表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第3章 第四・第五のアンナユニット編
60/226

 第22話【監禁】3/3


 

「ありささんが?」


「たたた、大変だよ!

 お姉ちゃん、すぐ実装して向かわなきゃ!」


「お兄様、私達はすぐに向かいます! 後から来てください」


 凱の報告を受け、SVアークプレイスの寝室で休んでいた相模姉妹は、すぐに準備を始めた。

 ベランダに出て、二人同時に叫ぶ。


「「 コード・シフト!

 クロス・チャージング!! 」」


 叫ぶが早いか、二人はそのまま揃ってベランダジャンプする。

 空中で光の竜巻を起こし、落下するよりも早く実装を終え青と緑のコスチューム姿になると、アンナウィザードとアンナミスティックは、凄まじいスピードで夜空の彼方へと飛び去っていった。


 それを別室のベランダから見守った凱は、愛美と未来にも連絡した。




 同じ頃、東京湾・第二海堡の一角から、漆黒の飛行物体が離陸した。




「ええっ?! ありささんが?」


「ありさが? それは本当ですか?!」


 凱からの通信を受けた愛美と未来は、それぞれ別の場所で同じ連絡を受けていた。


『間違いない。

 なんでそんな遠くに居るのかは分からないが、起動コードが唱えられたということは、XENOに襲撃を受けているか、それに近い深刻な事態に巻き込まれてる可能性が高い。

 愛美ちゃん、未来、行ってくれるか?』


「はい、わかりました! 何処へ行けばいいか、教えてください!」


「すぐに、実装して向かいます」


 愛美は即答し、ペンダント(サークレット)を握り締めると、すぐに部屋を飛び出した。


 一瞬躊躇う気持ちも生じたが、今はそれどころではない。

 未来も、パジャマもそのままに部屋を出て、屋上へ向かう。

 彼女も愛美同様にSVアークプレイス内に住んでおり、不意の出動にも対応できるよう、部屋も最上階に位置している。

 愛美も、ほぼ同時に駆けつけた。

 お互いの目が合う。


「愛美。

 あなた、XENOとの闘いを辞めたいって言ってた筈よね。

 それなのに、どうして?」


 未来の質問に、愛美は、自分でもびっくりするくらいの速さで即答した。


「自分でも、まだ良くわかっていません。

 でも、今は! ありささんを助けたいんです!

 その気持ちだけなんです!」


「――わかった。

 一緒に行きましょう」


「は、はい!」


 未来はサークレットで屋上の鍵を開け、愛美と共に屋上へ出た。

 二人で、同時に夜空を見上げる。


 愛美はサークレットを両手で包み、未来は、眼鏡のブリッジに指を添えた。


「「 コード・シフト!! 」」


 相模姉妹のように、二人の声が綺麗に重なる。

 愛美のサークレットの宝石内に、光のラインが生じ模様を描き出す。

 そして未来のサークレットは、フードが開き内部のメカに光が灯った。


 再び、二人の声が重なる。


「「 チャージ・アーップ!! 」」



“Switch the system to fully release the original specifications.

 Each part functions normally, and the support AI system is all green.

 Reboot the system.


 ANX-06R ANNA-ROGUE, READY.”



 光のつむじ風を巻き上げ、愛美は一瞬にしてアンナローグの姿になった。


 だが――




“Only one voice key and pilot coordinates can be authenticated.

Please perform code authentication with two members.

INNER-FRAME cannot be formed.

Aborts the transfer and implementation mode of ANNA-UNIT.”



