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美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第3章 第四・第五のアンナユニット編
33/230

●第14話【前兆】1/3

「これが、君達が実装している“アンナユニット”の本体さ。

 ほら、その一番端にある黒い奴。

 それが、愛美ちゃんが搭乗している“アンナローグ”だよ」


「――えええええええっ?!」


 凱の説明に、愛美は思わず“アンナローグ”に駆け寄った。







 美神戦隊アンナセイヴァー


 第14話 【前兆】






 

「わ、私、これに乗って? たんですか?!」


「そう」


「全然、違う形じゃありませんか?!」


「普通そう思うよなあ。

 何でかわからないけど、実際に実装すると、これが愛美ちゃんそのものの形になっちゃうんだ」


「信じられません……私、こんな大きな機械の力で闘っていたなんて」


 凱は更に、青いラインの機体が舞衣、緑のものが恵のだと説明する。

 渋谷で見た、あのメイド服風のスタイルを思い浮かべて比較するが、どうしても同じものとは思えない。

 愛美は、「こういうのを、月とスッポンというのでしょうか?!」と、なんだか訳のわからない事を考えた。


「お前達、こっちに来い」


 不意に、勇次が呼びかける。

 アンナユニットの置かれた場所から更に奥まった場所にある、大きな広場。

 その端に、勇次と見慣れない人物が立っていた。

 自分よりかなり背が高い、眼鏡をかけた女性。

 凛としたその佇まいに、愛美は何故か、メイドをしていた頃に感じた緊張感を再び覚えた。


 その女性は、勇次と同じように、まるで睨みつけるような鋭い視線を向けて来た。

 無意識に、萎縮する。


「紹介しよう。

 こいつは向ヶ丘未来むこうがおか みき

 “SAVE.”実働班のリーダーだ」


「よろしく」


 勇次に紹介され、未来と呼ばれた女性が簡潔に挨拶する。

 

「は、初めまして!

 私、千葉愛美と申します!」


「知ってるわ」


「え? は、はあ」


 妙に冷たい物言いに、愛美は、初めて井村邸に上がった時のことを思い出した。

 間を取り持つように、勇次が説明を始める。


「向ヶ丘は、お前と同じアンナユニットのパイロットだ。

 ANX-04Pアンナパラディン。

 そこにある、オレンジの機体が彼女のものだ」


「ふえ……」


 勇次の指差す方向にあるのは、愛美の二つ隣にある、一回り大型の機体。

 愛美のアンナローグよりも大きく、がっしりした体型に分厚い装甲が特徴だ。

 こちらは、ちょっとしたトラック並の迫力がある。


「す、すごいですね」


「未来は、この機体が完成した直後から毎日ずっと訓練をしててな。

 このごっついのに乗った状態で、卵を潰さないで綺麗に割ることも出来るんだぜ」


「えっ?! あの大きな手で、ですか?!」


 凱の説明に、愛美はまたも目を剥いて驚いた。


「そんなこと、わざわざ言うほどのものじゃないわ」


「え? あ、はい」


 こほん、と軽く咳払いをすると、未来は無言で勇次を見つめ、何かを促した。


「向ヶ丘と、相模姉妹の二人、そして千葉愛美。

 この四人を、アンナユニットの実働部隊と定めたい。

 ――愛美、協力してくれるな」


 高圧的な口調で、勇次が問う。

 

「え?」


「実働班は、直接XENOとの戦闘を行うメンバーのことだ。

 この向ヶ丘を中心に、今後出没するXENOを捜索し、その討伐にあたって貰いたい」


「あ……」


 その言葉に、身体が硬直する。

 渋谷で見たあの陰惨な光景が、瞬時に脳裏に蘇る。

 愛美は、咄嗟に口元を手で覆った。


「お前の持つパーソナルユニット。

 それは全アンナユニットにとって、非常に重要な役割を果たす機器だ。

 だがそれは、お前にしか使うことが出来ない」


「……」


「更に、お前は二度の実戦を経験し、非常に重要なデータを収集した。

 これからも、我々と協力しあい、XENOと闘ってもらいたい」


「……」


 愛美の顔が、どんどん青ざめていく。

 膝が震え、指が痙攣する。

 その様子を、未来が訝しげに見つめていた。


「では、アンナユニットについて詳しく――」


「あ、あの!」


 愛美が、勇次の言葉を遮った。

 

「わたしは……

 あんなとんでもないものと闘うために、ここへ連れて来られたのですか?」

 

 まるで独り言の様に呟く。

 愛美は、呆然と自分の手を見つめたまま、僅かに身体を震わせた。


「いや、愛美ちゃん、それは……」


「そうよ」


 今度は、凱の言葉を未来が遮る。

 愛美は、自分に向けられる未来の厳しい視線に萎縮しながらも、更に話を続けた。


「やっぱり、そうなんですか。

 だから、舞衣さんも恵さんも、皆さんあんなに優しく……。

 あんな素敵なマンションを使わせて頂けたのも……」


「当然でしょう?

 シンデレラにでも、なったつもりでいたの?」


 その言葉に、愛美は愕然とした

 舞衣達とは違い、未来の態度には、愛美を優しく迎える温かさのようなものは、全く感じられない。

 この未来という女性は、まるで自分に敵意を抱いているようにすら思える。


「おい未来、それは言いすぎだろ」


「いえ、言われても仕方のないことです」


 凱の抗議を、視線の圧力で押し切る。


「そ……そうですよね。

 タダで、こんなに良くしていただくなんて、図々し過ぎますよね」


「そうよ、慈善事業じゃないんだから」


 眼鏡の向こうの鋭い眼差しが、愛美を更に射抜く。

 氷のように冷たい緊迫感が訪れる。


「そのくらいにしろ、未来」


 二人の間に割って入ると、凱が真っ向から未来を睨み返した。


「いくらXENOと闘ったっつったって、愛美ちゃんは全然事情を知らなかったんだぞ。

 それなのに、いきなりこんな事に巻き込まれたら、戸惑うのも当然だろうが」


 凱の叱責に、未来は口を噤む。

 しかし厳しい表情は和らがず、依然として愛美を睨みつけたままだ。


 重い溜息を吐き、凱は少し目線を下げると、愛美に正面から語りかけた。


「愛美ちゃん。

 こんな形になってしまったけど、君はXENOとの闘いにはどうしても必要な人なんだ」


「……」


「これは、命令や強制じゃない。

 俺達は、君の意志を確かめたいだけなんだ」


 両肩に優しく手を掛け、優しい微笑みを向ける。

 愛美は、そんな凱をチラリと見上げ、自信なさそうに頷いた。


「強制じゃない……か」


 ボソリと吐き捨てる様に、勇次が呟く。

 それに反応するように、未来は今度は勇次を睨みつけた。


 その途端、愛美は、突然その場でうずくまってしまった。


「お、おい、大丈夫か? 愛美ちゃん?!」


「う……」


「凄く顔色が悪いぞ?

 気分が悪いのか?!」


 凱が背をさすりながら、心配そうに声をかける。

 その様子に、勇次も少しうろたえ始めた。


「ど、どうしたんだ?」


「愛美ちゃん、もしかして、まだ――」


「彼女を上のフロアに。

 話は後にして、休ませましょう」


「そうだな」


 未来の指示に頷き、凱は愛美を支えて立ち上がる。

 青ざめた顔の愛美は、空ろな目で、前を歩く未来の後ろ姿を見つめた。

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