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美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第3章 第四・第五のアンナユニット編
61/226

●第23話【混戦】1/4


「それより、あなたは一刻も早く現場に向かって」


「はい! それでは、お先に失礼いたします!」


 そう返答すると、愛美はまるでミサイルのような勢いで、夜空の彼方へと飛んでいった。



『アンナローグ! 石川ありさの位置情報を送信した!

 AIに誘導させる! とにかく全力で飛べ!』


「はい、わかりました!」


 勇次の声の後に、何かAIからのメッセージが表示され、視界の左端にマップのようなものが表示される。

 だが、細かい情報をゆっくり見ている余裕はない。

 勇次の言葉通り、アンナローグの性能を信じて、目的地まで全力で飛翔することにした。


(何か、物凄く嫌な予感がするの!

 お願い、アンナローグ! 一番早いスピードを出してっ!)


 愛美の思念を捉えたかのように、アンナローグはどんどん加速していく。

 ドンッ! という音と共に、アンナローグは錐状の雲をまとい、突き破った。


 俗に「ベイパーコーン」と呼ばれる現象だが、アンナローグはそれを断続的に発生させながら、更なる高々度を目指した。






『お姉ちゃん! 何か飛んでくる!』


 アンナミスティックの通信が入った途端、遠方で、大砲のような大きな音が鳴り響いた。


『今のは!?』


『わ、わかんない!

 もしかして、ローグかパラディン?』


 アンナウィザードとミスティックが、困惑する。

 自分たちよりかなり後に発進した筈のアンナユニットが、猛スピードで追い抜いたのだ。

 まだ遠距離高速飛行に慣れていない二人は、慌てて“先行者”の後を追うことにした。





 美神戦隊アンナセイヴァー


 第23話 【混戦】




「ありささぁぁぁぁぁぁんっ!!」




 超高速で飛翔中のアンナローグは、数百メートル先の地点から、ありさの姿を捕捉した。

 それはまるで、急速落下しながら獲物を捕らえる隼の如く。

 その瞬間、アンナローグの頭部に結ばれている四本のリボンが、突然伸び始めた。


 四本が横並びになり、ありさの全身を覆うように伸び、落下速度に合わせて揺れる。


 どさっ、という音がして、ありさの身体は、地上ぎりぎりの高さで受け止められた。

 リボンは巧みに伸縮し、アンナローグの加速に影響されないよう、ありさの身体を保護し続けている。


「そ、その声、愛美?」


「はい、良かった、ご無事で!」


 彼女の身体を優しく抱き上げると、アンナローグはようやく安堵の表情を浮かべた。


「あんた何その格好?! 何かのコスプレ?」


 はにかみながら、ありさが腕の中で呟く。

 そんな彼女をゆっくり下ろしながら、ローグは首を振った。


「これが、私のアンナユニット――アンナローグです」


「え、これが?

 だって、アンナユニットってあのロボットのことじゃ……」


「その話は、後ほど。

 それよりありささん、なんでこんなところに?」


「ああ、前にあんたを襲った連中に捕まって、拉致られたんだよ」


「ええっ?!」


 そう言いながらタウンエースを指差そうとして、ようやく自分の状況を思い出す。


「そ、そうだ! それより愛美、これ切れる?

 指と足、縛られてるんだ!」


「えっ?! は、はい! わかりました」


 アンナローグは左上腕の腕輪を外し、アサルトダガーに変形させる。

 一瞬鋭い閃光が迸り、ありさは反射的に目を閉じた。

 ダガーの刃を軽く当てただけで、インシュロックは簡単に切れてしまった。


 ようやく開放されたありさは、数回その場で飛び跳ねると、思い出したように二階の窓を指差した。


「愛美! 二階にバケモノが二匹いる!

 たぶんXENOって奴じゃないかな!」


「えっ?!」


「アイツらが変身したんだ!

 いや、変身つーか、化けたというか」


 ありさが指差したのとほぼ同時に、二階の窓から奇妙な影が覗く。

 人間の頭部のような、そうでないような、なんとも言い難い異形のシルエット。

 それが、小刻みに蠢いてこちらを見ているように感じる。


「ありささん! まずは避難を!」


「って、何処に?!

 つかあんた、その格好でどうしようっての?」


「えっと……ありささんを守ります!

 XENOから!」


「ちょ、ま、本気で言ってるの?

 そんなコスプレでいったいどうやって――」


 そう言いながらアンナローグの肩に手を置いたありさは、すぐに手を引っ込めた。


「冷たっ! ってか、硬っ?!」


 アンナローグは、白いブラウスにピンク色のエプロンドレスをまとっているような姿をしている。

 どう見てもその姿はカラフルなメイド服であり、衣装も布のような質感を覚えさせ、しかも裾や袖は動きに合わせてたなびいてまでいる。

 だが、実際に手で触れると、それは布地ではなく――鋼鉄のような硬度のある「塊」なのだ。

 凄まじく密度の高い鋼の塊に触れたような感触に、ありさはこれ以上ないほどに混乱した。


「その車の中に、入れますか?」


「うえ、この中、あんまり入りたくないんだけどなあ」


「今は少し我慢してくださいね」


「ううう……しょうがないかぁ」


 ぶつぶつ言いながら車の後部座席に乗り込むありさと、それを守るように立つアンナローグ。

 やがて、二階の窓から巨大な影がずるりと這い出してきた。

 

 壁を伝い最初に降りて来たのは、ドス黒い外殻を持つ「ムカデ」のような者。

 その後に、素早い動きで「ゴキブリ」のような姿の異形が現れた。

 

「うっ……」


 ムカデ型のバケモノは、尻尾の辺りに人間時の衣服の一部を絡み付かせており、ゴキブリ型の方は、まだ人間の身体のパーツが部分的に付着したままだ。

 アンナローグには、その意味が咄嗟に理解出来なかったが、犠牲者が出ている事だけは即座に判断した。


 アサルトダガーを構えたところで、上空からジェット機のような飛行音が聞こえてきた。


「遅くなりました!」


「おまたせー!

 パワー・ジグラット!!」


 姉妹の声――アンナウィザードと、アンナミスティックだ。

 周囲が薄蒼色のヴェールに包まれる。


“Power ziggurat, success.  

Areas within a radius of 500 meters have been isolated in Phase-shifted dimensions.”


 青白く輝く塔のようなものが、一瞬夜空に浮かび上がる。

 



 

「凱さん、あれは」


「ああ、パワージグラットだ。

 舞衣と恵が到着したようだな」


 二人は、遠方に見えた「塔」に反応する。


 漆黒のボディ、鋭く尖った機首、三角形を思わせるシルエット。

 赤く光る衝突防止灯と、刃のような主翼に輝く二色の航空灯。

 まるで大空を「滑る」ように飛ぶ小型機「ナイトウィング」は、殆ど飛行音を立てることなく、現場へ向かっていた。


 凱の駆る「ナイトウィング」に搭乗した未来は、思わず外の景色を見回した。


「未来、戦闘空間が無事隔離された前提で接近、着陸する。

 ありさちゃんを発見次第、保護して離脱する。いいな?」


「……」


「未来?」


「あ、はい」


「じゃあ行くぞ。

 ――ナイトシェイド、周囲分析。なるべく近い着陸地点を指示してくれ」


『了解』


 機内に、女性のナビゲートボイスが響く。

 ナイトウィングは速度を落とし、廃墟へと向かう。

 未来は、どこか浮かない表情で、前シートに座っている凱の様子を見続けていた。

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