●第116話【一閃】
今回は、本日投稿の「押しかけメイドが男の娘だった件」第89話と同時進行の内容になっています。
ここは、異世界の猪原家。
そこでは、猪原一家と卓也、凱、そしてアンナローグとウィザード、ミスティックが楽しそうに談笑していた。
彼ら八人しか存在しない、閉鎖された世界。
誰にも気兼ねすることなく、皆は久々の、そして限られた時間だけの再会に喜び合い、惜しんだ。
「それにしても、澪さんにお会い出来なかったのは本当に残念です」
猪原夫が、無念そうに呟く。
今後、改めて澪をここへ連れて来ることは出来ないだろうと、卓也は思った。
「ねえ卓也おじちゃん、澪お姉ちゃんともう逢えない?」
「う、うん。ちょっと難しいかな」
「そんなぁ……」
「あのぉ、ご事情はよくわからないんですけど、一目だけでも難しいでしょうか?」
アンナローグが、申し訳なさそうな態度で尋ねる。
同じことを他の面々も考えているようで、おのずと視線が卓也へと集中する。
「遠くから、ちょっとだけチラ見も無理ぃ?」
「そんな、駅のホームや空港じゃないんですから」
「もし、少しでもお会い出来る機会を頂けるなら、一言だけでも改めてお礼を申し伝えたいのですが」
今度はミスティックと猪原夫人が尋ねる。
すがるように凱へ視線を向けるも、彼は「俺に振るなよ」といった態度で首を振るばかりだ。
「うえぇ……じゃあ、澪お姉ちゃんにお手紙書くから、それ渡してくれる?」
「ああ、それくらいなら問題ないよ」
精一杯の譲歩なのだろう、かなたは涙目になりながら懇願する。
その様子を見ていたミスティックも、何故かつられて涙を流している。
「あの、提案があるのですが、宜しいでしょうか?」
今まで静かに見守っていたアンナウィザードが、手を軽く挙げて申し出る。
「それでは、映像通信でこちらと神代さんのマンションを繋いでお話するというのはどうでしょう?」
「おお、そうかその手があったか!」
腕を組んで黙り込んでいた凱が、表情を明るくする。
「それが可能でしたら、是非!」
「是非よろしくお願いいたします!」
「マイお姉ちゃん、さすがぁ!
ねえおじちゃん、それならいいでしょお? ねぇねぇ!」
「メグからもお願いします!
どうか、かなたちゃん達のお願いを聞いてあげて!」
怒涛の勢いで圧され、卓也はつい反射的に頷いてしまった。
「え~と……あ、そうだ! LINE!
LINEのビデオ通話なら今すぐ設定出来ますよ」
「そうか、それが一番確実で手っ取り早いか!」
「やったぁ! 神代さん凄ぉい!」
「やりましたね!」
アンナミスティックとローグが、ハイタッチして喜び合う。
それでは早速と、卓也は猪原夫とLINE交換を行うことにした。
楽しい時間も、まもなく終わろうとしている。
最後の挨拶を交わし合う場で、凱は簡単に挨拶を済ませてすぐに席を外す。
卓也は、最後にかなたと両手で握手を交わした。
「おじちゃん、別な世界に行っても元気でね!
澪お姉ちゃんもね!」
「ありがとう。
かなたちゃんも元気でね」
「うん! かなたね、大人になったら“アンナセイヴァー”になるの!」
いきなりの発言に、その場の者達は思わず目を点にした。
「えーっ? そうなの?」
かなたの傍にミスティックがしゃがみ、顔を覗き込む。
その瞬間、スカートの中が一瞬見えてしまい、卓也は思わず顔を赤らめた。
「ホントだよ! それでね、メグお姉ちゃん達を助けてあげるの!」
「わぁ♪ 嬉しい!
