第四十一話 またしても城で噂されていた
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サンドイッチをいただきながら世間話としてニアナさんに色々と聞いた。
ニアナさんは二十二歳らしい。同い年だ!と盛り上がり、ニアナと呼び捨てで良いと言ってくれた。私にも気楽に話して欲しいと言ったのだが、それはさすがに出来ないと断られてしまった。さすがに今は陛下のお客様なので無理だ、と。
ならば、今回の謁見が終わって街に帰ったら友達になって欲しいとお願いすると、ニアナは笑って頷いてくれた。やった! こちらの世界の初めての女の子の友達! キミカさんもいるけど、日本人だしね。異世界人の友達はいなかった。
謁見は明日の午前中に行われるが、ラズはやはりさすがに一緒には無理ではないか、と言われた。うーん、やっぱり無理なのかぁ。一人かぁ……嫌だなぁ。
ラズはフフンとドヤ顔。いや、自慢するところでもないしね。
「今日はご予定もありませんし、午後からはお部屋でごゆっくりお過ごしください」
「出歩いたりは駄目なのかな?」
「申し訳ございません、謁見が終わり、陛下の許可が出てからでしか、城内は出歩けないかと思います」
「あー、そうなんだ」
「申し訳ございません」
「いやいや、ニアナが謝ることじゃないよ」
ニアナは申し訳なさそうな顔をするが、許可が下りてからしか出歩けないのは仕方ないものね。
「夜にまたご夕食をお持ちしますので、何かございましたらベルでお呼びください」
「うん、ありがとう」
そう言ってニアナは片付けて部屋から出て行った。
城の研究所ではリュウノスケが他の研究員と一緒に今開発中のものを議論していた。
そこへドタドタと騒がしい足音が響いてくる。
リュウノスケや他の研究員はまたか、と苦笑する。
「リュウノスケ殿!!」
王子とは思えぬ落ち着きのなさで飛び込んで来たのはアルティスだった。
「アルティス殿下、おはようございます。朝からどうされたのですか?」
アルティスとは正反対に落ち着いてゆっくりと振り向きリュウノスケは聞いた。
「今日! 今日来るって!!」
「は?」
あまりに言葉の足らないアルティスにリュウノスケは呆れ顔だった。全く何が言いたいのか分からない。
「今日来るらしいんです! 例の日本人の方が!」
「あぁ」
そこまで言われてリュウノスケはようやく理解した。アルティスがずっと待ち望んでいた新たに来た日本人。その日本人と早く対面したくて仕方ないのだ。
「そういえば今日でしたね」
「えぇ!? また知っていたのですか!?」
「え? あぁ、まあ……」
アルティスは不満顔。いつも自分はなぜ教えてもらえないのだ、と不満を漏らす。
リュウノスケはそんなアルティスの気持ちも分かるが、あえてアルティスには知られないようにしていることも知っていたため苦笑するしかなかった。
「まあ良いです。ようやくですよ! ようやく会えるんですよ! 例の日本人の方に! どんな方でしょうねぇ、楽しみだなぁ」
うっとり顔のアルティスに、周りの皆が苦笑する。
「明日父上との謁見らしいんです。なのでその後の城内見学に僕もお付き合いしようかと思っているのですよ」
「えっ」
アルティスの発言にリュウノスケが引き攣った。
「い、いや、それはやめられたほうが良いのでは……」
「え?何でですか?」
「えー、あー、案内する者がいるでしょうし」
アルティスが城内見学に付き合ったならば、まともに見学など出来ないだろう。恐らくずっとアルティスからの質問攻めだ。それが分かるからこそ賛成出来かねる。
「えー、駄目ですか?」
「はぁ、あまり好ましくないかと……、案内係も仕事ですし」
仕事を取り上げるのは良くない、と説明すると、アルティスはがっくりとしながらも頷いた。
「そうですね……、私の勝手で仕事を奪うことなどしてはいけない」
納得してくれたようで良かった、とリュウノスケや周りの研究員たちはホッと息を吐いた。
「アルティス様!!」
落ち着いたかと思ったところに今度は女性の怒声が響き渡った。
皆がビクッとし声の主に目をやると、研究所の入口に立っていたのはターナだった。
「ターナ!!」
アルティスは驚いた顔になり引き攣った。
リュウノスケや他の研究員はそっと目を逸らす……。
「また朝から研究所に来て!! 今日は朝から勉強がありますでしょう!!」
ターナはアルティスよりも背が低いのだが、王子であろうがなんだろうが叱っている姿を見ると、とてもそうは見えない。アルティスのほうが小さく見えるものだ、と皆こっそりと様子を伺っていた。
「わ、分かってるよ……」
アルティスは叱られ、小さな子供のように俯き呟いた。
ターナに連れられて渋々研究所を後にする姿にリュウノスケたちは苦笑するのだった。
「暇だねぇ」
何もすることがなくボーっとしながら呟いた。なんせすることがなにもない。外出してもいけない。部屋には何の娯楽もない。話し相手はラズしかいない。はっきり言って暇だ。
ここ最近ずっと働いていたものだから、何もしないというのも落ち着かない。
ベッドに寝転がり、窓から見える空を眺めボーっとしていたらどうやら眠ってしまっていたようだ。ラズを抱き締め抱き枕状態で眠っていたらしい。
ラズが一緒になって眠っている。
薄っすら目を開け、眠っていたことに気付き、腕の中にラズがいたことに安心した。
「あったかい」
ラズのふわふわした毛を撫でながら、スリスリと頬擦りする。温かくて気持ちが良い。目が覚めたときにラズがいる安心感。
ラズがいなくなったあの日のことがトラウマにでもなっているのか、目が覚めたときにラズの姿を見るとホッとするようになっていた。
スリスリスリスリしていると、ラズも目を覚ましたのかもぞもぞと動き出した。そして抱き締められていることに気付いたのか、抜け出そうと身をよじり出す。身体を起こそうとしたラズの顔がドアップでこちらを向き目が合った。
『!!』
ゴッ!!
目を見開いたラズが急に動き、顔面に頭突きをされた。
思わず抱き締めていた腕を離し、顎に手を当てる。
「いったー!!」
『うぐっ』
ラズは言葉にならない叫びを上げていた。ラズは額に前脚を当てようとしていたが、顔を洗っているようにしか見えない……。
「ブッ」
痛さで涙目になったが、ラズのその仕草に思わず笑ってしまった。
「もう、ラズなにやってんのよ。いきなり動かないでよね」
痛さの怒りはどこへやら、相変わらずラズの仕草に癒やされ和んでしまう。
「お前が寝ながら抱き締めたりするからだろ!」
ラズも痛みからか涙目だ。スカイブルーの瞳がウルウルしている。
抱き締めているのはいつものことなのに理不尽だ。ただ抱き締めたまま寝ちゃっただけじゃない。
「ラズだって気持ち良さげに寝てたくせに」
『うっ、それは! ヒナタが寝るから……、横にいたら一緒に眠くなっただけで……』
それでいつの間にやら私が抱き枕にしてたのよね〜、とは言うまい。
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