表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
第2章 アンナウィザード・ミスティック登場編
27/226

●第12話【現実】1/3



 美神戦隊アンナセイヴァー


 第12話 【現実】




 XENO“ジャイアントスパイダー”は、討伐された。

 だが、アンナローグ達のやるべきことは、まだ終わってない。



 アンナウィザードとミスティックの戦闘により、問題の雑居ビルは半分以上が崩壊し、その周辺の道路もそこら中が陥没またはひび割れが起こり、更には瓦礫やガラスの破片等が無数に飛び散っている。

 先程のパンケーキの店のものと思われる飾りやテーブル、また別の階のテナントにあったと思われる備品までもが、派手に散らばっている。

 とてもじゃないが、XENOに勝てたからと手放しで喜べるような状況ではない。

 しかし、これを仕掛けた当人達は、こんな惨状を全く気にしていない様子だ。

 さすがに、何か言わずには居れない。


「あ、あの!」


 千葉愛美――アンナローグは、二人に少し強めの声で呼びかけた。


「なに? ローグ」


「どうされましたか?」


「あの、いくらなんでも、こんなに街を破壊しては、いけないんじゃないでしょうか?!

 もし、近くに居た別の人が怪我をしたり、ここを通った車などが事故を起こしてしまったら、どうすればいいのでしょう?!」


 真剣に呼びかけるが、二人はちょっと困った顔を向き合わせるだけだ。

 やがて、相模恵――アンナミスティックが、マジカルロッドを呼ばれた武器をくるくる回し出す。

 一瞬閃光を放った後、それは小さく収縮し、またリングに戻って右の太ももに収まった。


「うん、じゃあ、そろそろ元に戻そうか」


「えっ? 戻す?」


「そうですね、でもその前に、あのビルの屋上まで移動しましょう。

 このままでは、目立ってしまいますから」


「さんせーい。

 じゃあローグ、あそこまで一緒に飛ぶよ!」


「え? あ、ちょ」


「ぴょーん☆」


 アンナミスティックに手を引かれ、アンナローグは、先程まであった雑居ビルの屋上まで飛び上がった。

 アンナウィザードも、その後を追ってくる。

 三人が揃った時点で、アンナミスティックは再び印を象った左手を虚空に翳す。



「ジグラット・オープン!」



 その言葉と共に、またも、周囲の景色が一瞬ブレたような気がした。

 途端に、周囲が急激に暗くなる。


「え? アレ?」


「ローグ、隣のビルを見てください」


「は、はい――って!

 えぇぇっ?! なんでぇ?!」


 アンナローグは、驚愕の声を上げた。


 なんと、先程の戦闘で吹き飛ばされた例の雑居ビルが、復元していた。

 見下ろしてみると、あれだけ破壊された道路すらも、まるで何事もなかったかのように元に戻っている。

 否、戻ったというよりも、むしろ最初から何も起きていないようにすら感じる。


 目が点になったアンナローグは、あまりの驚きに言葉を失った。


「ありゃ、絶句しちゃった。にゃはは♪」


「ぱ、ぱくぱくぱく」


「言葉が出ない状態?

 だよねー、普通驚くよね!」


「“パワージグラット”は、簡単に云うと、私達とXENOを巻き込んで戦闘用の空間を作り出す技術なんです」


「く、空間?

 ごめんなさい、益々意味が」


 アンナウィザードの説明でも、まだ理解が及ばない。

 そこに、アンナミスティックが補足する。


「えっとね、私も良く理解出来てないんだけど、ゆーじさんが言ってたよ。

 一時的にパラレルワールドに移動するんだって」


「ぱられり、わーるど?」


「パラレルワールド、です」


 アンナウィザードの説明は、こういうものだった。

 この宇宙には、「並行世界」と呼ばれる異世界が無数に存在している。

 通常、それぞれの世界は互いに干渉することはないが、時折何かの理由で接してしまい、おかしな現象が生じることがあるという。

 “パワージグラット”は、そういった並行世界と現実世界を、強制的に接続させる力を発揮するディメンションアクセスツールであり、これにより他者の干渉を避け、また周辺に悪影響を与えない環境を構成することが出来る。

 ただし効果範囲の設定が必要だったり、また巻き込める対象を選定しなければならず、他にも様々な条件があるという。

 これは、アンナミスティックだけに備えられた装備であり、他のアンナユニットでは使えない代物だそうだ。


「つ、つまり、何をやらかしても、現実には何も起きていないってことなんですか?!」


「そうです。凄い技術ですよね」


「ひ、ひえっ!

