第2話 謹慎
実家には既に辺境伯からの使いが来ていたようで、帰宅した俺は父と兄達に叱責された上で明日からの無期限の謹慎を言い渡された。
ジードに原因があり、辺境伯から咎め無しとされたとはいえ、男爵家の跡取り長男とやり合った以上、ヴィンター家として何もせずとは出来ないのだろう。
それでも父も母も最後には「お前は悪くない。家の名誉を良くぞ守った」と誉めてくれ、元服の儀と能力を授かったお祝いをしてくれた。
「ところで、その「アクションヒーロー」というのはどんな能力なんだ?」
一通り俺を叱り、誉め、祝った後、祝いの席で父は俺の「能力」について尋ねた。
俺の父はオーギュストといい、38歳になるクールな黒髪細マッチョのイケメン中年だ。父は「能力」は持たないものの剣の達人で、かつては王都の武闘大会で「剣士」の能力持ちを何人も破って優勝した事もある剣士だ。領主として領民達にも慕われている。
「悪いけど聞いた事ないな」
「だな。その「アクションヒーロー」という言葉すら意味わからん」
俺の二人の兄、フランツとアイクがそっくりな顔で頷き合う。この二人の兄は一卵性の双子で、俺より4歳歳上の17歳だ。今は二人ともそれぞれ王都の騎士団へ騎士見習いに出ていて、夏至の休みに帰省していた。双子だけあって二人とも父に似たイケメンで、ヴィンター家の男は俺も含めて黒髪クール系のイケメン揃いなのだ。ただ、長男のフランツは何故か俺に隔意があるようであり、歳も離れているためあまり話した事が無い。
「まぁ、わざわざ神様が授けて下さったのだから、何かしら意味があるのでしょう。能力も授かっただけじゃ意味がないから、使いこなせるよう鍛錬は欠かさないのよ?」
「そうだね、母さん」
母はアメリアといい、父より二歳歳下。少し癖のある栗色を背中まで伸ばし、瞳はヘーゼル色で少しタレ気味の優しげな美人だ。ただし、優し気なのは見た目だけで、喧嘩上等、体罰上等、時には父よりも厳しい。「剣士」の能力を持つ。かつては上級の冒険者で、父と王都の武闘大会で優勝を争った相手だったそうだ。
「じゃあちょうど良かったじゃない、お兄さま。謹慎中は修行し放題ね」
これは妹のエミリー。俺より二歳歳下の11歳で、母に似たふわりとした美少女だ。将来はやはり母に似た美人になる事だろう。残念ながら母に似たのは容姿だけではなく、性格もよく似ていて気が強く、兄を兄とも思わない生意気な奴なのだ。
「痛て。何するんだよ」
今も俺の横に座っているエミリーが俺の脚を蹴っ飛ばした。
「お兄さまが失礼な事考えたから」
そして勘もめちゃくちゃ鋭い。勘の良い子供はきら、ガン!
「だから痛いって!」
「まあ、能力を授かったからって何も変わらないよ。欲を言えばもっとわかりやすい能力だったら良かったけど、色々試して見てこの「アクションヒーロー」と気長に付き合ってみようと思ってる」
「そうね、それがいいわね。でも、何かあったら相談しなさいね?」
「うん、有難う母さん。そうさせて貰うよ」
その夜はそれで俺の能力についての話題は終わり、住み込みのおばちゃんメイドが俺の元服の儀祝いに作ってくれたご馳走を頂いた。
その晩、俺は自室のベッドで授かった能力「アクションヒーロー」について考えた。辺境伯の居城に二日間留め置かれたけど、ゆっくり一人で考える暇も余裕も無かったのだ。
「フフッ」
思わず笑いが漏れた。
「クックック」
やはり笑いが溢れる。考えれば考える程笑いが溢れ出した。きっと誰もいない場所だったならば大笑いしていた事だろう。
何故って?
誰も知らず、わからず、言葉の意味すら理解されなかった俺の能力「アクションヒーロー」。俺はこの能力の意味を知っている。いや、この世界広しといえど、この能力の意味を知るのは俺だけだろう。
何故ならば、「アクションヒーロー」は日本語で、この世界の言葉ではない。そして俺、ホルスト・ヴィンターの前世は日本人だったからだ。
そして「アクションヒーロー」とは、その名の通り前世で俺が愛して止まなかった悪と戦う正義のヒーロー、その能力を再現して使える「能力」なのだ。
俺は上半身をベッドの上で起こすと、試しに「フレイム」と唱えてみる。すると、俺の掌の上に燃え盛る炎が出現した。これは14番目の平成ライダー(魔法使い)の能力だ。
神様も随分と粋な計らいをしてくれたものだ。俺はこの能力を授けてくれた神様に感謝しつつ、明日からこの「アクションヒーロー」をどう試そうかと考えながら眠りに就いた。
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それでは次話もお楽しみに!




