●第125話【義姉】
渋谷の空を駆け巡る、漆黒の小型飛行機。
そしてその後を追うように飛翔する、青と緑の光。
その軌跡を視界の端に捉えたアンナパラディンとブレイザーは、猛攻をかわしながらも少しだけ安堵した。
「よし、やっと来たかぁ!」
「頼んだわよ、ミスティック!!」
R渋谷駅の上空辺りに到着したところで、アンナミスティックが左腕を掲げる。
前腕の装甲が展開し、光が溢れる。
「行っくよぉ!
パワージグラットぉっ!!」
“Power ziggurat, success.
Areas within a radius of 5,000 meters have been isolated in Phase-shifted dimensions.
Checking the moving body reaction in the specified range.
--done.
Motion response outside the utility specification was not detected.”
一瞬青白い光に包まれた後、渋谷の街から人々の姿が消えた。
美神戦隊アンナセイヴァー
第125話【義姉】
視界が青白い光に包まれたと思った瞬間、突然、外の喧噪が途絶える。
パワージグラットが施工された事を察した司は、傍に立つ滝を見つめた。
「滝、一つ聞いていいか?」
「どうした司?」
不思議そうに振り返る滝に、司は酷く深刻そうな表情を向ける。
「お前、あの子とは初対面か?」
「うん? ああ、そうだが。
それがどうかしたか?」
「――いや、なんでもない」
何かを言いかけるが、あえて呑み込む。
破壊され煙が立ち上るビルの一角を眺めながら、司はとても無念そうに瞼を閉じた。
パワージグラットは、半径五キロという広大な異空間を確保し、そこに敵を含めた九体のアンナユニットを巻き込んだ。
人が居なくなった為、もう周囲への影響を気にする必要はない。
アンナパラディンとブレイザーの猛反撃が始まる。
「よっしゃあ行くぜぇ!! どりゃあっ!!」
先程以上に巨大な炎の塊を拳に宿し、アンナブレイザーのパンチが唸りを上げる。
『はぁっ!!』
その攻撃を左腕で見事に受け止め、即右腕で掴みにかかる。
だがアンナソニックの動きを待ち構えていたように、アンナブレイザーは彼女の腕を逆に掴み取った。
「おっしゃ、捕まえたぁ!」
『だから何よ』
「こうすんだよ!」
アンナブレイザーはその腕をいなし、勢いで前に出たソニックの背後に回り込んだ。
反撃されるよりも早く、両脇に腕を通してはがい締めにする。
まだ、拳の炎は消えていない。
『く、くそっ!!』
「お前らの防御力がどんだけ高まったのか、これで試してやるぜ!!」
そう言うと、アンナブレイザーはソニックを捕まえたまま急上昇し始めた。
『ぬうっ!? な、何するつもりよぉ?!』
「うるせぇ! 今考えてる!」
『な、何だってぇ?!』
「いいから黙って見てな!」
『ソニック!』
その状況を見て咄嗟に駆け寄ろうとするアンナジャスティスソードの頭上から、超振動の刃が踊りかかる。
「行かせないっ!!」
だがそれは、突如体を反転させたジャスティスソードの脚で防がれる。
足首周辺の赤い装甲が、ホイールブレードの剣戟をあっさりといなした。
と同時に、反対の脚から紫色の光が突然噴き出し、アンナパラディンの左側を掠める。
あまりにも意外な機転と身のこなしに、一瞬悪寒を覚える。
「これは……アルゴンガス・レーザーブレード?!」
『そうです。あなたと同じキックブレードを装備していますので』
「剣同士の闘いって、そういうのまで含まれるの?」
『そうなりますね。
元々この装備は、駒沢博士が開発し取り込まれた技術ですから』
「……」
その名前に、思わず表情が強張る。
既に分かっている事なのに、やはり現実の残酷さが心に響く。
「はぁっ!」
『ふっ!!』
全く同じタイミングで、両者が突進する。
一方、ソニックを捕まえたブレイザーは、
「でりゃああぁぁぁああ!!」