じゃあね、かなたちゃんが大人になるの待ってるね☆」
「楽しみにしてますよ」
「待っていますね、かなたさん!」
三人に優しい言葉をかけられて、かなたは満足そうに微笑んだ。
美神戦隊アンナセイヴァー
第116話【一閃】
パワージグラットの効果時間が切れる五分前、皆は家の外に出ていた。
「何?! なんでもっと早く連絡しなかったんだ!」
いよいよお見送り、という場面で聞こえて来た突然の怒声に、皆はビクッと反応する。
「おわっ?! な、なんだ?」
「凱さん? ……まさか!」
「私も、同じことを思いました」
「え、まさか、XENOが出たの?!」
三人の少女は表情を引き締める。
アンナローグが、猪原一家に切り出した。
「誠に申し訳ありません。
急用が出来てしまったようなので、私達はここで失礼させて戴きます」
「本日は、お招き頂きまして本当にありがとうございました」
「かなたちゃん、また今度遊びに来るからね~♪」
「うん! メグお姉ちゃん約束だよぉ!」
小指を差し出すかなたに、ミスティックが屈んで応対する。
卓也も、遅れて軽く頭を下げた。
「それでは、お邪魔しました!
どうか皆さん、お幸せにお過ごしください!」
「ありがとうございました、神代さん!
あなたの事は、一生涯忘れません」
「本当に感謝しています!
かなたを還してくださって、本当にありがとうございました」
パワージグラットは、あと僅かで効果が切れてしまう。
遅れてやって来た凱とも挨拶を交わすと、猪原一家は名残惜しそうに手を振りながら、家の中に戻って行った。
「凱さん」
「XENO、ですね?」
「何処に出たの?! 被害は?」
三人の表情が、真剣なものに変わる。
その急な切り替わりように、卓也は思わず戸惑った。
「ああ、出現場所は――四谷だ」
「四谷?! って、まさか」
「ああ、そのまさかだ。
状況から判断すると、澪さんと……もう一人の君が、XENOに襲われている」
「な、なにぃ?!」
淡々と語る凱の言葉に、卓也は思わず大声を上げた。
「でりゃあぁっ!!」
「せいっ!」
アンナセイヴァーの二人が、インキュバスに飛び掛かる。
アンナブレイザーは拳で、パラディンはホイールブレードを取り出し振り被る。
二人とも宙を駆け上がるように飛翔し、インキュバスの真正面から攻撃を加えようとするが、死角と思われる方向から巨大な翼が覆い被さって来た。
攻撃が命中する瞬間、二人は黒い翼の攻撃により、地面に叩きつけられた。
軽い地震でも起きたような、振動が伝わって来る。
「だわあっ?!」
「きゃっ!」
「わぁっ?!」
「きゃあっ?!」
インキュバスは即座に飛翔すると、長い尾のようなものを伸ばしてブレイザーを打ち据える。
背後に素早く回り込んだアンナパラディンは、そのまま剣で斬りつける。
ザクッと耳障りな音が響き、大剣が背中を大きく斬り裂いた。
ああああああああ!!
未央の、悲痛な悲鳴が上がる。
自分とよく似た声で。
澪は、思わず耳を手で塞ぎ目を背けた。
携帯が、コロンと転がり落ちる。
あああああああ、せ、センパぁイ!!
どうしても、どうしてもあなたが欲しいぃぃぃぃいいいい!!
どんな、どんな手を使ってでもぉ!!
