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美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第3章 第四・第五のアンナユニット編
55/226

●第21話【意志】1/3

 

 ミーティングルームでの一時間以上に及ぶやりとりの末、愛美とありさは、勇次・今川・相模姉妹とそれなりに会話が弾むようになった。

 だが、ありさの抱く疑問は全て晴れたわけではない。

 XENOという危険な生命体と、その暗躍を知ってしまった以上、それと闘わされる者達が危険に晒される。

 それを容認して、あまつさえ戦闘を強要する“SAVE.”という組織に対する疑念は、未だに残っている。


 また愛美も、未来の本意を知りたいという気持ちは拭えずに居た。

 彼女と話すことで、XENOとの闘いにおける自身の考え方が、変わるような気がしたのだ。


 同時に、一度は拒絶したXENOとの闘いに対しての認識も、少しずつ変化し始めていることに、本人は気付いていなかった。



「ねーねー、ありささーん」


「何? えっとメグ、だっけ?」


「うん♪

 あのねぇ、メグ、やっぱりありささんとお友達になりたいのぉ。

 ねえ、ありさ“ちゃん”って呼んでもいい?」


「な、何だよそれ!」


「だぁーってぇ、さん付けだと、なんかよそよそしくって、お友達って感じがしないんだもーん」


「ったく、わーったわーった、好きにしな」


「やったー! じゃあ、今からありさちゃんって呼ぶね!

 あ~りさちゃん♪」


 そう言うと、恵は席を移動して、ありさの横に座った。

 彼女の腕に両手を絡ませ、まるで甘えるように身を寄せた。


「な、な、何なんだこの子はぁ?!」


「えへへ☆ にゃあにゃあ♪」


「申し訳ありません、メグちゃんは、誰とでも仲良くなりたがる子なんです」


「よ、幼稚園児並の積極性?!」


「メグちゃんは、元からそういう娘だから!」


「それで説明済んじゃうの?!」


 舞衣と今川が、フォローになってないフォローを放つ。

 困り顔ながらも恵を引き剥がせないありさを見て、愛美はクスクス微笑んだ。


「お前達、これから少し移動をして欲しい。

 地下迷宮ダンジョンへ向かう」


 突然、勇次が立ち上がり皆に告げる。

 その言葉に、全員の視線が勇次とありさの間を行き来した。


「あの、ありささん、問題ないのでしょうか?」


「大丈夫なの?」


「石川ありさ。

 お前は先程、愛美と向ヶ丘を逢わせる為に付き添ったと言ったな」


「ああ、そうだよ」


「ならば、これから行く場所を見ておくといい。

 その方が、向ヶ丘と愛美の話にも理解が及び易い筈だ」


「なんだかわかんないけど、あたしにも深淵を覗けって事か?」


「その通りだ。

 XENOと遭遇した時点で、もう運命は変わったと思った方がいい」


「へぇ、面白そうじゃん。

 いいよ、付き合ってやるさ」

 

 まるで喧嘩上等な雰囲気で、勇次に反応する。

 そのやるとりを見守っていた愛美と相模姉妹は、どこか不安そうな表情だ。


「だ、大丈夫でしょうか。なんだか不安です」


「ありさちゃん、アンナユニットに興味持ってたみたいだから、見たいってのもあるんじゃない?」


「だといいのですが……」





 美神戦隊アンナセイヴァー


 第21話 【意志】






 エレベーターからの移動で、勇次達六人は、早速地下迷宮ダンジョンへ移動した。


「うわおぉぉぉぉぉおおおおお!! 何これナニコレぇ♪

 すっげえぇぇぇぇ!! これ、映画のセットですか?! ねぇ、セット?!」


「落ち着いてください、ありささん!

 ここは、私達“SAVE.”の本拠地になります」


 舞衣の説明も、絶賛興奮状態の猛獣の耳には届かない。


「うええええええ! マンションの地下に、こんな巨大要塞とか!

 こんなん、男の魂揺さぶられまくりじゃん! ヤバいじゃん!!」


「ありささんは、女性じゃないですか」


「何言ってんだ愛美!

 たとえ女でも、心に男の魂は宿るものなんだ」


 鼻息をフンス! と吹かしながら、何故か胸を張る。

 愛美には到底理解出来ない論理だったが、その発言に、意外な人物が反応した。


「それ、わかります!

 熱き魂と正義の血潮が漲れば、そこに性別なんか関係ないんですよね!」


「おぉ?! なんだ、あんた意外に話せるね!」


 呼応したのは、まさかのまさかだった。


 相模舞衣。

 こちらも、鼻息をフンスフンスさせ、目に星がキラキラ煌いている。


「人知を超えたスーパーメカ! そしてロボット! 操縦!