『な、ちょ?! うぎゃああぁぁぁ?!?!』
なんと、二人の身体は凄まじい速度で回転し、まるで炎の竜巻を生み出した。
そしてそのまま、道路に一直線に急降下する。
「このまま脳天ブチ砕いてやるぜぇっ!!」
『く、くああぁぁぁっ!!』
必死で足蹴にするが、この体制からだと殆ど力が込められない。
それに激しい遠心力が加わり、ソニックの脚が前方に浮いてしまう。
『へっ、もう諦めな!』
炎の竜巻は突然方向を変え、斜め下に向かって突進する。
その先には、大きなビルがある。
『うあ――』
屋上から真っ逆さまに、二つのアンナユニットが落下した。
大地震のような轟音の後、ビルのあちこちから炎が噴き上がり、あっという間に崩壊が始める。
濛々と粉塵が立ち込め、ビルが唸りを上げて沈んでいく。
「ブレイザー!!」
反射的に、アンナパラディンは粉塵の中へ飛び込んで行った。
『この状況で救助ですか?!』
すかさずアンナジャスティスソードが追いかける。
だが粉塵の中に入り込んだ途端、どこからともなく高速で回転する巨大な螺旋が襲い掛かって来た。
『くっ?!』
斜め下から突如襲い掛かる、黄金のドリル。
咄嗟に避けたものの、今度は反対側からも現れる。
ドリルが背中の髪の一部を掠め、金属が削がれるような不快な音が響いた。
『なるほど、そういう策でしたか』
言うほど意外そうではない雰囲気で、アンナジャスティスソードは両腕を交差させると
『システムアウト!』
と叫んだ。
と同時に、アンナユニットが解除される。
空中で実装を解いてしまったジャスティスソードは、そのまま落下し始めた。
「な?!」
そのあまりにも意外過ぎる対応に、アンナパラディンに一瞬の油断が生じる。
だが次の瞬間、猛烈な風が吹き上がり、粉塵をあっという間にかき消してしまった。
余りの突風に、何が起きたのかわからない。
次の瞬間、アンナパラディンの目に飛び込んで来たのは――
「――わ、ワイバーン!?」
そこに居たのは、以前栃木県警の科捜研を壊滅に追いやった毒竜・UC-13ワイバーンだった。
銀色に光る鋼のような鱗が不気味に輝き、その巨大な翼が大きな風を生み出す。
「まさか……瞬間的に変態までするなんて!」
『あなた方に勝つために、手段は選びません』
そう言うが早いか、ワイバーンは大きく口を開くと、喉に巨大な膨らみを作り始めた。
全身を震わせると、
ギャボワァァッ!!
異常なほど大きく拡張させた口腔全体から、濁った液体を大量に吐き出す。
それがアンナパラディンに直撃した。
「きゃあっ!?」
回避は間に合わなかった。
振りかかった液体は、アンナパラディンに直接ダメージを与えることはない。
だが未来は、その液体が何であるかを瞬時に察した。
「これは――猛毒?!」
ワイバーンが、ホバリングしたままジャスティスソードの声で話す。
『そうです。
あなたの身体には、パリトキシンという神経毒が塗布されました。
あなたが基地に帰還すれば、気化した毒がお仲間の命を瞬時に奪うという寸法です』
「なんですって?!」
『コードシフト――チャージアップ』
ワイバーンの身体が輝き、再びアンナジャスティスソードの姿に戻る。
正に一瞬の早業。
既に勝ち誇ったような笑顔を向け、右腕の剣を構える。
『そして私は、あなたのユニットを適度に攻撃して。
メンテナンスが必要な状態に仕上げれば良いわけです』
背筋がゾクッとするような冷たい笑みを浮かべ、アンナジャスティスソードは再びパラディンに飛び掛かった。
一方、いまだに粉塵を巻き散らしている破壊されたビルでは。
「よし、やったか?!」
アンナソニックをビルごと叩き潰したアンナブレイザーは、瓦礫を払いのけて外に出ようとする。
だがその瞬間、とてつもない“音”が周囲に響き渡った。
Rah――――――――――
「う、うあああああああああ?!?!」
ブレイザーは、耳を押さえて大きく身体をよじった。
どこからともなく響き渡る、破壊の音響。
透明感のある美しい歌声がどんどんオクターブを上げて行き、次の瞬間、アンナブレイザーの視界が大きく歪み出した。