インキュバスが、突然大声で叫び出す。
と同時に、身体中から突如、紫色と灰色が混じり合ったような煙が噴き出し始めた。
あっという間に、周囲を包み込んでいく。
「ぐっ?! 煙幕か?!」
「まずいわ! AI、成分分析を!」
「おいあんたら、こっちだ! 逃げるぞ!」
ガスが届くよりも早く、ブレイザーが澪と老け卓也を脇に抱えて飛翔する。
「ひえっ?!」
「な、なんですかアレは?!」
「わからない。もし毒ガスだったらまずい!」
「ど……」
『大丈夫、毒性はないわ。
薄められたメラニン成分を霧状に噴霧しただけね。
本当にただの煙幕よ』
「メラニンって、もしかして……イカスミ?!」
澪の呟きに、ブレイザーがキョトンとする。
『聞こえたわ。さすがねあなた。
その通りよ』
「せ、正解だって! なんでわかんだよそんなこと?」
「あ、あはは……その、昔お料理関係で調べものをした時にたまたま」
「な、なんかすげぇんだな、あんたって」
「あ、いえいえ、それほどでもぉ~」
「哀れな、イカスミ吐き出すようにまでなっちまったのか新崎」
「アンタはアンタで、なんだよそのコメント?!」
老け卓也の謎な呟きに呆れながら、ブレイザーはグラウンドの外に二人を下ろす。
イカスミ煙幕は徐々に薄れて来たが、インキュバスの巨体はそこには見当たらない。
即座に周囲に警戒するアンナブレイザーとパラディンは、煙幕の中から現れた一人の“影”に目を剥いた。
「な?!」
「は、はぁっ?!」
「ええええええええええええええええええええ?!?!?!?」
「え? ちょ、え、えええっ?! なんでぇ?!」
ピンク色のおだんご髪。
長くたなびく、四本のリボン。
目にも鮮やかな桃色のコスチューム、白い手袋とニーハイ。
そして、額に輝くエメラルドの光。
そこに居るのは、紛れもなく“アンナローグ”だった。
灰紫色の霧が晴れたその向こうで僅かに浮遊しながら、彼女は不敵な笑みを浮かべている。
いや、そもそも“彼女”なのだろうか。
「う、うそだろ?」
「そういう擬態も可能なの?!」
「未央が……アンナローグに?」
「う、うおぉ?!」
驚愕するアンナバトラーとパラディン。
そして、澪。
だがその三人は、突然大声を上げ始める老け卓也にビクッと反応した。
「おおおおおおおおお! ぴ、ピンクちゃんがぁ!
こんな所に降臨だあぁぁぁぁぁぁ!!!」
「え……えええええっ?!」
さすがの澪も、彼のこの反応は想定外だった。
同じ頃、ここは地下迷宮。
勇次達も、想定外の状況に驚きを隠せずにいた。
「アンナローグに、化けただと?!」
「蛭田リーダー、これはいったい……」
オペレーター達も動揺が激しいようで、空間投影モニタに映し出された映像から目が離せない。
しかし、勇次はすぐに表情を引き締め、通信を行う。
「パラディン、ブレイザー、聞こえるか!
分かっていると思うが、そいつは擬態の一種に過ぎん!
惑わされるな!」
『わかっています! しかし――』
返って来るパラディンの声は、明らかに震えている。
思った以上に心理効果が高いようで、勇次は小さく舌打ちした。
「だが、これはチャンスでもある。
いいか、出来る限りインキュバスにその擬態を解かせるな」
『どういうことですか?』
不思議そうに尋ねて来るパラディンに、勇次は口調を落ち着けて丁寧に説明する。
「これ以降、擬態したインキュバスは“ゼノローグ”と呼称する。
いいかパラディン、ゼノローグが擬態を解かない限り、身体の大きさは人間サイズのままだ」
『そ、それはそうですが……』
「であれば、巨大化した状態よりも、核の特定及び攻撃が容易になる」
『!!』
『であれば、巨大化した状態よりも、核の特定及び攻撃が容易になる』
勇次の通信に、アンナパラディンはハッとさせられる。
以前、まだこの姿になる前のANX-04PでXENO“ジャイアントラット”を倒した際、剣の一撃で核ごと身体を破壊出来たことを思い返す。
「!!
わかりました、その方向で行動します。
蛭田博士、凱さん達にはこちらに合流しないよう伝えてください」
今ここに残り三人が合流してしまうと、必ず混乱が生じ事態は悪化する。
一瞬だけ視界の端に表示させた時刻を確認し、彼らがそろそろ解散するだろう頃合いである事も認識する。
だがその直後、突然叫び声が轟いた。
「うおぉぉぉぉぉおおお! ぴぴぴ、ピンクちゃあぁんっ!!」
老け卓也は突如両目をハートマークにして、ゼノローグへと全力疾走し始めた。
「おおおおおお! ピンクちゃん、ピンクちゃあん!!
