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108人のその他大勢  作者: ゆうま
1年1学期
5/28

5「Trust①」

 『各クラスのクラス委員、Aクラス鈴本、Bクラス吉江、Cクラス栗原、Dクラス佐々木。以上4名で勝負を行います』


 どうしてこんなことに…!私にリーダーなんて無理!

 勝てるかどうかも分からないけど、それ以上に信頼を得なくちゃ。でも、勝つ以外にどうやって?

 分からない。どうしよう。助けて凛ちゃん。


 『全員一斉に、使用するポイントを宣言して下さい』


 賭け事はしたことがないけど、元手は多い方が有利だよね。でも全額使うなんて怖いことは出来ない。

 それに多分だけど、クラスによって配布されてるポイントが違う。これはただの勘。ネクタイの色でクラスを分けてるから。ただそれだけ。

 ゲームとかのランクでは、Dの方が下。元手は元から負けてると考えて良い。


 だったら、ブラフ一択!


 Aクラス3万、Bクラス5万、Cクラス2万。私、Dクラスは1万。

 どうしよう。AクラスとCクラスが思ったより少ない。統一で5万だったのかな。でも、それならBクラスの5万はやり過ぎだよね。


 『第一ゲームを開始します。親から順にカードを引いて下さい』


 深呼吸をして、引いたカードを額に当てる。


 『親、Aクラス鈴本。順位と賭けるポイント、カード予想を宣言して下さい』

 「4位1万、♧5」

 『Bクラス吉江、宣言して下さい』

 「3位1万、♦7」

 『Cクラス栗原、宣言して下さい』

 「2位1万、♥J」


 なんでそんな迷いなさそうに言えるの?


 『Dクラス佐々木、宣言して下さい』


 栗原くんがJで2位ってことは、誰かはJより大きい数を持っているはず。でも、ない。そんなカード、()()()()()()()()()ない。

 それが誘導かも。でも、予想順位の変更は出来ない。栗原くんが見えているカードは2/3私も把握している。

 私が持っているカードは、それなりに数が大きいはず。


 「1位1万、♧K」


 マークは適当だった。意味なんてなかった。

 だけど言った瞬間、違うのが分かった。理由とは言えない理由。いわゆる勘ってやつ。ただなんとなく、♧ではないとだけ思った。


 『全員一斉に、自分が引いたと思うカードを宣言して下さい』


 ♦A、♤8、♧10


 そう宣言した3人と同時に、私は♤Kと宣言した。


 『Aクラス鈴本♤A、Bクラス吉江♧9、Cクラス栗原♥7、Dクラス佐々木♤K。第一ゲーム勝者、Dクラス佐々木』


 嘘…信じられない。Kだとしても、他にマークは3つある。一度目の宣言で出なかったマークを言っただけなのに、当たった…?

 良かった。何事も、初めが肝心。これだけでクラスのみんなの印象も違うはず。


 『親をBクラス吉江に交代し、第二ゲームを開始します』


 新しい山札が用意され、そこからカードを引く。


 『親、Bクラス吉江。宣言して下さい』


 また始まってしまった。早く終わってほしい。そうするには、どうすれば良いか。言うだけなら簡単。

 親以外のときに勝って、親のときに負ければ良い。


 「1位1万、♤10」


 …仕掛けて来た。


 『Cクラス栗原、宣言して下さい』

 「4位1万、♥6」


 それだけ大きい数が多いってこと?でもこの宣言でカードを当てる必要はない。第一回戦で数を大きく言った栗原くんなら、どうする。


 『Dクラス佐々木、宣言して下さい』

 「4位1万、♥4」


 ――あ、これだ。


 『Aクラス鈴本、宣言して下さい』

 「3位1万、♦9」

 『全員一斉に、自分が引いたと思うカードを宣言して下さい』


 …なんで。なんで、そんな自信満々に。


 『Aクラス鈴本♤10、Bクラス吉江♥Q、Cクラス栗原♧4、Dクラス佐々木♥4。第二ゲーム勝者、Aクラス鈴本、Dクラス佐々木』


 大丈夫。今のところ私がひとり勝ちなのは変わらない。大丈夫。


 『Cクラス栗原の所持ポイントがなくなりましたので、負けとなります。Cクラス栗原は退室して下さい』


 席を立って小さくお辞儀をすると、静かに部屋から出て行く。次は親だから、負けないと。


 『親をDクラス佐々木に交代し、第三ゲームを開始します』


 大丈夫。負けるだけなんだから。


 『親、Dクラス佐々木。宣言して下さい』

 「3位1万、♤5」

 『Aクラス鈴本、宣言して下さい』

 「2位3万、♦7」


 これで勝負を終えるつもり?それとも、降りさせるために?


 『Bクラス吉江、宣言して下さい』

 「降ります」


 2人は今持っている全てのポイントになる。慎重になるのも頷ける。ここで降りれば、逆転される。降りて良いのかな。


 鈴本くんは第一ゲーム、特にヒントはなかったと思う。なのに数字が合ってた。今だってそう。

 誘いに乗るのは、危ない気がする。


 『Dクラス佐々木、宣言して下さい』

 「降ります」

 『第三ゲーム勝者、Aクラス鈴本』


 …笑った。私を見て、笑った。どっちの意味?


 『親をAクラス鈴本に交代し、第四ゲームを開始します』


 間違えた?もしかして、大きく稼げるチャンスだった?


 『親、Aクラス鈴本。宣言して下さい』

 「3位1万、♦4」


 え?どういうこと?場を混乱させようとしてるの?


 『Bクラス吉江、宣言して下さい』

 「3位1万、♤6」


 2人ともKなのに、3位予想。カードの宣言は変えられても、予想順位は変えられない。それなのに――あ、分かった。


 『Dクラス佐々木、宣言して下さい』

 「1位1万、♥K」


 下手なことを言うと、吉江くんにカードを当てられてポイントを総取り出来ない。上乗せも同様。これで良い。


 『全員一斉に、自分が引いたと思うカードを宣言して下さい』


 ♦Kと宣言した鈴本くんは悔しそうに拳を握った。♦Jと宣言した吉江くんは初めて見たときからずっと変わらない様子。


 『Aクラス鈴本♦K、Bクラス吉江♥K、Dクラス佐々木♧K。第四ゲーム勝者、Dクラス佐々木』


 吉江くんは、そこで初めてハッとした表情を見せた。


 『親をBクラス吉江に交代し、第五ゲームを開始します』


 次も1万しか賭けることは出来ない。吉江くんを負けさせて、私も負けて、終わり。そうしよう。


 『親、Bクラス吉江。宣言して下さい』

 「1位1万、♧Q」


 シャッフルではなく、新しい山が用意されている。それでもKを引くとは思えない。そういう心理からQを宣言かも。

 ということは、実際はもっと数が小さくても一番数が大きいと思える数。私と鈴本くんの数が小さい。


 『Dクラス佐々木、宣言して下さい』

 「2位1万、♥9」


 鈴本くんが3位と予想する可能性は高くなる。だけど、数を当てられないなら問題じゃない。

 それに、吉江くんには当ててほしくない。


 『Aクラス鈴本、宣言して下さい』

 「3位1万――」


 な、なんで…?

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