ビルの窓ガラスは粉々に割れ砕け、コンクリートの壁はひび割れ、砕け、崩れ出す。
路上に停車していた車は全てのウィンドウが破壊され、次々に横転していく。
遂にはアスファルトまでひび割れ始め、先程破壊されたビルの一部が粉塵の様に細かく散らばり出した。
その中から、アンナソニックがゆっくりと浮上する。
――全くの、無傷だ。
『ソニックキャノン。
――あんた達って、本っ当に学習能力ないねぇ。
あたしがどんな能力持ってるのか、もう忘れたのぉ?』
至近距離から音響攻撃を食らってもんどり打つアンナブレイザーに、ソニックは容赦なく音響拳を叩き込む。
巨大なスピーカーで重低音を鳴らしたような轟音と共に、アンナブレイザーの身体が真横に吹っ飛んでいった。
『このアンナソニックにはね、音響障壁ってもんがあるのさ。
だから、あんたの小賢しい技ごときでダメージなんか食らうわきゃないのよ』
見上げた先の光景をズームすると、アンナジャスティスソードとパラディンが剣戟を交わし合っているのが見える。
『さて……と。
んで、あの黄色いガキの方は今どうなってんの?』
吹っ飛ばしたアンナブレイザーが起き上がって来ないのを確認すると、ソニックはべろりと舌なめずりをして、空へ飛び立つ。
だがその瞬間、数百メートル離れたビルの一角が、突如爆発した。
『ま、愛美?!
あんた、いったい何する気?!』
アンナデリンジャーの声が、僅かながら恐怖で震えている。
周囲の大気が振動し、破壊された窓ガラスがビリビリと音を立てる。
デリンジャーは、目の前で起きている状況が理解出来ず、大いに戸惑っていた。
アンナローグの全身が激しく発光し、周囲に白銀の光が満ちていく。
全身を銀色に輝かせながら、破損した部位が次々に修復されていく。
髪から伸びるリボン・エンジェルライナーが、まるで爆発するような勢いで六本に増殖した。
額のマーカーが、まるで魔法の紋章を思わせるような形に変化していく。
そしてその表情は、まるで獲物を狙う獣のような獰猛なそれに変わっている。
握る拳の隙間からは真っ白な閃光が迸り、足首と背中からは、まるで後光を思わせるようなまばゆい輝きが拡がっていく。
『ど、どうなんてんのよ?!
こんな情報、貰ってないよ!!』
狼狽えるデリンジャーをよそに、アンナローグはゆっくりと両手を広げる。
その動きに沿って銀の光が真横へ伸び、やがて幅広い「剣」の形へと変化する。
刃渡り三十センチ程の幅広いもので、クリスタルを思わせる半透明の蒼を帯びている。
銀色に統一された刃の中心、ナックルガードを思わせる大きな鍔、柄は、まるで芸術品のような造形美を誇り、その表面には、美しい唐草模様が浮き彫りで刻まれている。
『や、やばい! なんかヤバいこれ!!』
アンナローグの放つ闘気に当てられ、デリンジャーは悔しそうな顔でその場を離脱しようと高速離脱する。
だが、一瞬で追い付かれ回り込まれた。
『いっ?!』
「はあっ!!」
銀の刃が一閃され、二人の間に光の壁が生み出される。
その軌道上にあった壁やガラスが、まるで定規で綺麗に測ったように一直線に斬り裂かれた。
その中には、アンナデリンジャーの右前腕も含まれる。
『あ、あぎゃああああああ?!』
落下爆散する、デリンジャーハンマー。
腕を瞬時に切断され、悲鳴を上げて体勢を崩したアンナデリンジャーは、螺旋を描きながら墜落する。
だが道路に激突するよりも早く、六本のエンジェルライナーを拡げたアンナローグが追い付いた。
次の瞬間、彼女の身体は常軌を逸した強烈なパワーで掴み上げられ、遥か上空へと投げ飛ばされた。
『い、いぎぎぎぃぃ――っ?!』
吹っ飛ばされたアンナデリンジャーは、必死で体勢を立て直そうと背面のブースターを全力噴射する。
しかし、一向に速度は弱まらない。
『な、なんでよ?! なんで――』
そこに、真正面から銀色の光が突っ込んで来た。
「たあ―――っ!!」
アンナローグの左腕が輝き、巨大なハンマーを思わせる「手甲」が出現する。
