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美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第3章 第四・第五のアンナユニット編
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 第23話【混戦】2/4


 パワージグラットで戦闘空間を隔離されたため、ありさは、車内に一人だけ取り残される形となった。

 辺りが突然静かになったので、恐る恐る窓から外を見る。

 バケモノの姿も、アンナローグの姿も、そこにはなかった。


「あれ? 何処行ったんだろう?」


 恐る恐る車から出て、廃墟の庭を見回すが、まるで何事もなかったかのように周囲は静まり返っている。

 ありさは、軽くストレッチをすると、ぼんやりと暗闇の中の廃墟を見つめた。


「夢、見てたわけじゃないよなあ。

 何だったんだ? さっきのは」


 車から出て、廃墟の中の様子を窺おうとする。

 ありさは、自分を拉致した男達の顛末をまだ知らない。

 そもそも、ここで今何が起きてどうなっているのか、全くわかっていないのだ。


(異様に静かだな。

 アイツら、やっぱXENOに襲われちゃったのかな?)


 無意識に、廃墟の一階を覗こうと近付く。

 だがその時、奥の方で、何かが動くような音がした。


(やっべ! やっぱり他の奴もまだ居るんだ?!)


 ありさは、大慌てで車に戻ろうとする。

 だがその時、突然巨大な何かが、近くの空き地に降り立った。

 直前まで全く気づけなかったが、それは小型の飛行機のように見えた。


 キャノピーを開け、中から降り立った人物は、大きな胸を震わせながらありさの許へ近づいてきた。


「うわっ!

 なんだ、最近は宇宙人も巨乳なんかよ! なんて世の中だ!!」


「何バカなこと言ってんの!

 ありさ、大丈夫?! 怪我はない?」


「未来にそっくりな宇宙人さんが、未来みたいな声で喋ってる」


「ずいぶん、余裕があるじゃない」


「つか、なんであんたまでここに居るんだよ!

 アンナユニットはどうしたん? あの、ごっつカッコイイロボットは?」


「それが――」


 そこまで話した時、バキッ、という大きな音が廃墟の中から聞こえてきた。

 更に、唸り声のようなものまで。


「そうだ! まだ中になんか居るんだわ!」


「待って、アンナロ……愛美達は?」


「さっき来たけど、いきなり居なくなったんだよ。

 しかも、変なコスプレしててさぁ」


「まさか……」


 後部ドアが開きっ放しの車を見て、即座に事態を理解した未来は、ありさの手を掴んだ。


「逃げるわよ、こっちに来て!」


「え、え、ちょ、あんた、アンナユニットに乗らないの?」


「そんなことより、あっちへ!」


「ひぃ」


 ナイトウィングの方へ走り出そうとした瞬間、遂に、唸り声の「主」が姿を現した。

 暗闇のせいでおおまかなシルエットくらいしかわからないが、その身長は軽く3メートル以上はあり、体格も相当大きい。

 何処かの光が反射したのか、一瞬、鋭く凶暴な眼が輝いて見えた。


「うわ、何これ?!」


「まずいわ! 早く、ナイトウィングに!」


「わわっ! 押すな!」


 ありさと未来が走り出したのと同時に、巨大な影も動き出した。

 その巨体からは想像も出来ないような俊敏さで、一気に距離を詰めてくる。

 振りかぶった両腕が、二人に襲い掛かろうとした瞬間、爆発音が二回鳴り響いた。


「早くしろ!」


 前方で、凱がブラスターキャノンを構えている。

 続け様に、更に数発撃ち込むが、巨体は少しよろめくだけで、倒れようともしない。

 銃の側面に収納されていた小型モニタが展開し、「CAULKING SHOT」と表示される。

 レーザーサイトを巨体の足元に向け、凱は更に発砲した。

 先ほどまでとは異なる射撃音が鳴り響き、何かが割れるような音が聞こえた。


 グオォォォォォ――!


 唸り声が、叫び声に変化する。

 炸裂した弾丸から噴き出した特殊コーキング材が、瞬間硬化して周辺一体を石のように固める。

 突然動きが止まった巨体をよそに、ありさ達はなんとか凱の許へ辿り着いた。


「パワージグラットのユーティリティで捕捉出来なかったのか」


「どうします?! 三人はたぶん、この個体の存在に気付いてないですよ」


「放置は出来んな。どうしたもんか」


「どどど、どうすんのよ?!」


 メンバー輸送用の用途もあるナイトウィングのコクピットは、三名以上の搭乗が可能になっている。

 三人が乗り込んだ時点で、何かが砕け散るような音が響く。

 巨体の脚を拘束していたコーキング材が早くも砕かれたのだ。

 再び叫び声を上げると、巨体はまたも素早い動きでナイトウィングに迫る。


「思ってた以上にパワーあるな」


 急いで離陸しようとしたが、それより早く、本体側面部を掴まれてしまう。

 一瞬、機体が大きく左に傾いた。


「ひえええ! アイツ、這い上がって来ようとしてる!」


「凱さん?!」


「く……!」


 機内の照明で、ようやく巨体の姿が見えた。

 それは「熊」――人間の身体を持った、巨大な黒い熊だった。

 爛々と輝く眼は、獲物であるありさ達をしっかり捉えている。

 両手は、人間の手に熊の爪を付けたような凶悪な形状であり、物凄い力でナイトウィングにしがみ付いているようだ。


 アンナユニットの滞空システム「フォトンドライブ」。

 一部に重力遮断効果を発生させ、対象範囲内の物体を浮遊させる効果があるが、このナイトウィングも同様のシステムで稼動している。

 その為、多少重量負荷が増えても浮上は可能だが、問題はその後だ。


「近くには普通の民家もある!

 こいつを振り落とすことは出来ないぞ!」


「じゃあ、いったいどうすれば?!」


「ちっ! なんだよそれ!

 今日は祟られてんのか、あたし?!」


 グルルルルル……


 徐々に、熊型のバケモノは操縦席に迫ってくる。

 対策が思い浮かばないまま、ナイトウィングは数メートルの高さでホバリングし続けるしかなかった。


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