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第4話 転生ーセイリングジャンプ

大学3年生になり同好会の幹部になると、俺達の活動は質が高いとより好評を博すようになり、更にあちこちからお呼びがかかるようになった。それによって同好会に入る資金も増えてバブル状態。同好会に入会する会員も増え、マスコミからの取材も受けるようになり、以前からやっていた動画配信も再生回数がぐっと伸びて、広告収入すら入るようになった。


4年生になり、遂に俺は同好会の会長となった。


この頃になると、俺は自らの活動に疑問を持つようになっていた。これじゃ単なるヒーローを使った金儲けなんじゃないだろうかと。


そこで俺は同好会の活動を慈善事業との連携へとシフトさせた。募金活動や長期入院の子供達への慰問などのイベントを無料で引き受け、様々な慈善事業へ同好会の会費から寄付もした。


この過程で派手な活動と潤沢な資金に魅せられて入会したメンバーからは退会する者が続出した。もっとも、この連中は幽霊会員であったり、飲み会だけきたりと役に立たない奴等だったので辞めて行っても何ら問題無く、寧ろ清々したが。


ヒーローが好きな会員、俺の考えに賛同してくれた会員達は残ってくれたので、同好会の活動には全く支障は出なかった。


同好会の活動を慈善事業との連携にシフトさせた事で一時期より会の活動は縮小を余儀なくされた。しかし、やがてこの活動が注目されるようになった。アクションヒーロー同好会は今までの活動が社会貢献していると認められ、自治体や警察などの様々な組織から表彰されるようになったのだ。


俺はこれでアクションヒーロー同好会の皆がヒーローになれたのだと思えた。年齢も22歳となり、地元警察に採用が決まった俺は、志を同じくする信頼出来る後輩に会長の座を譲り、会の活動から引退した。


そして、4年生の追い出しコンパの翌日の事。俺は日課のジョギング中、横断歩道で信号待ちをする人々に暴走する乗用車がまさに突っ込もうとする場面に出会した。そして、その白い乗用車に轢かれようとしていたベビーカーを押す母子連れを庇い、その暴走乗用車に跳ね飛ばされて死んだ。


路上に横たわった俺は視界の隅にベビーカーは倒れたものの、無事な母子の姿を見つけ「良かった」と思ったのが最後の意識だった。


〜・〜・〜


ホルスト・ヴィンターである俺が日本人の大学生であった神崎拓人の記憶を思い出す出したのは5歳の時だった。


別に死にかけたとか、そうしたテンプレ的イベントがあった訳じゃない。単に2つ歳下の妹エミリーと庭で遊んでいて、俺が館の外周を囲う石垣から飛び降りた事が切欠だった。


石垣の下は傾斜のある土手になっていた。石垣の低い部分とはいえ、5歳児にとっては結構な高さだ。俺はエミリーの「おにーさま、とんでとんで」という煽りに乗せられ、思わずそこからジャンプしてしまったのだ。そして、その時に何故か口から「とうっ!」という掛声と「セイリングジャンプ」という言葉が出たのだ。そして、着地してバランスを崩して転びそうになり"受け身"を取ったのだ。


その後、大慌てでやって来た執事のデミレルじいさんに身体を起こされた。デミレルじいさんは俺に怪我が無い事に安堵しつつも、石垣からジャンプした俺を叱り飛ばした。


執事とはいっても、うちのような騎士爵家では専門の執事などとても雇えないので老齢になって引退した家士が名目上執事をやっている。だからデミレルじいさんは俺にとっては親戚のお爺さんといった感じで、デミレルじいさんも主君の息子だからといっても遠慮なんかしない。必要ならば叱り飛ばすし、体罰だって加える。


デミレルじいさんは俺が本当に石垣から飛び降りたので、恐くなったエミリーが呼びに行ったのだ。


「全くホルスト坊!妹に心配かけてはならんぞ!」


え?エミリーが飛べ飛べと煽ったんだけど、と思ったものの、俺が何を言っても無駄なので「ふえぇ、デミレルじいちゃん、ごめんなさい」としおらしく反省した体で謝った。ふと顔を上げると、デミレルじいさんの後ろに隠れていたエミリーと目が合った。すると、エミリーは俺に向かって思いっきりあっかんべーをして見せた。くそっ!かわいくねぇ!


その晩、デミレルじいさんは昼間の出来事を父には言いつけなかったため、両親、特に母から叱られる事は無く、夕食の後に床に着いた。


ベッドの中で、俺は昼間に口にした「セイリングジャンプ」という言葉について考えた。


(セイリングジャンプ、セイリング…重力低減装置、スカイ、スカイ変身、変身⁈)


思い出した!


その後は前世の記憶が奔流のように溢れ出て、暫くその情報量にのたうちまわった。やがてそれが治ると、俺は前世の神崎拓人の記憶と人格を取り戻していた。まさにリアル"体は子供、頭脳は大人"として。

いつも『アクションヒーロー』をお読み頂きまして、誠に有難う御座います。宜しければブクマ登録、評価、感想など宜しくお願いします。


それでは次話もお楽しみに!


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