 そして、基地!

 こんなん見せられたら、嫌でも燃えるってもんだわさ!」


「そうなんですよ、そうなんですよ!

 戦士が操縦するメカが変形、合体して、巨大な姿になって悪を討つ!

 これが、これこそが! 真理です!

 ああ、嬉しい! この想いを共有してくださる方が、こんなお傍におられるなんて!

 私、感激しています!」


「おお、心の友よっっ!」


「ありささんっ!!」


 ありさと舞衣は、熱い握手を「ガシッ!」という効果音付きで交わした。


「ま、舞衣……さん?」


「あっちゃ~、お姉ちゃんの悪い病気また出たぁ」


「ハハ……最近は発作出てなかったけど、やっぱ相変わらずだなぁ……ハハハ」


 呆れた目で見つめる恵と今川、そしてきょとんとする愛美。

 一番先を歩く勇次は、そもそも相手にすらしていなかった。


「おーい、次のエレベーター乗るから、おいでー」


 あ今川の呼びかけで、二人の戯れが強制停止させられる。


「愛美ちゃん、ありさちゃん、一緒に行こー!」


 恵に手を取られ、二人は次のエレベーターに乗る。

 これは、下層部に向かうためのもので、以前愛美も乗ったことがある。

 透明の壁の向こうに広がる広大な空間に目を奪われ、ありさは、まるで小学生のように夢中になった。



 しばらくして最下層部に降り立った一同は、アンナユニット五体が並ぶメカニックドックにやって来た。

 またも、ありさの目が恒星のように輝く。


「うっほー♪ やっべぇ! 巨大ロボが五体もあるぅ♪

 ねーねー、これ合体すんの? 合体すんの? ねぇねぇ!!」


 もはや完全に小学校低学年男子並の思考になっているありさは、勇次の袖を引っ張り尋ねる。


「合体なんかするわけがないだろう!」


「えー!

 今からでもいいから、巨大ロボに合体出来るように改造すりゃあいいじゃんかー」


「やってどうする!」


「なんでー! 巨大になった方が強いしカッコイイじゃん!」

「同感です! 実は私も、前から同じ事を思っていましたっ!」


 途中から、誰かが加わった。


「二人とも、妄想の中で好きなだけ合体させてろ!」


 呆れた勇次は、いまだに目をキラキラさせてる二人を、適当にあしらうことにした。


「ねー見て見てありさちゃん!

 こっちのね、緑のがメグの“アンナミスティック”なんだよー♪」


「え、メグの? ってことは」


「はい、こちらの青いラインの機体が、私の“アンナウィザード”です」


「魔法使い(ウィザード)? 女の子が乗るんなら、魔女ウィッチじゃなくて?」


「アンナウィザードという名称は、あくまで機体名だから」


「へ?」


「考えてみてよ。

 例えば女性パイロットが操縦していても、戦闘機自体の名前が変わるわけじゃないでしょ?

 そういうことだよ」


 ありさの疑問に、今川が「待ってました」とばかりに回答する。


「あー、そういうことか。完全に理解した」


「ほ、本当にわかった?」


「それであんた達も、未来みたいにこれに乗って操縦すんの?」


「ええ、そうです。

 愛美さんをはじめとして、私達二人、そして未来さんの四人が搭乗します」


「って、ロボット五体あるじゃん!

 もう一体は誰が乗るの?」


「ありさちゃん、乗ればー?」


 今川が、両手の人差し指でありさを指しながら呟く。


「え! マジで?!

 いいの? いいのぉ♪」


 まさかの超ノリノリに、愛美は「いいんですか?!」という顔を勇次達に向ける。

 その視線をわざとらしくかわすと、今川は赤色のラインが入った機体を紹介した。


「コイツの機体名は、ANX-05B“アンナブレイザー”」


「うお、なんか、すげぇかっこいい名前!」


搭乗者パイロットまだ決まってないから、ありさちゃん、乗りたきゃマジ乗ってもいいよぉ~」


「マ、マ、マジで?! うほほほほ♪

 乗ります! 乗らせて頂きまぁす!」


「え~っ? ありさちゃん、アンナユニットに乗るのぉ?

 わーい! 仲間が増えるね! やったぁ!」


 今川と恵の言葉に、ありさが顔面崩壊レベルでデレている。

 だがそんな彼女達の傍に、何者かが駆け寄ってきた。




「どういうことですか、これは?!」




 一同に緊張感を漲らせる、鋭い一喝。

 気付くと、いつの間にか戻っていた向ヶ丘未来が、憤怒の表情でありさ達を睨みつけていた。

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