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美神戦隊アンナセイヴァー  作者: 敷金
INTERMISSION-05
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 第39話【両親】2/4


 翌日、舞衣と恵は、学校が終わった後に校門前で待ち合わせると、急いでナイトシェイドを呼び出した。

 SVアークプレイスで実装を済ませると、大急ぎで中野新橋へ飛翔する。

 目的は、いわずともかな。


「ウィザード、付き合ってくれてありがとう!

 じゃあ行くね、パワージグラット!」


 滞空しながら、パワージグラットを施行する。

 街の喧騒が、一瞬にして完全に途絶え、静寂が訪れた。


「ミスティック、コンビニからノートを調達しましょう」


「あ、そうだね!」


 アンナウィザードの提案で、二人はマンション手前のコンビニに入り込んだ。

 以前約束した、かなたとの連絡用ノートだ。

 カウンター奥の事務所からマジックペンを拝借すると、アンナミスティックは、ノートの表紙にデカデカと


“かなたちゃん と メグ の連絡ノート☆”


と書いた。


「ミスティック、本名書いちゃってますよ?」


「え? あー! やっちゃった!

 ……でも、いいよね? どうせ他に誰も見ないんだし」


「それもそうですね」


「それに、かなたちゃんに名前教えちゃったし♪」


「ええーっ!」


「いいじゃんいいじゃん☆

 え~っと、ちょっと待ってね」


 そう言うと、アンナミスティックは、ノートの最後の一枚を破り、そこに何かを書いた。


「どうしたのですか?」


「ううん、ちょっとね」


 ノートの切れ端を折りたたみ、カウンターのレジの横に置く。

 そこには


“210円のノート一冊、使わせて頂きます。勝手にごめんなさい!

                                     メグぴょん”


 と、書かれていた。






「――というわけでね、かなたちゃん。

 パパとママに向けて、メッセージを伝えてくれるぅ?」


「うん! でも、録画するの? 道具は?」


「大丈夫だよ!

 お姉ちゃんの目で見たものは、全部自動的に録画されているから」


「えーそうなの?

 すごーい!」


「ということは、この前のも、全部録画されてたんですか?!」


「す、すみません!

 でも、そのおかげで、私達のスタッフも、坂上さん達のことを認識してくれました」



「そうなんですか、でも、そうなるとなんか照れるなあ~」


 坂上は、そう言いながら頭をぽりぽり掻いて照れた。



 いつものマンションにお邪魔したアンナウィザードとミスティックは、夕食準備前になんとか間に合った。

 今日は報告だけでなく、二人で夕飯作りを買って出た。

 坂上は恐縮したが、かなたは大喜びだ。

 

「わーい☆ ハンバーグ楽しみぃ!」


「なんかすみません、お手伝いまでお願いしちゃいまして」


「そんな、お気になさらないでください!

 私達の方こそ、連絡もなくいきなり押しかけておりますので」


「あのねー、味見は出来ないけど、ちゃんとAIで調味料とか成分とか計算するから、心配しないでね!」


「うん、楽しみにしてるねー!」


 本日は、かなたのリクエストで煮込みハンバーグとなった。

 しかし、滞在時間の都合最後まで作れないので、仕込みだけに留めることにする。

 二人は、慣れた手つきで玉ねぎとにんじんを刻み、炒め、合挽肉と卵、牛乳に浸したパン粉と混ぜる。

 勿論、ちゃんと使い捨ての薄ビニール手袋を着けてだ。

 香辛料や塩を振り混ぜながら、アンナウィザードとミスティックは、見事な連携で調理を進めていく。

 アンナミスティックが肉をお手玉のようにポンポンと丸め、かなたがそれを見て大はしゃぎしている。

 アンナウィザードは、デミグラスソースやりんご、中農ソースやケチャップでソースを作り始めた。


 一通りの準備を済ませたところで、二人は素晴らしく慣れた手順で片付けを終えた。


「後は、もう四十分くらい寝かせてから、オーブンで焼いてください。

 その後で、ソースに浸して軽く温めれば召し上がっていただけます」


「煮込まなくてもいいのですか?」


「耐熱容器に入れて、レンジで温めるくらいでいいですよ。

 その方が型崩れしなくて、美味しく頂けます」 


「わぁい♪美味しそう!