俺の、オレのピンクちゃあん!!」
中年太りも甚だしい四十代とは思えないような、凄まじい俊足。
濛々と砂煙を上げながら、老け卓也は五十メートル七秒を切るのではないかというスピードで、ゼノローグへとまっしぐらに接近――いや、突進していく。
その想定外の反応に、全員の反応が一瞬遅れてしまった。
「な、なんだぁおっさん?!」
「何故?!」
「先輩♪ やっと僕のところに来てくれる気になったんですね♪」
ゼノローグも、両手を広げて迎え入れようとしている。
しかし、その背後にはどす黒いオーラのようなものが感じられた。
「ちょ、ソイツは別人だって!」
「駄目だわ、完全に魅了されてる。
私達の声は届いてないわ!」
即座に老け卓也の状況を判断したパラディンが、ホバー移動で彼を追う。
もうすぐでゼノローグに抱き着く……という寸前で、背後から捕獲して一気に上昇する。
「うぼわぁ?! ぴ、ピンクちゃんがあぁぁぁ!!!」
「おお! ナイスパラディン!」
「ちょっとぉ! 何するのよぉ!
先輩を盗らないでぇ!!」
ゼノローグの髪から生えた四本のリボンが、目にも止まらない速さで伸び、追いかける。
その末端はあっさりとパラディンの足首を捉え、強引に引っ張り出す。
「きゃあっ?!」
「わわわっ!!」
高速上昇中に急ブレーキをかけられた反動で、パラディンの腕から老け卓也が滑り落ちる。
上空おおよそ八メートル、三階くらいの高さで、そのまま落ちたらただでは済まない。
「チィッ!!」
即座にブレイザーが反応するが、それよりも素早く、ゼノローグが前に立ちはだかる。
「邪魔しないで!」
「何ッ――ぐあっ?!」
長く伸びたリボンの束が、鞭のようにブレイザーを打ち払いのける。
そして落下して来た老け卓也を、ふんわりと優しく抱き止める事に成功した。
「ピンクちゃん……お、俺、ずっと憧れてたんだ!
すすすす、好きなんです! 俺もう、ピンクちゃんしか♪」
「嬉しい! センパイ♪ 大好き☆」
低空で見つめ合う、二人。
その周囲には、無数に飛び交うハートと、なんだか禍々しいピンク色のオーラが見えるような気がする。
その光景に、他の三人は青ざめた。
「やべぇ! このままじゃあのオッサン食われちまう!」
「引き剥がすわよ、ブレイザー!」
「がってん!」
急降下しながらゼノローグに挑みかかるパラディンと、横から飛び掛かるブレイザー。
しかしその動きを見越していたのか、ゼノローグはその場からフッと消えてしまった。
「わわっ?!」
「ちょ、待っ――きゃあっ?!」
目標が突然消失したせいで、急な制御が利かない。
高速で接近したのが災いし、ブレイザーとパラディンは激しく空中で激突してしまった。
まるで車同士が衝突したような、派手な音が響き渡る。
その音に反応したのか、徐々にグラウンド周辺に野次馬が集まり始めていた。
「い、いたたた……」
「な、何やってるのよ!
AI、破損チェックを」
「なんだてめぇ! こっちのせいにばかりすんじゃねぇよ!」
痛そうに頭を摩りながら起き上がった二人は、早速口論を始める。
だが澪は、それどころじゃなかった。
「どどど、どうしよう?!