超高速で接近しながら、銀色の拳が真っすぐに撃ち出された。
全くの無防備状態で、その一撃を腹部に受けたアンナデリンジャーは、自身の装甲が砕けて行く音を聞いた。
臓物を捻じられるような激痛が体内に迸り、吐血する。
『ゴフッ!』
身体の加速が、更に高まる。
マッハコーンが立ち上り、音速を遥かに越えるスピードで飛ばされたデリンジャーは、もはや何の抵抗も出来ないまま海へと落下していく。
巨大な爆弾が破裂するような音を立て、数十メートルもの水柱が立ち昇った。
一方、アンナウィザードとミスティックは、新宿上空をホバリングしながら周囲に気を配った。
彼女達の周囲を大きく旋回するように、ナイトウィングも偵察飛行を繰り返す。
『夢乃の姿が、こちらでは確認出来ない。
逃走した可能性があるが、油断するな。
パワージグラットの世界から逃れられん以上、奇襲を掛けて来る可能性があるぞ!』
凱の通信が届き、二人の表情がおのずと引き締まる。
「ねえ、ウィザード」
突然、アンナミスティックが囁くように呼びかけた。
「どうしました、ミスティック?」
「私達……本当に、夢乃お姉ちゃんと闘わなきゃ駄目なの?」
「それは……」
ミスティックの――否、恵の気持ちは、舞衣には痛い程良くわかる。
元町夢乃は、二人にとって鉄蔵、凱と同じ大切な家族だ。
血の繋がりこそないが、幼い時から面倒を見てくれた、かけがえのない存在なのだ。
生まれてすぐに摩耶を失い、母親が居なかった相模姉妹。
そんな彼女達の母親代わりになってくれたのが、凱と、夢乃だった。
物心ついた時には、既に傍に居た。
凱と共に、相模虎徹と鉄蔵によって引き取られた養子と聞いてはいるが、どういう経緯で相模家に来たのか、詳しい話は知らない。
それでも、二人は夢乃が大好きだった。
凱と同じくらいに……そして、女として憧れの存在でもあった。
だが、そんな彼女が、今では――
それは姉妹にとって、受け入れがたい現実でしかない。
背中合わせで空中に立ち尽くす二人は、僅かに虚空を見上げる。
「ねえ、お姉ちゃん」
「ミスティック、今は」
「うん、分かってる。
でもね、聞いて」
「……はい」
「もしもね。
もしもあの日、お姉ちゃんが……お家を出て行かなかったら。
ナントカ研究所ってとこに行かなかったら。
メグ達、今もみんな仲良く暮らしていられたのかなあ?」
「それは……」
アンナウィザードには、答えられない。
舞衣は、以前父・鉄蔵から聞かされた衝撃の事実を思い出す。
妹の恵にはとても言えない話を。
元町夢乃と、北条凱。
二人は、祖父・虎徹の意志の下“SAVE.”の特殊情報工作員チームを編成する幹部候補となるべく、相模家に招かれた。
相模家が……“SAVE.”が追い求めていたXENO研究の中心人物・吉祥寺龍利の所在が突き止められ、凱と夢乃に潜入調査命令が下される。
しかし、当時吉祥寺の許へ忍び込むには女性の方が有利だった。
その為、夢乃は単身で吉祥寺に近付くため作戦を遂行。
凱は、そのサポートとして外部での連絡を待ち続けたが――
舞衣がその話を聞かされたのは、夢乃の生存が確認された後、アンナローグが起動に成功した頃だった。
(全ては、私達の知らないところで話が進んで。
私達の知らないところで事態が急変してしまった……)
自分では結局何も出来ず、ただ過ぎ去った出来事を伝えられるだけの生活。
それが、舞衣にはとてもせつなく、悲しかった。
アンナユニットを操縦する為の搭乗者としての訓練に明け暮れ、それ以外の情報はシャットされていたから。
そして今もこうして、もうどうしようもなくなった事態を知り、それに翻弄される。
――夢乃を助けることすらも、出来なかった。
アンナウィザードは、そっと自分の手を見つめる。
「いつも私達は――手遅れになってから動くことしか出来ないのですね」
「えっ?」
「いいえ、何でもないわ……」
「お姉ちゃん……」
その時突然、周囲の景色が変化した。
「これは?!」
「おね……ウィザード?!」
「気を付けて! 私から離れないで!
