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美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第3章 第四・第五のアンナユニット編
52/226

●第20話【策略】1/3




 美神戦隊アンナセイヴァー


 第20話 【策略】




 愛美がSVアークプレイスに辿り着いたのは、午前11時半頃だった。

 二日前まで居たはずなのに、何故かもっと長い時間が経ったような感覚だ。

 愛美は、かつて舞衣や恵と共に立ち話をした場所まで行き、自分用の部屋がある棟を眺めた。


「ふえぇ、実際に来ると、想像してたよりずっとおっきいなあココ」


「本当ですよね、私もいまだに慣れません」


「んで、ここからどうやって未来に会いに行くの?」


「はい、この奥にあるエレベーターに乗りまして――」


 そう言いながら、入り口の自動ドアの前に立つ。

 ――が、ドアが開かない。


「あれ?」


「どうしたん?」


 ありさも前に出るが、やはり自動ドアが反応する様子がない。

 何度か通り過ぎたことがあり、明らかに自動ドアだということは分かっているのだが、故障でもしているのか、開く気配が全くない。

 途方に暮れた二人は、他に出入り口がないかと周辺を歩き回ってみた。

 だが、一箇所だけあったドアも含め、全く中に入れそうにない。

 十数分ほど悪戦苦闘した二人は、だんだん暑くなる気温のせいもあり、完全に諦めてしまった。


「ああわかった、ここ、あたしら貧乏人を拒絶してるんだ、そういうシステムなんだ」


「ど、どういう仕組みなんですかそれは?」


「わかんないけど、そうでもなきゃ入れない理由ないじゃん?」


「おかしいです、私はこれまでは普通に通れたのですが――」


 そこまで話していて、愛美はふと、ある事に気付いた。




『あ、でもね。

 ここに居る間は、これは絶対に身に付けておいてね』


『え? これをですか?』


『これは、“パーソナルユニット”という物です』


『うん、これを持ってないと、このマンションに入れないんだよ』




「あ――っ!」


 突然叫び出した愛美に、ありさはビビってズッこけた。


「な、な、なんだぁ?!」


「パーソナルユニット! あれがないからです!」


「ぱぱぱ、ぱーしゃる?」


「パーソナルユニットです!

 ここに出入りする時に必要になるものなんです」


 もう二度とここに戻らないつもりだったので、部屋に置いて来たペンダント。

 あれがないので、自動ドアが開かないのだ。

 否、仮に持っていたとしても、パーソナルユニットを与えられていないありさまで中に入ることは出来ない可能性が高い。

 愛美は、完全にど忘れしていた自身を猛烈に恥じた。


「んじゃあ何? 全くの無駄足だったってこと?」


「は、はい……申し訳ありません」


「ふえぇ、そりゃあないよぉ~」


 季節外れの炎天下の中、頑張って歩いてきた二人は、精魂尽き果てて近くにベンチに座り込んだ。

 さすがに、次にどうしようという考えすら浮かんでこない。

 言葉も失い、途方に暮れていた頃、何者かが近付いてきた。


「おっ♪ 愛美ちゃんだ」


「えっ?」

「ん?」


 そこには、二十代前半くらいの少々チャラい見た目の、細身の男性が佇んでいた。


「やーっと逢えたね、どもども、おはでーす」


「愛美、知り合い?」


「い、いえ、初対面です」


 やたら沢山の紙袋が詰まったポリ袋を提げたその男性は、どこかで嗅いだ記憶のある匂いを漂わせながら、笑顔で見下ろしてくる。

 その首下に着けた金のネックレスが、とても目立つ。

 愛美は、初めて出会った時の凱の喋り方が、こんな感じだったなと思い返した。


「どしたの? 中に入れないの?」


「そ、そうですけど」


「あそっか、パーソナルユニット置いていっちゃったんだもんね!

 そうかそうか、そうだったね!」


「パーソナルユニットのこと、ご存知なんですか?!」


 思わず立ち上がり、男性に尋ねる。

 一瞬気圧されたものの、男性はまた笑顔に戻った。


「そりゃあ、オレも“SAVE.”の一員だからね☆」


「え? じゃあ」


「もしかして、ここに入れるのですか?」


「そうだよ、今ね、朝飯買って来たとこなんだ。

 これから地下迷宮ダンジョン戻るよ!」


「だ、だんじょん……? なんかのゲームの話?」


地下迷宮ダンジョン! ほ、本当ですか!

 って、貴方はいったい?」


 いぶかしげに見つめるありさと、目を剥いて関心を寄せる愛美。

 そんな二人に、男性は胸元のネックレスを指で軽く摘みながら応えた。


「オレ、今川義元いまがわ あきちか

 よろしくぅ! あ、んで、君は?」


 男性は、手に持つ袋を少し突き出すようにして、ありさを指す。

 怪訝そうな表情のありさを横目に、愛美が代わりに紹介した。


「この方は、石川ありささんです。

 私が外に出ている間、色々助けてくださったんです」


「石川……ありさ、さん? 君が?」


「あたしのこと、知ってるの? あんた」


「いやぁ、素敵な名前だなあと思ってさ☆」


「うわぁ~、軽っ」


「まあまあ、とりあえずこれからよろしくっす!