って、携帯! あ、あったぁ!」
落していた携帯を拾い上げた所で、不意に背後に気配を覚える。
振り返るよりも早く、澪の身体はリボンでぐるぐる巻きにされてしまった。
「きゃあっ?!」
「フフフ♪ 澪さぁんも捕まえたぁ☆」
そう、自分も捕食対象なのだ。
一瞬とはいえ、その意識が欠如していた。
「澪さんも、もう離しませんからねぇ♪」
「うげ……」
澪は、見てしまった。
自分を見て満足そうに微笑むゼノローグの表情と、その向こうで完全にイッてしまった目をしている老け卓也の顔を。
アンナブレイザーとパラディンが起き上がり、周囲の状況を再確認するも、事態は最悪の状況に陥っていた。
遥か上空に漂い、澪と老け卓也を捕獲しているゼノローグ。
老け卓也は、恍惚の表情でゼノローグとのディープキスを何度も堪能している。
そしてその光景を間近で見せつけられている澪は、さすがにうんざりして目を背けていた。
「ぐは♪ ふぁ、ふぁ~~すとキスぅ♪ ピンクちゃんとぉ♪♪
むひぃ、たまんねぇ♪」
「やだセンパイ♪ はぁぁ、直接吸い取ってあげたぁい♪」
「……もうやだ」
ふと視線を落すと、下からオレンジと赤の光が接近しているのが見える。
澪は、手の中に握られている携帯の感触を思い出すと、あらん限りの勇気を振り絞った。
(ボクと未央の距離は、目測でだいたい一メートルあるかないか。
ボクの身体は……しめた、肘は動かせる!
後は、なんとか、片手で携帯さえ開ければ!)
ゼノローグが老け卓也に注目しているその隙に、頑張って片手だけで携帯を展開する。
幸い、なんとか親指の力で九十度くらいまで開くことが出来た。
後は、狙いをつけて発射ボタンを押せば――
「やめろぉぉぉおおお!!」
「その人達を、離しなさい!」
下から、二人のアンナブレイザーとパラディンの声が響いてくる。
その瞬間、ゼノローグの表情が恐ろしい悪鬼のようなものに変貌した。
「邪魔しないでって言ったでしょう!!」
二人の手がかかる寸前で、またもゼノローグの姿が消える。
「うわ、また?!」
「拡散して! AI、サーチを!!」
「あの野郎、今までの奴ら以上にテレポートを巧みに使いやがる!」
「まずいわ、もし遠い場所に連れ去られたら、追い付けない」
「どうすりゃいい? 考えてくれ!」
「待って……さすがに私も、そこまですぐに対応出来ないわ。
AI、索敵方法を検討して!」
アンナパラディンの指示を受け、ANX-04P搭載のサポートAIは即座に通信衛星「シェイドIII」へのアクセスを開始した。
アンナパラディン達を中心に、有効半径を少しずつ拡大し、パラディンが捉えた映像情報を参照しながらゼノローグを捜索する。
――回答は、意外に早く届いた。
「えっ? 二つ?!」
「おい、どうした?」
「シェイドIIIが、二つ反応を示したの。
でも、こっちに高速で向かってる方は――」
「それ、ホンモノのローグじゃね?」
ブレイザーの言葉に、パラディンは大きく頷いた。
ゼノローグ達が出現したのは、グラウンドのすぐ近くにある中学校校舎の屋上だった。
「さぁ、ここなら……誰にも邪魔されずに♪」
「お、おおお! つつつ、遂に俺、ぴ、ピンクちゃんと初体験~~☆☆」
リボンの拘束を解いて老け卓也を解放すると、ゼノローグは舌なめずりをしながら彼のズボンに手をかける。
「いただきまぁす♪」
ジュルリ、という物凄く下品な音が響き、ゼノローグは老け卓也に迫ろうとする。
だが、彼は気付いていない。
老け卓也を解放した時、同時にリボンは、澪をも解き放ってしまっていたことに。
携帯型の武器“Photon-Discharger”の照準が、ロックされる。
「未央ぉ!」
携帯を構えて立ち上がると、澪は大声で叫んだ。
その声に反応し、怒りを含んだ表情で上体を上げるゼノローグ。
一瞬、彼の上半身が完全にこちらに向けられた。
澪の目が、金色に光る。
「ごめん!」
携帯の側面のボタンが押された瞬間、アンテナ部分から銀色のビームが射出される。
銀の閃光は、ゼノローグの胸元を、真っすぐに貫いた。