お兄様! 今――」
言葉が、そこで止まる。
アンナウィザードとミスティックの目の前に拡がっている光景は、相模邸……自宅の中庭だった。
いつもの見慣れた、幼き頃から大好きな庭園。
いっぱい遊んだ想い出、ゆっくりくつろいだ記憶が、たくさん詰まっている大切なところ。
いつの間にか、二人はその真ん中に立ち尽くしていた。
「幻覚……?
これが、アンナイリュージョナーの能力?」
「そんな!
本当に、お庭に居るみたい……ここ、新宿の筈なのに」
「AIの検索も役に立ちません。
完全に、術中に陥っているみたいですね」
『そうよ。
あなた達はもう、完全に私の術に捕らわれているの』
どこからともなく、聞き馴染みのある声が響く。
それはとても優しく、皮肉にも思える程に、懐かしく。
『私達の懐かしい想い出が沢山詰まっている、この中庭。
そこで、あなた達は最期を向かえるのよ。
どう? 素敵なことだと思わない?』
数メートル向こうに、アンナイリュージョナーの姿が徐々に浮かび上がる。
姉妹の胸に緊張感、そして悲しみが拡がっていく。
「パワージグラットの効果範囲に、アンナチェイサーと敵アンナユニットが含まれていません!」
地下迷宮のオペレーターの声が、スタッフらの間に衝撃を走らせる。
「なんだと?!」
「どういうことじゃ?!」
「戦闘エリアが大きく外れていた為、アンナミスティックのユーティリティで捕捉出来なかったものと思われます!
シェイドIIIより映像が送られて来ました!」
映像が、空間投影モニタに表示される。
それは丁度、大きな水飛沫を上げてアンナチェイサーが着水する瞬間だった。
身体から煙を噴き上げながら落下する姿が一瞬映り、ナオトが声を上げた。
「霞ぃ!!」
すかさず踵を返し、駆け出していく。
「鷹風! 何処へ行く?!」
「良い! 奴は放っておけ!」
「しかし!!」
焦る勇次に、仙川は額の冷や汗を拭いながら、無理矢理冷静な声色を作って呟いた。
「アンナスレイヴァー……重力波の使い手・アンナヘヴィズームじゃな」
「アンナ……スレイヴァー?」
「蛭田、現地に行くぞ。
ハウントはもう完成しとるんじゃな?
乗り込むぞ!!」
「ハウントを?!」
思わず吃驚する勇次に、仙川は表情を引き締めて向き直った。
「幸い、ミスト……いや、アンナチェイサーの落下地点は、ぎりぎりパワージグラットの効果範囲内じゃ。
今から、アンナヘヴィズームだけをパワージグラットの並行世界へ叩き込む!」
「そんな事が可能なのか?!」
目をひん剥く勇次に、仙川は肩にかかる長い髪を払いながら、キメ顔で唱えた。
「その為の新装備じゃろうが。
ビジョンに搭載されている“ジグラットハンマー”を使う!」
その言葉に、ティノと今川が顔を上げて反応した。
“SAVE.”の闘いが始まる――