 愛美ちゃん、ありさちゃん!」


「はい、よろしくお願いします!」




 数分後。

 今川と名乗る男性が、何者かとスマホで会話した後、ひとまずミーティングルームまで入場してOKということになった。

 特別許可ということで、今川のパーソナルユニットによる開錠で二人の少女は入場が許された。

 愛美は、自分の部屋ではなく、他のメンバーと集まる為の部屋へと向かっていく。

 その途中、挙動不審な人物が、背後からゆっくりと付いて来ていた。


「ね、ねえ、愛美?」


「どうしました、ありささん?」


「何なんココ? 想像以上に超高級マンションじゃん?

 アンタ、本当にここに住んでたの?」


「住んでいたといいますか……

 一週間ちょっとくらい滞在しただけなんですけど」


「あ、ああ、そう。

 いくらくらいするんだろ、ここ?!」


 挙動不審な人物は、おどおどしながら、辺りをきょろきょろ見回しつつ、何故か忍び足で進んでいく。


 ようやく辿り着いたミーティングルームへ入り込むと、廊下の奥の方から、どたどたどたと大きな足音が響いて来た。


「愛美ちゃーん! わーん! 逢いたかったよぉー!!」


「ひえっ?! め、恵さん?!」


「ひっ、走る巨乳?!」


 大きな胸をぶるんぶるん豪快に揺すりながら飛び掛ってきたのは、恵だった。

 玄関に立つ愛美に抱きつくと、まるで甘えるように頬ずりをしてくる。


「もぉ、メグ、とっても心配したんだよ~! ぷんぷん!」


 頬をぷぅっと膨らませて怒りを表現するが、目が全然怒っていない。

 愛美は、そんな可愛らしい恵の仕草に、つい吹き出してしまった。


「も、申し訳ありません、恵さん」


「うん、もういいよぉ♪

 それより、お姉ちゃんも待ってるから、早く入ってね☆

 あ、それと――」


 愛美から離れると、恵はありさに向かって、深々と頭を下げた。


「初めましてぇ!

 私、相模恵って言います! メグって呼んでね♪」


「め、メグ?」


 恵は、ありさに向かって満面の笑顔と丁寧なお辞儀で挨拶した。

 ありさの目線が、大きな乳房の動きに連動し、上下する。

 顔を上げた恵は、彼女の顔を見て不思議そうに小首を傾げた。


「えっと、ところで、貴女は?」


「あたし、石川ありさ。

 この子が未来と話したいっていうから連れて来ただけだよ」


「未来ちゃんのお友達なの?

 わぁ~☆ じゃあ、メグともお友達になってぇ♪」


「ぬわっ?! な、何このノリ?!」


 いきなり手を取ってぶんぶん上下に振り出す恵に驚き、ありさは無理矢理手を振り解いた。


「な、何すんだいきなり?!」


「にゃあ!

 え~……ダメぇ?」


 恵の、少し寂しげに、それでいて媚びるような上目遣いに、ありさは一瞬ドキリとした。


「あ~、メグちゃん。

 詳しい話は、奥でまとめてしようか」


「は~い! よっしーさん!」


「ギロリ」


「じゃなかった! あ、あっきーさん☆」


 慌てて訂正する恵の態度に、愛美はようやく合点が行った。


「あっ! もしかして貴方が、あのあっきーさんなんですか?!

 初めまして! お噂はかねがね」


「そだよ! あー、メグちゃんから聞いてたんだね」


「はい、よくお名前を間違えられると」


「メグちゃん、ギロッ」


「きゃあ~♪ 許してぇ♪」


 わざとらしく怯える恵に、どこか楽しそうに対応する今川と、なんだかんだで溶け込んでいる愛美。

 その様子を見て、独り取り残されているありさは、わざとらしく咳払いを三連発した。


「あのさ、どうでもいいけど、未来のヤツは居る?」


「あ! 未来ちゃんはまだ来てないよっ」


「え! そうなんですか?

 もしかして、地下迷宮ダンジョンの方ですか?」


 驚く愛美とありさに、今川は少し困り顔で答えた。


「今、ちょっと外出してるみたいだよ、彼女。

 たぶん、もうすぐここに来ると思うから、中で待っててよ」


「だそうです。宜しいですか、ありささん?」


「え~っと……いいのかな、こんなとこにあたしみたいのが入って」


 マンションとは思えないくらい長い廊下を見つめ、ありさはため息を漏らした。


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