 でも、本当は何も壊れてないってことなんですよね?

 だから、お二人は全然慌ててなかったってことですよね?」


「そーだよぉ!

 初めてテストした時は、私達もびっくりしたけどねー」


「よ、よかったぁ! 安心しました!

 申し訳ありません! 先程は、言葉を荒げてしまいまして!」


 ようやく安堵したアンナローグは、またも秒速三回の速さで頭を下げ続けた。


「いいえ、ちゃんと説明出来なかった私達が悪いので」


「いえいえ! そんな事はございません!」


「いいえ、私達も」


 再び、頭下げバトルが勃発する。

 アンナミスティックがそれを制すると、改めて例の雑居ビルを指差した。


「それより、これからこのビルを調べるんだよね? ウィザード」


「ええ、そうです」


「あの、調べるって、何をですか?」


 アンナローグの疑問に、アンナウィザードは真剣な表情で返答する。


「人的被害の、確認です」


「じ、人的……?」


「あのお店の中、XENOに荒らされて酷いことになっていたでしょ?

 三日前の看板が片付けられてなかったってことは、三日前にここに居た人達が全員被害に遭った可能性があるんだよ」


「え……」


 アンナミスティックの言葉に、アンナローグは言葉を詰まらせる。

 店内で見かけた、中身の散らばったハンドバッグのことが、頭に思い浮かぶ。


「ローグは、店内に居たでしょ?

 どういう状況だった?」


「えっと、はい。

 中は――」


 アンナローグの説明を聞き、アンナウィザードとミスティックは、更に表情を引き締めた。






“Science Magic construction is ready.MAGIC-POD status is normal.

Execute science magic number M-005 "invisible-vision" from UNIT-LIBRARY.”


 アンナウィザードの科学魔法が、再び使われる。

 今度は、自分達に施す術のようだ。

 

「インヴィジブルビジョン」


 右人差し指と中指を立て、アンナミスティックとローグに指の腹を向ける。

 続けて、自分にもそれを行う。

 すると、不思議なことに三人の姿が、その場から忽然と消えた。


「ひえっ?! みみみ、見えなくなっちゃいましたよ?!

 舞衣さん、恵さーん?!」


「大丈夫ですよ、ローグ。

 AIが自動的に見えるように調整してくれますから、ちょっとだけ待ってください」


「それとね、ローグ!

 実装中は、お互いにコードネームで呼ばないとダメなんだよぉ」


「こ、コードネーム?」


「そうです。

 私はアンナウィザード、この子はアンナミスティック。

 下の名前で呼び合っております」


「そ、そうなんですか。

 それで、私は“ロープ”なんですね?」


「「 ロ ー グ ! 」」


「ひぇ?!」


 数秒後、アンナローグの視界に、二人の姿が映るようになった。

 しかし、何故か半透明。


「これは、どういう状態なのでしょう?」


「科学魔法で、私達全員に光学迷彩を施しました。

 今、この三人以外には、私達の姿は見えていない筈です」


「つまりぃ、とーめい人間だね!」


「ほぇぇ、す、凄いんですね!

 って、科学魔法?」


 科学的に様々な事象や効果を発揮し、これを戦闘や調査に転用する技術。

 それが「科学魔法」。

 これは、限られたユニットにのみ搭載された機能で、ここではアンナウィザードとミスティックだけが使用出来る。

 これは扱いが非常に難しく、使用にはある程度の熟練を要するため、舞衣と恵は数年単位での訓練を経て今に至っているという。


 そんな説明を受けたアンナローグは、「良く分からないけど、すごいことなんだ!」と、無理矢理納得することにした。


「なんだか、お二人は本当に魔法使いみたいですね!」


「えへへ☆ 本当は魔法でもなんでもないんだけどね!」


「さあ、それよりも早く調査を。

 恐らく、やがて誰かが気付いて警察を呼ぶかもしれませんから、それまでに撤収しないと」


「け、警察ですか?!」


 そう聞かされては、焦らずにいられない。

 アンナローグは、フンスと鼻息を荒げ、気合を込めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