 ねえ、お姉ちゃん達も一緒に食べようよー」


「ごめんね、かなたちゃん。

 私達、この世界のご飯食べられないのー」


「あっ、そっか!

 うう、残念だなあ~」


「それに、今回はもう時間がないので、そろそろおいとましなければ」


「誠に残念です。

 滞在時間を延長する方法などは、ないのでしょうか?」


 坂上の質問に、アンナウィザードはおおまかな事情を説明した。

 今の“SAVE.”の技術では、それは困難なのだと。


「もし、かなたちゃんのご家族をこちらにお招き出来た場合も、一時間がリミットになります。

 ですので、申し訳ありませんが、それはご了承ください」


「ええ~、そんなちょっとなのぉ?」


「うん、でも心配しないで!

 何回でも連れて来てあげるからね」


「うん♪」


 かなたを抱き上げながら、アンナミスティックは笑顔で約束する。

 それを横目に、ウィザードはいささか心配そうな表情を浮かべた。



 最後にかなたのメッセージを撮影したところで、リミットが近づいた。

 このまま部屋の中で戻ってしまうと、本来のこの部屋の住人を驚かせてしまうため、マンションの外に出る必要がある。

 二人は、またこの時間くらいに来るかもしれないとだけ伝え、ベランダから外に飛び出した。


「ばいばーい、お姉ちゃん達、またねー♪」


 かなたが、元気に両手を振って見送る。

 それに手を振り返しながら、アンナミスティック達は夜空に姿を消した。




 SVアークプレイスに着き、実装を解除した途端、恵が舞衣に話しかけてきた。


「お姉ちゃん、ごめんね」


「どうしたんですか、急に?」


「だってぇ、いつも付き合わせちゃって悪いしぃ」


「仕方ないですよ、二人揃わないと実装出来ないんだから」


「うん、それはそうなんだけど……」


 申し訳なさそうに頭を垂れる恵に、舞衣は笑顔を向ける。


「私達は、いつも一緒の姉妹じゃないですか。

 そんなこと気にしないで、メグちゃん」


「お姉ちゃん……マイちゃん……」


 少し涙目になっている恵の頭を優しく撫でると、舞衣はそっと抱き締めた。


「あの時のこと、また思い出したのですか?」


「――うん」


「やっぱり。

 だから、今回は特に一生懸命なんですね?」


「……」


「私も、あのお二人のことが気になって仕方ないですから、いつでも付き合います。

 だから、メグちゃんは本当に気にしちゃいけませんよ」


「マイ……ちゃん。

 うん、ありがとう」


 胸の中で、嗚咽が聞こえる。

 舞衣は、さらにぎゅっと抱き締めると、恵の頭を撫で続けた。




 SVアークプレイスから退出し、再びナイトシェイドに乗り帰宅しようとする二人に、誰かが遠くから声をかけてきた。


「はぁはぁ、よ、良かった、間に合いましたぁ」


「えっ、ま、愛美さん?!」


「どうしたの、愛美ちゃん?」


 息を切らしながら駆け寄ってきた愛美は、膝に手を当てて呼吸を整えると、申し訳なさそうな表情を浮かべる。


「あの実は、明日から私も、パワージグラットの調査に加えて頂きたいんです」


「ど、どうしてですか?」


「うん、それはいいんだけど、どうして急に?」


「ええ、実は勇次さんからの依頼でして。

 あ、違いました。

 “オーナー”という方からの、だそうです」


 愛美のその言葉に、舞衣と恵は思わず顔を見合わせた。


「パパが?!」

「お父様が?!」


「――へ?」

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