「えっ?!」


 未来の周囲に一瞬形成されかけた光の竜巻は途中で消え、サークレットのフードは自動的に閉じてしまった。

 実装が、行われない。

 アンナユニットが転送されることはなく、未来がただ一人佇んでいるだけだ。


「どういうこと?! 実装出来ない?」


 予想外の事態は、未来の冷静な思考すらも奪い取ってしまう。


「未来さん?! どうなさったのですか?」


「わからないけど、何故か実装出来なくなってるらしいわ。

 よりによって、こんな時に」


 冷静な口調ではあったが、驚愕と悔しさの入り交じった、複雑な表情を浮かべる。

 だが、未来は頭を振ると、無理矢理いつもの思考に切り替えた。


「ひとまず、私のことはいいわ。

 それより、あなたは一刻も早く現場に向かって」


「はい! それでは、お先に失礼いたします!」


 そう返答すると、愛美はまるでミサイルのような勢いで、夜空の彼方へと飛んでいった。

 

「なぜ、一度は成功した実装が出来なかったの? どうして……」


 思わず左手首のサークレットを見つめるが、今はそれどころではないという気持ちが、先んじる。

 未来は、すぐに凱に連絡した。


「凱さん、アンナパラディンの実装に失敗しました。

 愛美は向かいましたが、このままでは、私は現場に行けません。

 どうすればいいでしょう?」


 サークレット越しに呼びかける。

 しばらくの間を置き、返答が来た。


『ナイトウィングで、マンションの屋上に向かうから、お前も乗り込め。

 勇次のヤツに、状況を確認してもらう』


「わかりました。

 ――あ、それじゃあ」


 未来は、踵を返してマンションの中へ戻る。

 移動しながら、更に話しかけた。


「着替えますので、数分だけ時間をください」


 




 廃墟の二階。

 階段を上って来た者が、いよいよその姿を現した。


「う……っ」


 上がって来たのは、二人の男。

 一人は山高で、もう一人は先程彼を落としてしまった者。

 二人とも血の気のない顔で、身体中から血のようなものを流しつつ歩いている。

 その姿は、さながらゾンビそのものだ。

 声も出さず、動きも緩慢。

 だが、その後ろから更に何者かが上がってくる気配を感じる。


 ありさは、この状態で反撃する手段が何かないか、必死で思考を巡らせていた。


 二人の男は、窓際にいるありさを捕捉したようだ。

 まるで猛獣のような唸り声を上げながら、突然――四つんばいになった。


「え?! って、えええええぇぇぇぇぇぇ?!?!」


 バリ、バリ、という耳障りな音を立て、山高の背中から、何かが生えてきた。

 それはとても人間の身体に収まっていたとは思えない、昆虫の脚のようなものだ。

 それが六本、棘のようなものが生え、しかも黒光りしている。


 一方の後から上がって来た男は、突然首が外れ、胴体から脊髄のようなものがずるずると伸びて来た。

 そして、そこから無数の脚が生え始める。


「あ、あ、あ、あ……」


 人間だったものが、目の前で異形の生物に変化していく恐怖。

 さすがのありさも、あまりの恐怖に、声を上げることすら出来なかった。



(こ、これが、これが、XENO?!

 こ、こんなのから、どうやって逃げればいいってんだよ!)


 二人の男は――否、もはや男ではなく、巨大な黒い昆虫と胴長の節足動物に成り果てた「異形」は、先程までのスローモーな動きから一転。

 予想を覆す高速で、一気に距離を詰めて来た。

 カサカサカサ……という、硬いもので床を撫で回すような不快な音が木霊する。

 もう、一刻の猶予もない。


「くそぉっ!」


 一か八か。

 ありさは、全身のありったけの力を脚に集中させてジャンプする。

 そのまま身をよじり、なんと、窓ガラスを突き破って、そのまま下へ落下した。




 キラキラ舞い散るガラスの破片。

 それに包まれるように、ありさは頭から地面に向かって落ちていった。

 受身は、取れない。


(ああ……やっぱダメだったか)


 地面に叩きつけられるまでの、ほんの僅かな時間。

 ありさは、自らの死を覚悟した。







「ありささぁぁぁぁぁぁんっ!!」





 何処からともなく、まばゆい光の球が飛来する。

 それは物凄いスピードで、地面に激突する寸前だったありさを救い上げた。


「な、ま、愛美……?」



「はい、良かった、ご無事で!」



 全身に光の粒子をまとわせ、ありさを受け止めたのは、アンナローグだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