幕間① その頃、前世の家族は…
「えっと、父さん、母さん、隼人に伊織、久しぶり。見た目はちょっと変わったけど拓人です。俺は今、異世界に転生しちゃってるんだ。いきなり死んじまって本当にごめん。俺の死はどうも避けられなかったようだから、ちゃんとお別れも出来なかった。俺は死んじまったけど、こうして異世界に転生して元気にやっているから心配しないで欲しい。
父さん、母さん、俺を産み育ててくれて有難う。俺は二人の息子に生まれて本当に良かった。
隼人も伊織もヒーローばかりであまり構ってやれなくてごめんな。俺は二人の事が大好きだぞ。将来、俺が助けた赤ちゃんとお前たちが出会う事があったら助けてやってくれな?
それじゃあ、みんな元気で長生きしてくれよな」
夢を見た。
先日交通事故で死んだ上の兄の夢だった。だけど夢に出てきたのは知らない高校生くらいのハーフっぽいイケメンな男の子で。でも私にはその男の子が上の兄だと直ぐにわかった。話し方とかが上の兄と全く同じだったし、話の内容、特にヒーローが出てくるあたりはもうねぇって感じで。
私の名前は神崎伊織、高校2年生。去年6歳上の兄を交通事故で失っている。上の兄、神崎拓人は文武両道、勧善懲悪を体現したような人だった。変身ヒーローが大好きで、妹の私から見てもその辺ちょっと変わってるなと思わなく無くは無かったけど。そうした兄の趣味嗜好を知っても尚兄を慕う友達は多かったし、私も下の兄も強くて格好良くって頭も良く、優しく頼り甲斐のある兄が大好きだった。彼女が出来ても暫くして別れちゃうのも、あの拓人兄じゃあしょうがないと思いつつ、どこかホッとしてたくらい。
そんな拓人兄が交通事故で死んだ。初めは信じられなかったし、信じたくなかった。でも拓人兄の遺体を見てしまえばその死を理解せざるを得ない。私は兄の遺体に縋り付いて泣いた。勿論下の兄も両親も。
それからの我家は惰性で動く抜け殻のようになった。私も通学はしていたけど、心ここに在らずといった感じで毎日がただ過ぎて行くだけ。学校でも友達や先生が随分と心配してくれていて、これじゃいけないとわかっていても何も出来ず、何もやる気が起きない。拓人兄を思い出すとただ涙が出た。
そんな日々のなか、昨夜、夢に拓人兄が出て来たのだ。異世界?転生?その厨二っぽい設定はなんなんだろう。拓人兄っぽいと言えばそうだけど。それに何だかちょっと腹も立った。こっちは拓人兄が家族全員が死んで悲しみに打ち拉がれているのに、なに一人だけ異世界に転生して「元気でやってるよ」よ!
とはいえ、今日は平日なので学校に登校せねばならず、このまま拓人兄の夢に浸ってもいられない。私は制服(セーラー服ね)に着替えて自室から1階のリビングへと降りた。
拓人兄が亡くなってからというもの、朝のこの時間は誰も必要な事以外何も喋らなくなっていた。拓人兄の生前は冗談言ったりと騒がしいくらいだったのに。でも今朝は何か違う。両親も下の兄も喋らないのは同じだけど、どこかそわそわしている。私にはピンと来るものがあった。
「おはよう」
「ああ伊織、おはよう」
「いおちゃん、おはよう。お皿出してくれる?」
「おはよう、伊織」
そしてみんな機嫌が良さそうだ。
朝食の準備が出来て食卓に着いた時、思い切って夢の話を振ってみた。
「ねえ、私、拓人兄の夢見ちゃった」
「「「!!」」」
「伊織、それはどんな夢だった?」
父に訊かれたので見たありのままを告げた。
「「「一緒だ(わ)!」」」
どうも私達は皆同じ夢をみたようだった。って言うか、拓人兄が私達3人に同じ夢を見せた、というところだろう。
(拓人兄め、みんな同じじゃなくて私には私用の夢にしてよ)
拓人兄に彼女と上手く行かないのはこういうところだぞ?って言ってやりたい。
ともあれ、この日を境に我家は再び動き出した。ここにはいないけど、拓人兄は異世界に転生してあの調子で上手く元気にやっているみたいだから。
それと、私はすっかり今までの自分を取り戻している。拓人兄の夢をみたからという事もあるけど、何となく拓人兄にまた会えるような気がするのだ。それに夢の最後の方で助けた赤ちゃんを助けてやってという件も気になるし。
だから私は再び拓人兄に会えるその日のために日常を取り戻し、努力して拓人兄に恥ずかしくない自分であろうと思う。
そして、拓人兄に会ったらこう言ってやるのだ、
「散々心配かけて、もう…拓人兄のおたんこなす」
ってね。
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それでは次話もお楽しみに!




