図は、二人にも伝わっている。



 ありさと未来は、まるで睨みつけるか如き険しい表情で、お互いの顔を見つめ合った。

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