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美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第3章 第四・第五のアンナユニット編
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 第19話【思惑】2/3



 ゴクリと唾を飲み込み、凱は、耳を端末のスピーカーに近づけた。

 マウスがカチリと鳴り、未来が編集ファイルを展開する。






      マナミマナミマナミィィィ―――ッ!!






「な……に?!」


 凱は、思わずモニタから退いた。

 音声を再生した未来自身も、血の気が引いている。


「な、なんだこれ?!

 愛美ちゃんの……名前? 何故?!」


 凱の呟きに、未来は力なく頷く。


「わかりません。

 私も、初めてこれを聴いた時は、背筋が凍りました。

 眠れなくなった理由が、お分かりいただけますか?」


「こりゃあ、眠れなくなって当然だぜ」


 聞き違いの可能性を考え、凱はもう一度再生を頼む。

 だが、どう聴いても確かに「マナミ」と連呼しているようにしか聞こえない。


「XENOが通りすがりにたまたま聞いた、同名の別人の名前って可能性も……ないか」


「仮にそうだったとして、何故これが、ここでマナミという名前だけを連呼したのか。

 しかも、死の間際に――という、新たな疑問が湧きますね」


「ということは、XENOは、愛美ちゃんを知っている?」


 先程淹れたコーヒーに口をつけるのも忘れ、凱は、呆然と未来を見つめる。

 そして未来も、信じ難いものを見るような目で、モニタを見つめていた。


 即座に、思考を巡らせる。

 凱は、頭の中でこれまでの愛美の周辺で起きた事象を再考してみた。


 井村邸での、オーク。

 渋谷での、ジャイアントスパイダー。

 目黒公園での、ジャイアントラット。


 オークは、凱と夢乃、愛美を狙って追いかけてきた。

 ジャイアントスパイダーは、愛美が単独でパンケーキ屋に入り込んだ時点で、活動を開始して接近して来た。

 ジャイアントラットは、どうだったか。


「確か、いきなりお前達が居る所に向かってきたんだったな?」


「ええ、そうです。

 あまりにも唐突で、驚きました」


「そうか――」


 凱は、更に考えた。

 もし、最初のオークが、途中から追跡対象を自分達から愛美に切り替えたのだとしたら、自分達が追われることが途中からなくなった事も納得が行く。

 ジャイアントスパイダーは、愛美以外の者が立ち入っても同様の行動を取った可能性は否定出来ないが、ナイトシェイドのサーチによると、愛美に引き寄せられているような動きだったという解釈も可能ではあった。

 その上、他の犠牲者と同様の方法でアンナローグを捕らえた。


「ネズミ型のXENOは、あの時何か気になる行動を取らなかったか?

 愛美ちゃんに関連することで」


「そういえば、私が実装した直後ですけど。

 真正面にいる私を避けて、後ろに居るありさと愛美に向かって行こうとしてましたね」


 ジャイアントラットは、対峙した瞬間にアンナユニットを避け、その脇を通り抜けて愛美達に襲いかかろうとした。

 それを捉え、川まで放り投げた事から戦闘が始まったのだ。


「あの時のXENOは、一瞬私の方を見はしましたが、すぐに視線を逸らして私の背後に注視しました。

 なので、あの二人のどちらかか両方を襲おうとしたのは、疑いようがないですね」


「さすが、一瞬のことを良く覚えてるな」


 凱は、未来の高い記憶力を褒め称える。

 しかし、だとすると、やはりジャイアントラットも愛美を狙っていたと判断するのは妥当かもしれない。

 奇妙な形のパズルが、徐々に形になっていくような感覚を覚える。

 

「理屈は良く分からんが。

 XENOが、愛美ちゃんという存在に強く反応する可能性は、否定し難い……な」


「私も同感です。

 どうしましょう? 凱さん」


「――愛美ちゃんを、このままにしておくのは、危険だ」


 凱の言葉に、未来は強く頷いた。

 以前は、愛美の存在を否定するかのような反発的な態度だった筈の彼女が、なんだかんだで愛美の身を案じる。

 それこそが、昔から凱の知っている、向ヶ丘未来という少女の姿だ。


「愛美は、実装用端末サークレットも、携帯していません。

 第四のXENOに遭遇したら、身を守る術がありません」


「よし、早急に愛美ちゃんと合流して、サークレットを渡すんだ。

 未来、あの子の居場所はわかるんだよな?」


「ええ、私の――幼馴染のアパートに、居ると思われます」


「早速行こう。

 お前は、どうする?」


「私は――」


 冷めたコーヒーを一気に煽る凱から目を逸らし、未来は、一瞬考えるそぶりを見せる。


「ここで動いてこその、リーダーじゃないのか? 未来」


 凱の言葉に、未来はハッと顔を上げた。

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